事業再生に必要な「事業計画」・「弁済計画」の策定方法とは?

事業再生計画案を作ろう

各種のDD(デューデリジェンス)が終わると、対象の会社の現状が把握されることになります。

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事業デューデリジェンスによって、その会社のビジネスについての理解が深まり、会社や事業の再生の可能性が判断できます。事業デューデリジェンスでは、将来の再生イメージを探ることも行われました。財務デューデリジェンスでは、財務状況の把握から、その改善にはどの程度の金融的な支援が必要なのかが見極められました。法的デューデリジェンスなどの他のデューデリジェンスでは、再生プロセスを壊す可能性のある要素があぶり出されました。

このようにして各種デューデリジェンスが終わると、その総合的な結果として、その会社や事業に再生の可能性があるかどうかが判断され、再生可能性が認められれば、事業再生プロセスは再生計画案を策定する段階へと入ります。

事業デューデリジェンスで得られた将来の再生イメージは、再生計画案という形で徐々に具体化され、財務デューデリジェンスの調査結果が再生計画案に財務的な裏付けを与えます。法的デューデリジェンスなど他のデューデリジェンスの結果も再生計画案へと反映されます。それぞれのデューデリジェンスは、その調査過程の段階からフィードバックし合いながら進められます。次の段階でも何度も微調整を繰り返しながら、デューデリジェンスの調査結果は、再生計画案として具体化されていくことになります。

再生計画の柱「事業計画」と「弁済計画」

①事業計画

再生計画案はふたつの柱から成り立ちます。ひとつは会社や事業の再生の方法を明らかにする「事業計画」です。

事業計画では、これまでの事業の問題点を明らかにした上で、今後の事業戦略を明らかにします。経営資源をどの事業に集中させるのか、撤退する事業はなにか、生産性を向上させるための方法や、経営や人員体制の改善点などを示します。また、経営資源を投下する事業が有望な理由や市場の状況など事業計画の根拠も示します。

さらにこの事業計画は、通常、3~5年の期間で策定します。そして、その上で将来の収益見通しを数値で示し、将来はどの程度のキャッシュフローが継続して得られるかの見通しを明らかにします。この事業計画によって会社や事業の再生の進め方が具体的に明らかにされることになります。

②弁済計画

もうひとつの柱は債務の「弁済計画」です。

弁済計画では、会社や事業の再生のために必要な金融支援の内容を明らかにします。その根拠となるのが、事業計画で示された、再構築した事業によって得られる見通しのキャッシュフローです。その額を元に必要な金融支援の額を確定させ、その支援をどのようなスキームを使って行うのかを、弁済計画の形で示します。

つまり、事業計画によって、再構築された会社がどの程度のキャッシュフローを生み、どの程度の債務負担能力があるのかが示されます。その上で、債務負担能力を超える分の債務については、債権放棄などの金融支援を求めることになります。それを債権者に同意してもらうことになりますから、再生計画案では、説得力のあるデータをもとにした根拠ある見通しが示されなくてはなりません。

再生計画案策定の流れ

再生計画案作りは、論理的なプロセスとしては以下のようになります。もちろんこれは概念的なものであり、実際の作業としては、再生計画案の作成は各種デューデリジェンスと同時並行で行われるのが通常です。つまり再生計画案は、各種デューデリジェンスの情報を互いにフィードバックさせ合い、スポンサーや利害関係者などとの調整も絶えず繰り返しながら、徐々に整えられ作成されるというわけです。

  •  ①各種デューデリジェンス終了、再生可能性判断
  •  ②事業再生方針の決定、事業計画策定
  •  ③金融支援額の確定、再生スキームの検討、弁済計画策定
  •  ④再生計画案完成

以下、この流れを詳しく見ていきましょう。

まず、各種デューデリジェンスが終了後、再生可能性が判断されます。(①)

そして、再生可能性があると判断されれば、その再生の方向性が決められ、それをもとに事業計画が策定されます。事業計画が固まり、将来の収益の見通しが明らかになると、その会社がどれだけの債務を負担できるかが明らかになります。(②)

次に、会社の債務負担能力を超える債務の額が、金融支援の必要な額として確定します。その額について金融支援を求めることとなり、債権放棄やDDS、DESなどの再生スキームからどのスキームを利用するかが検討されます。再生スキームは、会社の状況と関係者の利害などを勘案して選択されます。債務免除を受けた分についての課税など税金への対策や、運転資金の問題、債務超過や自己資本の状況も検討事項に含まれます。そして弁済計画という形で金融支援の額と再生スキームを示します。(③)

この「事業計画」と「弁済計画」の二本柱が整うことで、再生計画案は完成します。(④)

この後、再生計画案をもとに、債権者などの利害関係者との交渉が行われ、再生計画案はさらに調整をされた後、債権者集会などの決議に諮られます。ここで関係者による合意が得られれば、再生計画は実行へと移されていくことになります。

再生計画の目的と項目

再生計画案の最大の目的は、この案によって再生プロセスを進めることが、利害関係者にとってより良い道であることを示すことです。

とくに債権者に対し、この再生計画案に沿って再生プロセスを進めることが、いまこの段階で清算手続きをとるよりも、多くの金を受け取る道であることが説得的に示されなくてはなりません。また、再生計画案は、再生支援を求めるためのスポンサー探しの際の材料にもなります。

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計画案が承認され実行に移ったあとは、再生担当者は再生計画を常に参照しながらプロセスを進めることになります。再生計画がしっかりとしたデータと予測に基づいた確実なものでなければ再生プロセスは土台から崩れ、会社の再生はうまくいかないでしょう。再生計画こそが再生プロセスの核となるのです。

ちなみに、再生計画案に含まれるべき主な項目を示すため、再生計画案の骨子を例示します。

  •  ①会社の概要 沿革、資本金、株主構成、経営体制、組織など
  •  ②事業の概要 事業内容、業界動向、主な取引先など
  •  ③財務内容  
  •  ④再生支援に至った経緯と問題点
  •  ⑤事業計画  今後の事業戦略、新しい経営体制、スポンサーなど
  •  ⑥弁済計画  債権者への依頼事項、再生スキーム、資金計画
  •  ⑦法的整理との比較 

まとめ

ここまで、事業再生に向けた計画案である「事業計画」と「弁済計画」についてみていきましたが、いかがだったでしょうか?

会社や事業の再生の方法を明らかにする「事業計画」と、会社や事業の再生のために必要な金融支援の内容を明らかにする「弁済計画」は、再生プロセスを進めることが、利害関係者にとってより良い道であることを示すために、必要なものでした。また、これらの作成は、各種デューデリジェンスと同時並行で行われるのが通常であり、デューデリジェンスとの情報を互いにフィードバックさせ合い、スポンサーや利害関係者などとの調整も絶えず繰り返しながら、徐々に整えられることについても触れました。

しかし、これらの作業を一個人で行うことはとても大変であり、ましては初めての作業となるとも不安なことも多々あるでしょう。よって、専門家のアドバイスを受けながら、こうした複雑な問題も考慮に入れて考えることが大切です。

お悩みの際是非、下記のリンクより、お気軽にご相談ください。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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