M&A業界を志望する方必見!M&A業界のリアルな仕事内容や年収・求められる能力などをPEファンド目線で解説

高年収で有名なM&A業界の実情は?

M&A業界はニッチな業界ながらも、ゆうに1,000万円を超える高い平均年収を誇るため、就職・転職を検討している人は、年収に惹かれて一度は目にしたことがある業界でしょう。例えば、東洋経済オンラインの記事『最新!30歳年収ランキング全国トップ500』によると、上位10位の中に4社も「M&A業界」の会社がランクインしていることがわかります。

しかし、その「M&A業界」に就職・転職するために求められるスキルや資質が、かなり高度なものである上に、多くのM&A業界の会社は“中途採用のみ・採用人数が数人のみ”ということを掲げているため、就職・転職難易度は、かなり高くなっています。(*新卒で入れるのか?という疑問を持つ就活生もいるでしょうが、新卒で入れる会社も、少なからず存在します。)

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そこで、今回のコラムでは、その人気かつ高難易度の「M&A業界」について、実際にM&A業界にいる我々PEファンドの視点から、「本当に年収はランキング通りなの?仕事内容は?」といった疑問に答えたり、M&A業界を検討している就職・転職者に向けて、「どうやったら入社できる確率が上がるのか」ということについて、お伝えしていこうと思います。

M&A業界のプレイヤーと仕事内容

まず、M&A業界に就職・転職するためには、M&A業界の仕事内容について知る必要があります。

そして、そもそも一口にM&A業界といっても、主な携わり方は、M&A仲介業務・FA(ファイナンシャルアドバイザリー)業務・売り手/買い手といったM&Aの実行者、と大きく3つに分けられます。また、それらの3者を、ビジネスモデルや企業形態といった観点でグルーピングすると、M&Aにかかわる業務範囲を有する企業は、以下の7形態に分けられます。これらの形態ごとに違いや特徴を理解しないまま、面接などに挑むと痛い目を見ることは間違い無いのでしっかり確認していきましょう。


・M&A仲介会社
・国内・外資系証券会社の投資銀行部門(IB)
・独立系ブティック
・コンサルティング会社や金融機関のM&A部門
・事業会社の情報企画部(M&A戦略)
・公認会計士や税理士などの専門家
・ファンド

本来は、これら7つ全てについて細かく説明すべきなのでしょうが、今回のコラムでは、大きく分けた、『M&A仲介業務・FA(ファイナンシャルアドバイザリー)業務・売り手/買い手といったM&Aの実行者』の3者について扱います。これはまず、みなさんには大まかな仕事内容を理解してもらう必要があると、我々が感じたからです。では、まずはこれらの業務内容について説明します。

M&A仲介業務

M&A仲介業務とは、「両手」と呼ばれ、一人のM&Aのアドバイザーが、買手と売手の間=仲介者として、双方と契約し、M&Aの交渉を行い、中立的な立場でM&Aを進行・アドバイスすることを指します。特徴としては、案件規模がFA業務と比べて小さいことが多いため、案件を取ってくるところから、案件が終わるクロージングまでの全てを、1~数人で対応することが多いことが挙げられます。この案件を取ってくる際は、基本的に電話営業や金融機関からの紹介となりますが、現在では、M&A仲介会社が、自前のマッチングサイトを保有していることもあり、そのサイト内から案件をスタートさせることも増えてきています。

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顧客(買手)が、M&A仲介会社に依頼する理由は、『中立的な第三者として、買い手と売り手が円満になるような案件成立を目指してくれるため、案件の成立可能性が高い』ことなどが挙げられます。そのため、友好的なM&Aを望んでいる、日本人的な考えを持つ、中小企業のM&A(我々でいうスモールM&A)の世界では、ほぼほぼFAではなく、M&A仲介会社を利用しています。

M&A仲介業務を行う代表的な会社としては、一部上場をしている、M&Aキャピタルパートナーズ(新卒採用なし)や、M&Aセンター(新卒採用あり)、ストライク(新卒採用3年に1度程度あり)などが挙げられますが、新卒の人が目指せるのはおそらく、ストライクの採用時期に被らなければ、M&Aセンターとfundbookの2社といったところでしょう。


FA業務

FA (ファイナンシャルアドバイザー)業務とは、「片手」と呼ばれ、M&Aアドバイザーが、買手か売手のどちらか一方のみと契約し、契約した買手、売手どちらか一方の立場について、企業価値算定やその他エグゼキューションに係る業務の進行をサポートすることを指します。特徴としては、案件規模が仲介業務と比べて大きいことが多く、案件を取ってくる「カバレッジ部門」から、実際にM&Aを執り行う「プロダクト部門」まで、一つの案件に対して多くの人数が関わります。特に、証券会社などは、自社の金融機関と連携を取っていることが多く、案件支援や融資など、グループ企業が一体となってサポートすることが可能となっています。

