債務超過とは?赤字や資金ショートとの違いと対応方法について解説!

債務超過とは?赤字・資金ショートも解説

各方面に深刻な影響を及ぼす新型コロナウイルスですが、特に大きな被害を受けているのが飲食業界です。“いきなり!ステーキ”を事業展開するペッパーフードサービスも、そんな業界中の1社でした。

“いきなり!ステーキ”は2013年12月5日、1号店の“銀座四丁目店”をオープンしました。すると、そのお手ごろ価格の厚切りステーキが人気を呼び、19年には全国の店舗数をおよそ500ほどにまで拡大。ところが、その出店数の多さや類似した営業スタイルを取り入れた店が増えたことなどから、19年12月期第3四半期には19億2200万円もの赤字を計上することになってしまいました。ただ、このときメディアに躍ったのは、「ペッパーフードサービス債務超過寸前」という文字でした。そうです。“債務超過”と“赤字の計上”は違うのです。

債務超過とは?

会社が債務超過に陥っている状態は、個人の場合で説明するのが実感的で分かりやすいでしょう。自家用車や所有する自宅など、売りに出せばお金を払って買い取ってもらえるものが、誰にでもあると思います。それらすべてを売りに出しても、返済できないほど高額の借金を抱えているのと同じ状況に会社があるとき、その会社は債務超過の状況にあると言えます。

会社の家計簿のような存在が貸借対照表です。その貸借対照表上には、資産の額と負債の額が示されています。詳しくは下記のリンクから簿記の知識を得てみましょう。

関連記事→簿記を学ぼう(BS編)

資産総額-負債総額<0…Ⓐ

Ⓐの財政状態にある会社が、債務超過に陥っている会社です。また、このように、貸借対照表上の負債総額が資産総額より大きくなっている会社が、簿価債務超過の状況にある会社です。

ペッパーフードサービスは19年12月期第3四半期に20億円近い赤字を計上しましたが、このときの資産総額は260億円で負債総額は246億円でした。

     260億円-246億円=14億円>0

確かに、債務超過はギリギリ免れています。しかし、20年にはついに、債務超過に転落してしまいました。

赤字とは?

ペッパーフードサービスがこの年に計上した19億2200万円もの金額で表される赤字は、収入よりも支出が上回っていることを言います。ある会社のある1年だけ切り取ってみれば赤字となることもあるため、赤字がそれほど問題視されないこともあります。例えば、その年に限って、設備投資を意欲的に行った場合などです。そこで生じた支出や経費を、翌年から取り戻すことができる可能性もあるためです。税金を安くしようと、意図して赤字にしようとする会社もあります。

最も危険な資金ショート

債務超過や赤字よりも危険な状況にあると考えられるのが、資金ショートの状態にある会社です。支払いに必要な資金がなく、支払い不能の状態にあることが資金ショートです。融資の返済・家賃・人件費など、いわば運転資金が手元になくなっているわけです。そのままにしておくと、倒産を免れることはできません。新型コロナウイルスの影響で、この資金ショートを起こしそうな会社が続出したことから、それらを救済するべく給付金が支給されました。

以上のようにまずは、「債務超過」・「赤字」・「資金ショート」の用語についての違いを見ていきました。

債務超過のデメリットとは?

最悪の状態は、資金ショートということを紹介しましたが、その一歩手前の状況である債務超過に陥っても、それによるデメリットはいくつもあります。この章では、債務超過によるデメリットについて扱っていきます。

金融機関や取引先からの信用失墜

Ⓐの状況は財務のプロでなくても、いい印象を持つことはありえないでしょう。また、これが長引けば資金ショートから、会社の運営そのものが困難となります。

  • ・金融機関からの融資の可能性が小さくなる
  • ・金融機関から金利の引き上げや返済を迫られる
  • ・新規の取引先開拓ができなくなる
  • ・取引先からの協力がなくなる
  • ・取り引きそのものが中断される

のどから手が出るほど資金が欲しい中で、これらのデメリットが生じることは厳しいどころではないはずです。

上場廃止のリスク

東京証券取引所、大阪取引所、東京商品取引所などを運営している取引所グループが、日本取引所グループ(JPX)です。債務超過の状態が1年を超えてしまうことを上場廃止の基準として、日本取引所グループは定めています。従って、長期間にわたり債務超過が続くことからは、上場廃止のリスクが生じます。上場廃止が行われると各方面からの信用が下がる上に、株式による資金調達という選択肢もなくなります。

以上のように、債務超過にもデメリットはあるので、会社の経営者としては「避けるべき状態である」と言えるのは当然でしょう。

債務超過の対応方法について投資ファンドが解説!

