M&Aはよく結婚にたとえられる!どの辺が似ているの?

M&Aと結婚は似ている

会社はモノではありません。法的にも会社は「法人」と呼ばれるように、「ヒト」同然の扱いを受けますし、何より、会社のオーナーさんにとって、自分の会社は、息子や娘のような存在です。

会社を立ち上げ、足下のおぼつかないよちよち歩きの頃は、四六時中、目を離すことができなかったでしょう。成長の過程ではトラブルに見舞われたり、壁にぶつかったりしたこともあったはずです。オーナーさんにとって会社とは、まさに手塩にかけて育て、自分もともに成長してきた、そんな存在なのです。

ですから、M&Aはよく結婚にたとえられます。M&Aとは、会社を譲り受ける側にとっては、オーナーさんの子どもと結婚することと同じであり、オーナーさんが命懸けで育ててきたものを引き受ける、それくらいの覚悟が必要になるのです。

お付き合いを始めるまで

では、M&Aのプロセスについて、結婚にたとえながら見ていきましょう。

結婚をしたいと思ったら、私たちは、「こんな人と結婚したい」「こんな結婚生活をしたい」と想像します。M&Aも同じで、まずは、「どんな会社を買って、どんな経営をしたいか」「自分はどのくらいのお金を出せるか」などを考えます。それが最初の「買収計画」作りというプロセスです。

次は、友人、同僚、親戚などいろいろな伝手を使って結婚相手を探すように、M&Aでも、いろいろな伝手を使って、できるだけ多くの会社のプロフィールを手に入れます。この作業が「ソーシング」というプロセスです。

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続いて、集めたプロフィールから絞り込むプロセスとなり、良さそうな会社をピックアップして、より詳しいプロフィールをもらって検討します。このプロセスを「初期デューデリジェンス」と言います。デューデリジェンスは、M&Aでよく使われる専門用語で、対象の会社のビジネスや資産価値について調べる作業のことです。略してデューデリとも言います。

初期デューデリでは、詳細なプロフィールを見て、その会社に「本当に買う価値があるのか」を調べます。そして、たしかに価値がありそうだとなれば、売り手側と「基本合意契約」を結びます。この基本合意契約が、結婚では、交際を申し込んでお付き合いをする約束のプロセスにあたります。

関連用語→基本合意書とは?

お付き合いを始めてから

基本合意契約を結んだら、いよいよM&Aの実行フェーズに入ります。実行フェーズでは「本格的デューデリジェンス」「事業計画作り」などを行います。

M&Aの実行フェーズは、結婚でいうと、結婚を前提にお付き合いをするプロセスです。お付き合いをすることで、相手の人となりに触れ、性格や考え方などを知ります。結婚したらどんな家庭にしたいか、子どもは欲しいかといった話もするでしょう。さらに、結婚後、生活費はどう分担するのか、家事はだれが担うのかなど、生活設計についても話し合っておくと、その後の結婚生活がスムーズになります。

M&Aも同様です。本格的デューデリジェンスで、詳細な資料をもらったり、オーナーにインタビューをしたりして、より詳しく会社のことを調べていきます。その会社にはどれくらいの利益を上げる力があるのか、経営にリスクはないか、その会社にいくらの価値があるか、自分の持つ経験とスキルでどんな経営やバリューアップができるか、などを調べます。こうしたデューデリをしながら、会社を買収後、どんな経営をしていくかを「事業計画」としてまとめます。

実行フェーズでは、会社を買うための資金調達をする必要もあります。

要するに、この実行フェーズで、「本当にこの会社を買うのか」の判断をするわけです。

そこで合意ができれば、結婚では、婚姻届に署名、捺印をして、役所に届け出て、晴れて結婚成立です。M&Aにおいては、細かな条件をつめて契約書にまとめ、契約書に捺印をして、売買代金のやり取りを経て、晴れてM&Aの成立となります。これが「クロージング」のプロセスです。

契約書が発効し、売買代金のお金のやり取りが終わると、会社の権利は移り、会社の売買は終了となりますが、M&Aの成否には、この後のプロセスについても、買収前によく検討しておくことが大きく関わってきます。つまり、M&Aはまだ終わっていないのです。

次のコラムでそのお話をしましょう。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。



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