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顧客(買手)として、FAに依頼するメリットは、自社のことだけを考えてくれるため、希望した値段や条件に近くなる可能性が高いことが挙げられます。そのため、投資家などをはじめとしたステイクホルダーを気にする、大手や上場会社、そして海外の会社とのM&A(クロスボーダーM&Aと言います)では、ほぼFAを利用しています。

FA業務を行うのは、証券会社の投資銀行部門(IBD)や独立系ブティック、コンサルティング会社のM&A部門であり、それぞれの代表的な会社として、ゴールドマンサックス(外資系証券会社)、野村証券投資銀行部門(日系証券会社)、GCA(独立系ブティック)、フロンティアマネジメント(日系コンサルティング会社)などが挙げられます。これらの会社には新卒からの入社が可能となっていますが、採用人数が多くても数十人であったり、求められるレベルが相当高いため、入社難易度は、他のどんな業界よりも高いと言われています。就職・転職活動の際は、万全の対策で臨みましょう。


売手・買手といったM&Aの実行者

M&A業務に携わるという観点では、公認会計士や税理士、または金融機関などの情報企画部として、融資やM&Aのサポートをしたりする方法や、事業会社の一員として、M&A戦略の意思決定をする立場になったりする特殊な方法もあります。

これらの方法は、より主体的にM&A業務に携わることが可能となりますが、金融機関や事業会社においてM&A業務を専門的に扱う人数が圧倒的に少ないため、M&A業務に携われないリスクが大きいです。(もちろんM&Aの専門会社ではない限り、証券会社の投資銀行部門やコンサルティング会社においても配属リスクは存在します。)

M&A仲介・FAにて求められる資質は?採用方法や年収も紹介

次からは、実際にM&A業界に就職・転職を検討している人に向けて、実際の就職事例や会社の募集要項などをもとに解説していこうと思います。ここでは一番志す人が多いであろう、仲介とFAに絞ってお伝えしていこうと思います。

M&A仲介業務への就職事例


○日本M&Aセンター(平均年収1353.3万円)

新卒 M&Aコンサルタント職(ビジネス系総合職以外)
エントリー→書類選考→面接3回程度→内定

中途 M&Aコンサルタント職(ビジネス系総合職以外)
エントリー→書類選考→面接3回程度→内定


【求める経験】
•法人営業実務経験 •コンサルティング、提案型営業の経験
•銀行・証券会社等、金融機関での実務経験 •引受等を含む投資銀行業務の経験


○M&Aキャピタルパートナーズ(平均年収2270万円)

中途 M&Aコンサルタント
エントリー→書類選考→面接3回程度→内定

【求める経験】
金融業界の営業経験(2年以上)で成績トップ10%~15%以内程度。その他の業界であれば、新規開拓やトップアプローチ形式で営業していた人


これが実際のM&A仲介会社の募集要項になります。まずは平均年収に目がいきますが、これは、M&A仲介業務が先に述べたように「両手」であり、売手と買手からフィーをもらうことができることから、かなり高めに設定されています。

また、特にM&Aキャピタルパートナーズの求める経験から伺えるように、M&A仲介業務には、会計や経営等の専門スキルより、営業スキルが求められていることがわかります。これは、先に述べた通り、M&A仲介業務における仕事内容が電話や訪問といった、営業がメインになるからです。ですから、もっと深く・実務的にM&Aに携わりたい方はFAをお勧めします。

しかし、実際には(特に新卒)「なぜM&A業務を選んだのか?」、「最近気になったM&Aは?その理由や概略を説明して」といったM&Aに関する質問があるという面接経験談も多いことから、「単に年収が高いから志望した」では通過することはできませんし、採用人数も数十人程度であるため、やはり就職難易度はかなり高いと言えるでしょう。

加えて、これはFAも同様ですが、営業や案件活発時には、寝る暇もなく業務に従事する必要があり、夜2時や会社に泊まり込みと言ったこともしばしば存在するため、体力や精神力も必要不可欠となってきます。体育会やスポーツに従事していた人は、体力があることをアピールするのも一つの手かもしれません。

FA業務への就職事例


○GCA(平均年収2063万円)