では、万が一「債務超過」の状態に陥ってしまった場合、どうすればいいのでしょうか?Ⓐの状況にあり、しかもその絶対値が大きくなればなるほど、健全な経営を取り戻すことが難しくなります。19年版中小企業白書でも、それについての言及があります。できるだけ早く、債務超過の状態から抜け出すことを考えましょう。

今回のコラムでは、いくつかの方法を紹介するのでぜひ参考にしてみてください。

債務超過脱出に向けた最善策

1-1. 利益創出

これは単純で、経営改善から利益を出し、債務も増やすことなく、負債総額をできるだけ小さくすることを指します。

1-2. 遊休資産売却

含み益のある遊休資産の売却もいいでしょう。例えば、2000万円で購入したものの、事業ではまったく使っていない土地などはないでしょうか。その土地が1億円に、値上がりしているかも知れません。1億円-2000万円=8000万円が、債務超過状態の圧縮に役立ちます。金融機関は、いずれの方法も評価してくれます。そして、融資についても前向きに検討してくれるようになるのです。

債務超過からの脱出方法には、以上のような方法が存在しますが、これらが、そもそもが簡単には実現できないからこそ、債務超過に陥っている側面が強いのではないでしょうか。についてもそれに充てることができるものの数や合計額が、焼け石に水である場合も少なくないでしょう。そこで、それらに続く対応策をご紹介いたします。

債務超過脱出に向けた次点の策

2-1. ファクタリング

債務超過していても使える方法の中では、お勧めできる方法の1つです。例えば、いまだ支払いの確認が取れていない売掛金の請求書を現金買い取りしてもらうような方法です。ある程度の手数料を支払う必要はありますが、即時現金を調達できます。ファクタリングには、ほかにも以下のようなメリットがあります。

①審査に通りやすい

審査対象は、売掛先の信用力です。個人事業主が利用する場合でも、銀行から融資を受けるより審査に通りやすいという魅力があります。

②借入ではない

借入には当たらず、負債が増えることはありません。

③売掛先倒産の心配がない

借入ではないためこの場合でも、支払い義務が生じることはありません。

2-2. M&A(事業譲渡)

債務超過の状況にある会社でも、「ぜひ買いたい!」と思う会社や個人が存在する可能性は否定できません。「そんなことがあるのか?」と疑問に思う人も多いでしょう。しかし、これまで数々の債務超過会社が、M&Aにより売却されてきました。それこそが、債務超過の会社を買いたいと思う人がいることの証しです。

関連用語→M&Aとは?

繰り返しになりますが、債務超過している会社というのは、貸借対照表上でⒶの状態にある会社のことです。確かに、見栄えがいいとは言えません。しかし、会社には貸借対照表上には表れない価値もあるのです。例えば、次のようなものです。

  •    ・貴重なノウハウ
  •    ・ブランド力
  •    ・貴重な情報
  •    ・極めて優秀な営業マンや技術者

M&Aが行われるときには、こういった営業権(のれん)と呼ばれる目に見えない価値も考慮されます。営業権の評価額(のれん代)が債務超過額を上回ると評価されれば、お金を支払ってでも買ってもらえるのです。

関連記事→のれんについて詳しく解説した記事

また、営業権の評価額(のれん代)をプラスしても、Ⓐの状態が変わらない(実質債務超過)ときにも方法があります。その場合は、売り手側企業が展開している事業のいい部分だけを切り出して、買い手に買ってもらうのです。

ただ、問題は残された部分です。その売却を金融機関・債権者・取引先などの同意なしで行うと、詐害行為(債務者が自己の財産を故意に減らし、債務の弁償を免れること)とみなされる可能性もあります。そのため、この場合には、まず民事再生法などの法的整理を済ませた後、裁判所・債権者の両者から同意を得た上、スポンサー企業に買い取ってもらうことが多く行われます。

