M&Aスキーム(手法)とは?メリット・デメリットを種類ごとに投資ファンドが解説

M&Aスキーム(手法)とは?

もし、このサイトを見て、「M&Aをする」となった際にどのようなスキーム(手法)があるのでしょうか?

今回のコラムでは、経営権の取得、移行にはどのようなスキームがあるのか、という部分について解説していきます。

なお今回のコラムで登場するデメリットやメリットについては全て「買い手」の視点で書かせていただきます。売り手に関する記事もどんどん増やしていこうと思うので、お待ちください!

株式譲渡とは?手法とメリット・デメリットについて解説!

株式譲渡のスキーム概要

株式譲渡は、最も一般的な取引、既存株主が、買い手に株式を譲渡し、対価を受け取るというスキームです。対価としては、現金を受け取るケースが主です。

株式譲渡のメリットやデメリットなどの特徴

連結財務諸表においてのれんが計上されます。こののれんは、会計上、一定期間内に償却しなければならず、償却費は、P/Lにマイナスインパクトを与えます。しかし、のれんの償却は、税務上ののれん償却の形をとれず、節税効果(タックスメリット)は生みません。

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手続きがシンプルです。株式譲渡の場合、当然、会社に紐づいている事業はもとより、資産、負債、権利など、すべてが買い手への譲渡対象となるため、個別の検討や譲渡にかかる手続きが不要です。

・デメリットとして、簿外債務や対象会社が持つ潜在的なリスクなどについても、すべて引き継がれてしまうという側面があります。

事業譲渡とは?手法とメリット・デメリットについて解説

事業譲渡のスキーム概要

事業譲渡とは、対象会社の一部、またはすべての事業を買い手に譲渡し、売却者は対価を受け取るというスキームです。対価としては、現金を受け取るケースが主です。

対象企業に特定のリスクが存在する、または、事業単位での譲渡を行う、など特別な理由がなく、対象会社の事業、資産などすべてを承継する場合、まずは株式譲渡を検討するのが一般的です。

事業譲渡のメリットやデメリットなどの特徴

・株式譲渡においては、のれんの償却について「税務上ののれん償却」とはできず、損金算入できないため、タックスメリットがないと上述しましたが、事業譲渡の場合、「税務上ののれん償却」が可能で、損金算入でき、節税効果が生まれる場合があります。

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・事業譲渡は、売り手から買い手に承継するもの(事業、資産、負債、従業員、権利など)を、選択することができます。そういった意味において、潜在的なリスクを遮断できるというメリットがあります。

・前述について、裏を返せば、承継するものについて、すべて移転手続きを行わなければならないという手続き上の煩雑さがデメリットとして存在します。そのため、相対的には、株式譲渡と比べてスケジュールの柔軟性は損なわれます。

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第三者割当増資とは?手法とメリット・デメリットについて解説

第三者割当増資のスキーム概要

第三者割当増資とは、対象会社の既存株主が買い手に株式を譲り渡すのではなく、買い手サイドが、対象会社の新株を引き受けることで、持分を獲得していくスキームです。

第三者割当増資は、対象会社に資金注入しながら、経営権を獲得していくことができる、という点がポイントです。

そのため、M&Aの一環で、このスキームは採用されるケースとしては、対象会社に資金需要が存在する場合です。具体的には、経営が傾き、資金繰りが厳しくなった企業の救済などです。

第三者割当増資のメリットやデメリットなどの特徴

・上述の通り、対象会社の資金需要に対応できるという点があります。

・株式譲渡と比較して、同じ議決権を獲得するのに必要となる資金は多額になります。

・また、最初から100%取得する形ではないため、好ましくない非支配株主が存在している場合、スクイーズアウトなどの対応が必要になります。

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会社分割とは?手法とメリット・デメリットについて解説

会社分割のスキーム概要

会社分割は、前述の3スキームとは会社法上異なる位置づけである組織再編行為に当たります。

会社分割には、新設分割と吸収分割の2種類があります。新設分割の場合、会社の一部の事業などを分割して切り出し、切り出された新設会社の株式を買い手に譲渡するというスキームが用いられることが多いです。吸収分割とは、会社の一部の事業などを分割して切り出し、買収者に直接移転するという形がとられます。

会社分割のメリットやデメリットなどの特徴

・事業譲渡スキームでも、一部事業単位での買収は可能ですが、事業譲渡との大きな違いは、会社法で定めらている組織再編手続きを適切に踏むことにより、債権者や従業員などのステークホルダーからの承諾なしで売却・買収を進めることができるという点があります。

・前述の一方で、潜在的なリスクの遮断という意味では、事業譲渡スキームに劣ります

最後に

このように買い手の目線からM&Aの各スキームを紹介していきましたが、いかがだったでしょうか?

それぞれのスキームが全く異なる特徴を持ちます。各スキームの特徴を抑え、対象会社の需要やリスクに応じて、適切な選択を行うことが必要です。

もしM&Aを検討している方、会社はしっかりとデメリットやリスクも考慮してM&Aを実行しましょう。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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