新卒 M&Aファイナンシャルアドバイザー
エントリー→書類・適性検査→面接複数回→内定

中途 戦略コンサルタント・M&Aファイナンシャルアドバイザー
エントリー→書類・適性検査→面接複数回→内定


【求める経験】
1)(国内外)大学又は大学院卒業
 (国内外)MBA課程修了者 歓迎
 原則として、以下の業務に関する実務経験3年以上
 ・M&Aファイナンシャルアドバイザリー・エクイティ・ファイナンス/インベストメント・デット・ファイナンス/インベストメント・M&A会計・財務/税務デューデリジェンス・会計監査・企業税務アドバイス・経営・戦略コンサルティング・企業/事業再生実務・経営企画実務・(国内外)金融機関における法人営業


2) (国内外)大学又は大学院卒業後、企業/官公庁/ベンチャー/プロフェショナルファーム/研究機関等での実務経験をお持ちの方(国内外)MBA課程修了者 歓迎
 原則として、以下の業務に関する実務経験3年以上
 ・経営・戦略コンサルティング業務・経営企画実務、事業戦略立案・企業/事業再生実務
 ・ベンチャー企業などでのCxO・ビジネスデューデリジェンス・M&Aファイナンシャルアドバイザリー業務・海外業務経験者 歓迎


一方、FA業務は「片手」であるために、売手と買手のどちらからしかフィーをもらうことはできないことから、M&A仲介に比べるとやや見劣りする面もありますが、こちらもかなりの高年収となっています(外資系投資銀行やファンドなど青天井になりそうなところは年収が億まで達することもあります)。

また、特にGCAの求める経験から伺えるように、仲介に比べて、FA業務は大規模・海外の案件であることが多いため、営業スキルよりは、会計や経営等の専門スキル、M&A実務のアドバイザーとしてのスキルが求められています。

これは、先にも述べた通り、FA業務は大規模案件を扱うことが多く、中小企業より複雑化した組織や制度をDD(デューデリジェンス)するために、M&Aプロフェッショナルになる必要があるからです。

加えて、FA業務は、M&A仲介同様に、夜2時や朝帰りといったようなこともしばしば存在するため、体力や精神力も必要不可欠となる上に、海外案件も多く存在することから、英語などの語学的なスキルも求められています。再度になりますが、以下の記事から数冊の読んで、専門知識を見につけておくといいかもしれません。

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PEファンド

最後にPEファンドについて就職のお話をしたいと思います。

まず99%以上のPEファンドは新卒を募集していなく中途採用のみとなっています。年収はあまりにもピンキリすぎて述べることは難しいですが、上位の人は何億円も稼いでいます。

PEファンドのフロント業務は、ソーシング、投資実行、バリューアップ、売却というプロセスで進んでいきます。多くのファンドでは、若手から、この一連のプロセスに一気通貫で携わるケースが多いです。そのため、求められるスキルセットは、ファイナンスの実務知識から、事業経営の能力まで、多岐にわたります。これらすべての能力を、即戦力として携えている、という人材はほとんどいないと思います。

ここから、多くのファンドでは、ファイナンスやM&Aの実務経験、知識の豊富な投資銀行出身者や、あるいは、事業運営サイドの能力に長ける戦略コンサルファーム出身者を入口で採用します。そして、最終的には、それらプロセスすべてをカバーできる人材へ成長することを期待します。

そのため、まずは、M&Aにおいてなのか、バリューアップにおいてなのか、どこかの領域で1つ、強い専門性やスキルを持っていることを前提として、さらに新しい領域の知識を素早くキャッチアップしていくことができるマインドセット・タフさを持ち合わせていることが必須となります。加えて、交渉や関係構築が成功を大きく左右するといっても過言ではないM&Aと投資先の事業経営に携わるわけですから、高いコミュニケーション能力やリーダーシップ力も求められるでしょう。

ぜひPEファンドへ挑戦したい方は日本創生投資でも採用をやっているので、ぜひ応募してみてください。

日本創生投資採用ページ

まとめ

ここまで、「M&A業界」についてのリアルをお話ししてきましたが、いかがだったでしょうか?

見てきたように、高年収の裏には、体力や責任感に加えて、仲介であればトップクラスの営業スキル、FAであればM&A実務経験とそれに関する専門スキルが求められていました。下記のコラムでは、これらをスキルを身につけるために何をすればいいのかが具体的に書かれているので、ぜひこちらも併せてご覧ください。

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最後に、FA業務は国内市場の縮小に伴う日本企業の海外進出M&Aの増加によって、仲介業務は少子高齢化に伴う事業承継系のM&Aの増加によってと、双方案件の増加傾向が続いている、成長市場であり、今後もその傾向は続くと予測されています。しかも、その上で、M&Aによって日本の成長と再興に携われるため、社会貢献性も非常に高くなっています。ぜひみなさんにはお薦めしたい業界ですね。

今日のコラムを活かして、一人でも多くの人が、M&A業界に飛び込めることを期待しています!頑張ってください!


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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