関連記事→民事再生法について解説した記事

2-3. 増資

増資とは、文字どおり企業が資本金を増やすことです。まず考えられるのが、経営者みずからの資金で資本金を増加させることですが、中小企業事業者は債務超過に陥る以前にみずからの資金投入は行っているでしょう。それが難しい場合には、投資ファンドや知人からの出資の可能性を探ってみるのも1つです。

株式会社なら、新株の発行という方法があります。この場合の資金調達先は、もちろん投資家です。

発起人全員の同意を得た上で、会社設立後に現金以外の“もの”による現物出資してもらうことも可能です。“もの”には、不動産やパソコン・自動車などの動産に加え、債権や有価証券などがあります。

第三者に増資してもらえたとなると、金融機関はそれを評価してくれます。もしかすると、融資を考えてくれるようになるかも知れません。しかし、第三者による出資が多くなりすぎると、会社の経営権がそちらに移る可能性が生じてくることから注意が必要です。

2-4. DES(デット・エクイティ・スワップ)

Debt Equity Swapの頭文字を取ってDESです。Debt(債務)とEquity(資本)をSwap(交換)するのです。“債務の資本化”、あるいは、“債務の株式化”などと表現されることもあります。抽象的な表現ばかりでは、分かりにくいかも知れません。さらに別の表現も紹介しておきます。

・債務超過会社の債権を持っている債権者が、その債権を債務者=債務超過会社の株式に振り替える(転換する)。

・債務超過会社が自社株を債権者に与えることで、負債を免除してもらう。

・債権者が、債務超過会社に現物出資する。

これについては、貸借対照表上でのイメージするのが分かりやすいでしょう。

今債務超過に陥っている会社の貸借対照表上の数値が、次のようになっているとします。

ⓐ資産合計額=120,000,000円

ⓑ負債合計額=200,000,000円

ⓒ(純資産中の)資本金合計額=20,000,000円

ⓓ(純資産中の)利益剰余金合計額=▴100,000,000円

ⓐ-ⓑ=▴80,000,000円=債務超過額

確かに、債務超過状態です。そして、債権者からの借入金80,000,000円を債権者同意の下(もと)、同じ80,000,000円の株式に振り替えます。すると、

ⓐ資産合計額=120,000,000円

ⓑ負債合計額=200,000,000円-80,000,000円=120,000,000

ⓒ(純資産中の)資本金合計額=20,000,000円+80,000,000円=100,000,00円

ⓓ(純資産中の)利益剰余金合計額=▴100,000,000円

ⓐ-ⓑ=0円←債務超過なし

債務超過が、貸借対照表上では“0”。つまり、なくなったのです。

ちなみにⓑの“-80,000,000円”は、“80,000,000円を株式に振り替え”たことを意味しています。同様にⓒの“+80,000,000円”は、“80,000,000円を債権から振り替え”たことを意味します。

債権者がDESに応じるのには、もちろん債権者にメリットがあるからです。それには主に、次の2つがあります。

①債務超過という苦境を乗り切り、利益を出せるようになれば、株式の配当収入が債権者に入るようになります。さらに、債務超過企業の社会的信用が回復すれば売却可能となり、売却益を得ることも期待できる。

②債務超過企業の株主となり、その経営に対して物を言うことができるようになる。

ただし、債権者にとって、デメリットがまったくないわけではありません。

①貸付金などの債権が減少することから、利息収入は減少します。

②中小企業の非公開株式の売却は難しい。

③独占禁止法11条で、金融機関は発行株式の5%までしか保有できない、いわゆる“5%ルール”が定められています。

まとめ

以上のように、「債務超過」・「赤字」・「資金ショート」の違いについて解説しながら、その中でも「債務超過」に陥った場合の対処方法についても扱いましたが、いかがだったでしょうか?

最も危ない状況の資金ショートの前段階・債務超過に陥ったとして、必ずしも慌てる必要はないでしょう。ペッパーフードサービスも21年11月には、経営が持ち直したことが報じられました。19年9月期に初めて債務超過となった米国のスターバックスは、翌年同期になると新型コロナウイルスの影響で7億ドル近い赤字を出しました。しかし、21年4~6月期決算では、最終損益約1265億円(11億5300万ドル)の黒字を達成しているのです。

ここで紹介したような対処方法があります。焦ることなく落ち着いて行動することを考えましょう。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。



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