M&Aのメリットとは?買い手目線で投資ファンドが解説!

なぜM&Aをするのか?

改めて、なぜ会社は、個人は、M&Aを通じて会社を買うのでしょうか?

私はこれまで著書や多くのメディアを通じて、「日本社会を活性化させるために、会社を買いなさい」、「会社を買って資本家になりなさい」と問いかけてきましたが、これはあくまでもM&Aの中でも事業承継だけに着目した理由です。では、一体なぜ大手企業や上場企業などは、数億円〜数兆円の資金を用いて会社を買っているのでしょうか?

今回のコラムでは改めてM&Aをなぜするのか?M&Aのメリットはなんなのかについて解説していこうと思います。

M&Aの買い手側のメリットとは?

結論から言えば、M&Aのメリットは、「廃業しそうな会社を救出することができる」の他に、下記の3点が挙げられます。

買収した会社のブランドや知名度、顧客をそのまま利用することができる

事業規模とシェアを拡大することができる

買収した会社の技術や人材、ノウハウを獲得することができる

ここで大事ポイントなのは、『時間を買っている』ということです。それではもう少し詳しく見ていきましょう

関連記事→「時間を買っている」という言葉の解説

買収した会社のブランドや知名度、顧客をそのまま利用することができる

M&Aによって買手は、買収した会社の顧客基盤といった目に見える価値から、ブランドや知名度といった、目に見えない価値までを獲得することができます。

これによって、コストをかけて新たに顧客開拓をする必要や、長い時間をかけてブランドや知名度を構築していく必要が無くなりました。これは、例えば、「日本」にある会社が、「タイ」にある会社を買った場合、新たに「日本」の会社が「タイ」においてのブランドや知名度を上げる必要や、タイの現地顧客を確保する必要がないといったようなことです。

事業規模とシェアを拡大することができる

M&Aによって買手は、買収した会社の店舗や工場だけでなく、事業そのものを獲得することができます。

これによって、長い時間をかけなくても、事業そのものの幅(多角化)を広げることができるだけでなく、事業シェアをも広げることが可能となります。これは、例えば、「北海道エリアのみ」「農作物」を販売している会社が、「関東エリア」「和菓子」を販売している会社を買った場合、「農作物」事業から「和菓子」事業にも進出できるだけでなく、「北海道エリア」から「関東エリア」にも、店舗(シェア)を拡大できるといったようなことです。

買収した会社の技術や人材、ノウハウを獲得することができる

M&Aによって買手は、買収した会社のすでに保持している技術や人材、ノウハウを獲得することができます。

これによって、長い時間をかけて、技術や製品の開発をする必要や、新業種での人材確保に労力をかける必要がなくなります。これは、先にあげた「農作物」を販売している会社が、「和菓子」を販売している会社を買った例でいくと、新たに「和菓子」の味や製品工程を開発する必要や、「和菓子」の職人を新規で補充する必要がないといったようなことになります。

以上のようにM&Aの3つのメリットを紹介していきました。この3つは本来自社のみで成長していく場合にかける膨大な時間を、M&Aによって時間を買い、短く・効率よくすることが可能になるということを意味しています。

現在、社会や市場の変化は早く、もたもたしているとあっという間においていかれます。ですから、企業は莫大な資金を投じて、本来かかる時間を買うことで生き残りや成長を図っているのでしょう。

M&Aのメリットが発揮された企業事例

今度は実際の企業の事例を通じて、M&Aのメリットについてみていきましょう。今回取り上げるのは、日本のM&A投資する額では上位を誇る、ビール国内最大手のアサヒグループホールディングス(以下アサヒ)です。

アサヒは、人口減少に伴う販売量の減少だけでなく、量販店などでの低価格競争や発泡酒の人気拡大によって縮小している国内ビール市場からの依存を脱却するために、これまで多くのクロスボーダーM&Aを実施してきました。

関連用語→クロスボーダーM&Aとは?

そして2019年には1兆2000億円をかけて買収した、オーストラリア(豪州)ビール最大手のカールトン&ユナイテッドブリュワリーズ(以下CUB)もその戦略の一つです。

CUBはオーストラリアで50%弱のシェア、直近の売上高は約1700億円を誇るビールメーカーです。もし、このM&Aが成功し、付加価値の高いアサヒの高級ビールが受け入れられれば、大きな売上増加に繋がります。

この背景を、先にあげたメリットをもとに整理すると、

①「買収した会社のブランドや知名度、顧客をそのまま利用することができる」=「CUBがオーストラリア内に誇る知名度や顧客をそのまま利用することで、アサヒはコストや時間をかけずに新市場へ参入できる」

②「事業規模とシェアを拡大することができる」=「短時間で単純な顧客増加を狙えるだけでなく、新たにオセアニア地域に進出できる」

③「買収した会社の技術や人材、ノウハウを獲得することができる」=「新たに現地のオーストラリアにて製品工場を作ったり、現地の従業員を雇う必要がない」

といったようになります。今後のアサヒの動きにも目が離せません。

ここで、もちろんこの買収劇だけでなく、M&Aにはデメリットも存在します。これは後のコラムで扱うので、ぜひそちらをご覧ください。

最後に

このようにM&Aのメリットについて紹介していきましたが、いかがでしたでしょうか?

また企業が、人が、M&Aをする理由を理解できたでしょうか?前述したように、このようなメリットの背景には、デメリットが存在し、全てのM&Aが期待通りの結果を得られているわけではありません。(PMIの記事をお読みになればわかると思いますが、M&Aの成功率は3〜4割程度となっています)

関連記事→PMIの記事はこちら

そのため、もしM&Aを検討している方、会社はしっかりとデメリットやリスクも考慮してM&Aを実行しましょう。

その中でも何か問題や心配事・相談などございましたら、ぜひ三戸の方までお願いします。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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