バイアウトファンドによるQ&A回答コーナー(第4回)

こちらは、皆様の素朴な疑問に、PEファンドである、我々日本創生投資の社員(たまに代表の三戸も登場するかも?)がお答えしていくコラムとなっています。

できるだけ全ての質問にお答えしていこうと思うので、M&AのことからPEファンドのことまで、この機会を活かしてお気軽にご質問ください!

(*不適切な質問と判断させていただいた場合、お答えすることはありませんのであらかじめご了承ください)

では、今回も回答していこうと思います。

Q1.純粋な疑問なのですが、M&A仲介会社は、不動産のように会社情報をまとめて教えてくれないのでしょうか?

あくまでも、仲介やFAは、「案件を紹介すること」が仕事です。自分達が持っている案件の会社情報に関しては、調査をしてまとめているので、教えてもらうことは可能ですが、ここでより重要になるポイントが、彼らの持つ情報の全てを鵜呑みにはしてはいけないことです。これは、少し言い方が悪いかもしれませんが、仲介やFAというのは、前述したように「案件を紹介するのが仕事」であって、その提供する情報については、責任を持っていません。もちろん、大企業のM&Aをやっている仲介やFA(彼らは何億円もの手数料を取っています)ならそれなりに信用することができますが、スモールM&Aを実行する皆様が相手するような仲介やFAに対しては、過剰な期待をしない方がいいでしょう。これは、弁護士や税理士に関しても同じことが言えます。要するに、情報やデータについては、当事者である、みなさん自身で確認・判断することが重要なのです。

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Q2.M&A後に、元オーナーに同じビジネスを始めさせない方法はあるのでしょうか?

M&Aの契約書には(特に最終合意契約)、多くの場合、競業避止義務といって、「元オーナーは一定期間の間、その地域で同じビジネスを始めてはならない」という条文を組み込みます。ですが、これはあくまでも契約に過ぎず、相手側が必ずしも守る必要がないことも覚えておいてください。そして万が一、そのように競業避止義務違反をしてきた場合は、交渉や裁判をすることになりますが、根拠を持って損害額を提示するのが難しいという新たな問題が発生します。これは我々の肌感の話になりますが、競業避止義務違反で訴えても、損害額を満額取ることはできず、せいぜい認められたとしても、訴えの1.2割程度でしょう。競業避止義務違反を防ぐためには、しっかりとオーナーのことをよく見ておき、また関係を良好に保つことが大切ということですね。

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Q3.事業譲渡の場合における、従業員の雇用契約はどのようにすればいいのでしょうか?

基本的には、従業員は元の会社に退職届を出して、新しい会社と新たに雇用契約を結ぶことになります。事業譲渡契約書において、特定の人を明示することもありますし、「キーマンが来ないと事業譲渡を実行しない」という条文を盛り込むこともあります。しかし、これらの前提には、「職業選択の自由」が存在するので、これもまた、契約だからといって、従業員を拘束することはできませんし、契約書には「従業員を強制するものではない」という一文が必ず入ってきます。要するに従業員が移ってきてくれるどうかは、「従業員を口説く」買い手の能力になるのです。説明会や面接などを通じて、自分はどういう人間で、どういう気持ちでこの事業をやりたいのかを丁寧に話して、従業員に新しい会社に移ってきてもらえるよう、一人一人口説き落としましょう。ちなみに、これまた、我々の肌感になりますが、オーナーチェンジとなれば1割ぐらいの従業員が移ってきてもらえない(やめてしまう)イメージがあります。

Q4.マルチプルアービトラージについて教えてください!

マルチプルアービトラージとは、マルチプルの格差を利用して儲ける手法になります。M&Aでは、EBITDAで1億円が閾値になるため、その閾値を意識してM&Aをすること自体、ごく普通に行われており、これを一つの戦略として行っているファンドもあります。ちなみに、未上場の会社を買って、上場させてから売るのもマルチプルアービトラージの一つです。これは、上場によって一気に流動性と企業の継続性の信頼度が増し、数倍以上の価値になるからです。これは余談ですが、今でこそ、EBITDAで1億が閾値になっていますが、5年後や10年後にもっと市場が大きくなって、プレイヤーも増えてくれば、この状況が変化する可能性もあります。もちろんEBITDAが大きい方が、会社の継続性や安定性という意味で評価されるのは不変でしょうが、EBITDAで1億円が閾値で、アービトラージが生まれるというのは今だけかもしれませんね。

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以上で今回の質問返しを終わりたいと思いますが、いかがだったでしょうか?質問返しには定期的に実施するので、どしどし!なんでも!気軽に質問してください!

それでは次回の質問返しでお会いしましょう!

匿名なので、お気軽にどうぞ!(*不適切な質問と判断させていただいた場合、お答えすることはありませんのであらかじめご了承ください)

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記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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