これは、「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」をサイトverでより詳しく解説したコラム(全コラム無料)の第9話/全17話になります。字数や語彙などをはじめ、サラリーマンや学生が通勤時間などといった片手間に読みやすい形にしているので、ぜひお気軽にご覧ください。
9-1 深刻な大廃業時代
127万社――。この膨大な数の中小企業がいま、廃業に追い込まれようとしています。
この数をまとめたのは経済産業省です。廃業の理由は経営者の高齢化と後継者不足。これだけの会社が失われると、そこで働く650万人の職も失われます。それによって失われるGDP(国内総生産)は22兆円と想定されています。
この現状を指して、「大廃業時代」と言われているのです。
大廃業時代はいま、大きな社会問題として静かに進行しています。コロナ禍によってその進行度合いは間違いなく早まっているでしょう。このまま、手をこまねいたままではいられない問題なのです。
大廃業時代を解決するには、127万社のうち、社会にとって残すべき会社を、ほかのだれかが承継する必要があります。承継によってその会社が残れば、その会社が社会に生み出していた価値、雇用も残ります。
引き継がれる会社をとにかく増やすこと。
それができなければ、日本経済に与えるショックは小さくないでしょう。
9-2 経営者の個人保証がいらなくなっている
そのために国はさまざまな施策を実施しています。事業承継を促すための法律が作られ、各都道府県には事業承継機関が設置され、財政支援措置も充実してきています。事業承継のための環境は急速に整えられているのです。
とくに私が大きな変化と感じたのが、会社への貸付に対する経営者の個人保証を、国の方針転換でなるべく取らないようになってきたことです。
経営者が会社への貸付に個人保証をすることは、会社の経営危機が即、経営者個人の生活破綻につながるため、中小企業経営の大きなリスクになっていました。しかし国はガイドラインを作って、経営者の個人保証はなるべく取らないという方針を明確にしました。それを受けて金融界も対応し、経営者保証なしの貸付が徐々に増えてきています。いまでは新規貸付で、政府系金融機関では36%、民間で20%ほどが経営者保証なしで行われているそうです。
関連記事→経営者保証ガイドラインに関する記事はこちら
これは事業承継促進の大きな後押しとなります。これまでは、前のオーナーが経営者保証をしていれば、新しいオーナーはそれを引き継ぐのが慣例でした。しかしいまでは経営者保証を引き継がず、会社を買う例が出てきています。
実際、私の運営するサロンメンバーが経営者保証なしで会社を買っています。中小企業経営のネックだった経営者の個人保証を引き継がずに、会社を買えるようになってきたのです。
個人M&A、事業承継市場も充実しつつあります。インターネットプラットフォームは、トランビやバトンズなど、いくつも登場し、活況となっています。公的機関の事業引継ぎセンターや日本政策金融公庫の承継マッチングサービスでも、これまで買い手として相手にされなかった個人が、買い手として歓迎されるようになっています。
いまは個人でも十分、中小企業の承継市場に乗り出していけるようになったのです。4年前とは隔世の感があります。
9-3 スモールM&Aの広がりがもたらすもの
127万社の廃業間近の中小企業は、数年前までの状況が続いていたら、その会社の危機が表に出ることなく、静かに市場から退出するだけだったでしょう。しかしいま、承継市場の充実によって、さまざまな機関からアプローチがあり、中小企業の承継案件が表に出るようになっています。
潜在的には127万社あるわけですから、いまほど会社を買うチャンスがある時期はありません。
買い手からすると、会社を買うなら「いま」なのです。
サラリーマンがどんどん会社を買っていけば、大廃業時代という社会問題が解決され、その動きはいずれ、日本経済を救うことになるでしょう。同時に、自らはサラリーマン以上の報酬を得て、自分でやりたいことをしながら豊かな暮らしができるようになります。そんなチャンスが「いま」訪れているのです。
「いま」をとらえて最初に動き、先行者利益を得る人は「ファーストペンギン」と言われます。動き始めた個人M&A市場では、やはりファーストペンギンたちが有利なのでしょうか。
次のコラムでそのお話をしましょう。
記事監修
三戸政和(Maksazu Mito)
2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。