ビジネスデューデリジェンスは灯台下暗しになりがち!?

「既存取引先」についてのデューデリ

営業についてのデューデリ、「既存取引先」の営業についてのデューデリを解説します。

既存の取引先の営業のデューデリでは、取引の継続性のチェックが重要になります。既存取引先との取引が、今後も継続するのか、取引条件はどうなっていくか、を確認しましょう。もし継続に疑問符がつくということになれば、売上が下がるリスクになります。既存取引先で売上の多いところについてはしっかり確認しましょう。

既存取引先では、リベートが発注の条件になっていることがあります。リベートを払っていないかについても確認しておきましょう。

既存取引先が少ない場合はリスクに

とくに気をつけるべきなのは、売上が1社や2社に依存している会社です。その場合は、「サイドヒアリング」といいますが、取引先にもヒアリングをした方がいいでしょう。

サイドヒアリングは、売り手オーナーにとっては、会社を売るという情報が漏れるリスクがあるので嫌がられます。しかし買い手としては、1社2社依存というのは相当なリスクになるので、サイドヒアリングの実施は譲れないところです。

サイドヒアリングの際は、営業代理店やコンサルタントなどの肩書きを使って、M&Aの買い手だとバレないよう細心の注意を払いましょう。その上で、取引先の今後の売上計画などを聞いて、いまの取引や取引条件が継続するのかを確認しましょう。

既存の取引先は安定しているか?

既存取引先に対するデューデリで、もうひとつ気をつけなければいけないのが、既存取引先が倒産するリスクです。取引先が倒産してしまうと、いくら売掛金があっても、それが回収できなくなるからです。

売上の大きい既存取引先の経営状態については、オーナーに話を聞いたり、帝国データバンクなどの情報機関のデータを調べたりして確認しましょう。

経営では、売上代金を回収できないことは往々にしてあります。経営は「着金がすべて」です。経営者や経営者を目指す人は、この言葉はしっかりと肝に銘じておきましょう。

既存の取引先は改善できる!

既存取引先のデューデリでは、改善ポイントが見つかる可能性が高いと思います。

仕入れなどでもそうでしたが、中小企業では価格の交渉をしていないところが多いです。もし、取引価格が長年変わっていないなら、値上げができる可能性が出てきます。同業他社へ営業して単価水準を確認し、それを材料に既存取引先と交渉すれば、単価を上げられるかもしれません。もしそれで単価が上がらなければ、取引先を変えるという判断もできます。

私の友人のファンドの投資先では、同業他社へ営業をかけたら、100で売っていたものが120で売れるようになったそうです。また、私の投資先のある会社は、買収前は、顧客の要望にすぐに応じてしまい、粗利率20%を切る案件が多かったのですが、利益率の低い案件が多いと高い案件を引き受けることができない、粗利率30%以下の取引は止めようと説明して、それを徹底したら、一気に利益率が上げることができました。

ちなみに、この「粗利率30%ルール」は、新オーナーとなった私自身が新規営業を行い、その背中を見てもらうことで、従業員の皆さんに、心と頭で納得してもらいました。こういうことを、創業者ではない、途中で入って来た買収者が、口だけで「あるべき姿」を説いても、だれも聞いてくれません。自分で汗をかいて、その背中を見せなければ、人は動きません。

この類いの改善は、その会社の技術力や商品の競争力があれば、少し強引にでも可能な部分です。そもそも中小企業では、「交渉をする」という発想すらないところがあります。そういう目線で改善ポイントを探していきましょう。

ただ、取引単価の値上げなどは、実際に経営に入って交渉をしてみないと、可能かどうかはわかりません。事業計画や買収価格に反映させるのが難しいのは、先述した通りです。

以上、ビジネスフローに沿ったビジネスデューデリのやり方を見てきました。ビジネスフローは業種や業態によって変わります。自分の知らない業種や業態の会社を買おうという場合は、事前に本やインターネットなどで、ある程度の下準備をしてから、デューデリに臨みましょう。

ビジネスデューデリの解説、まだまだ続きます。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。



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