最終合意における表明保証のポイントとは?

表明保証において気を付けるポイント

最終合意契約書での表明保証の交渉において、気をつけるべきポイントを、2つ指摘しておきましょう。

1つ目のポイントは、表明保証の条文で「重要な/重大な」という言葉を入れるかどうかです。

たとえば、売り手のオーナーから、「会社の経営成績に、『重要な/重大な』悪影響を及ぼす恐れのある事由は生じていない」という表明保証を取ったとします。

関連用語→表明保証とは?

しかし実際には、経営に悪影響のある事由が生じていたとなると、買い手としては、それに対する損害賠償を求めることになります。交渉がまとまらなければ裁判となるでしょう。

交渉や裁判の場では、経営に悪影響がある事由が発生したかが判定されますが、表明保証に「重要な/重大な」という言葉が入っている場合、その事由が、「重要な/重大な」ものだったかどうかについての判定も必要になります。表明保証に「重要な/重大な」という言葉が入っているため、争点が増えるということです。

その事由が、「重要な/重大な悪影響」と認められれば、売り手の損害賠償額は大きくなりますが、争点が増えることで交渉や裁判は複雑なものとなり、「重要な/重大な悪影響と」認められずに、損害賠償額が少なくなったり、発生しない可能性も出てきます。

表明保証に「重要な/重大な」という言葉が入るかどうかは、交渉や裁判に大きな影響を与えるポイントになるのです。

表明保証は実務上の影響をもたらす

2つ目のポイントが「知る限り」と「知り得る限り」という言葉です。

たとえば、売り手側が、ある問題について「『知る限り』はない」と表明保証をするケースと、「『知り得る限り』はない」と表明保証をするケースを比較して考えてみましょう。

「『知る限り』ない」ということは、後に問題が発覚しても、「知らなかった」と言えばよく、それを覆して、知っていたことを証明するのは、相当に難しい作業になります。この場合、大きな損害賠償は取りにくくなります。

一方、「『知り得る限り』ない」という場合は、その問題を知っていたか、知らないかではなく、経営者として知るべき問題だったのか、合理的には調べればわかったはずのものなのか、という争いになります。オーナー経営者であれば、経営について知らないことは基本的にはないはずですし、あったとしても調査できます。買い手としては、経営者の権限があれば知り得たと主張できて、その立証の難易度は下がります。損害賠償は比較的、取りやすくなるのです。

ですから、表明保証は、売り手としては「知る限り」、買い手としては「知り得る限り」にしたいというせめぎ合いになるのです。

このように契約には、実務上、大きな影響力のある言葉が存在します。実際の交渉においては、そういう言葉の影響力を念頭に置いて、交渉する必要があるのです。

最終合意契約書についての解説は以上です。

最終合意契約書ができれば、交渉は終わり、と思うかもしれませんが、まだまだ安心はできません。

次のコラムで、そのお話をしましょう。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。



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