経営者必見!M&Aの意向表明書とは?雛形のサンプルデータを無料配布!

M&Aにおける意向表明書とは?

結論から言えば、意向表明書とは、会社を売ろうとしている売り手に対して、買い手が「こんな条件で買いたい」という意向を文書で表明するものです。

関連用語→LOI(意向表明書)とは?

通常のM&Aでは、売り手側は、複数の会社からの意向表明を受けて、その中から具体的な交渉に入る会社を選んでいくという形式を取ります。しかし、スモールM&Aでは、売り手と買い手が最初から一対一であることが多いため、会社を買いたいという思いを、売り手の社長さんに対して、口頭でプレゼンして、買い手として選んでもらうことが多いです。そのため、スモールM&Aには、意向表明書というものはあまり登場しません。

しかし、今回のコラムでは、使うことがあった場合に向けて、または、使う機会がなくても、そのプレゼンの参考になるように、意向表明書に書かれている項目を見ていきましょう。

また、この記事の最後に、意向表明書のサンプルを貼っているので、もし使うことになった際には、ぜひご活用ください。

意向表明書に記載されている内容について解説!

それでは、意向表明書に記載されている内容について、項目ごとに解説していきたいと思います。

1.   当社の概要

貴社の概要、事業内容等をご記入下さい。会社案内等のご提出も可能です。

また、譲受主体と異なる場合には、その旨もご記載ください。

意向表明書では、自分がどういう人間なのかを示さなければなりません。それが当社の概要(第1項)です。

ここは、売り手の社長さんに「この人だったら、会社を引き継いでもきちんと経営してくれるな」と思わせるところでもあります。

2.   本件の目的等

本件に興味を持たれた理由、譲受けの目的、想定されるシナジー等をご記入ください。


そして、なぜその会社に興味を持ったのかを示すのが本件の目的(第2項)です。

M&Aは恋愛と同じで、どうして相手のことが好きなのかをきちんと言える人がモテます。みなさんとしては、ここで会社のどこが好きなのか示して、社長さんのハートを鷲掴みにしないといけないところで、プレゼンでも大きなポイントになります。

そのため、ここは力を入れるところで、「ウチだったらこんなことができます」や「こんな事業を展開して、従業員も取引先のみなさんもハッピーになれます」というようなことを書きます。

3.   譲受希望株式数

譲受けを希望される株式数(割合や%のみでも結構です)についてご記入ください。

譲受希望株数(第3項)は、スモールM&Aでは100%と書くのが普通です。

4.   譲受希望価格

貴社が希望する譲受希望株式数に対応する株式譲受希望価額をご記入ください。

なお、レンジでの価格をご記入頂いた場合には、そのレンジ幅の最安値が貴社の株式譲受希望価額と考えさせて頂きます。

譲受希望価格(第4項)は、入札の場合は、幅を持たせて書くと下限を取られることもあるので、確定させたほうがいいでしょう。

5.   株式譲受希望価格の算出根拠

株式譲受希望価額を算出した根拠をご記入ください。

希望価格の算出根拠(第5項)は、純資産や営業利益の数字などから論理的に説明するようにしましょう。売り手としては、根拠が薄い人よりも、根拠を持って説得的に値段を示した人を、当然、優先します。

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6.   想定されるDD後の価格変動要因

今後実施されるDDの結果、本意向表明における価格を変動する可能性がある場合において、想定される変動要因をご記載ください。

価格変動要因(第6項)では、デューデリジェンスによって希望価格が変わる可能性について示します。デューデリジェンスのあとに、「問題が見つかったから下げてください」といきなり言うと、トラブルになりますので、この段階で、考えうるものについてはできるだけ示しておいたほうがいいでしょう。

関連用語→デューデリジェンスとは?

なるべく多めに書いておいたほうがいいですが、多すぎて、売り手の機嫌を損ねてもよくないので、売り手の性格や顔色を見ながら示すようにしましょう。

7.   譲受代金の調達方法

譲受代金の調達方法およびその見込みについてご記入ください。

資金の調達方法(第7項)も、売り手の信頼を得る意味でポイントになるところです。これがすべて自己資金なら信頼されやすいでしょうし、逆に、資金調達がままならない人だと思われると、信頼してもらえません。

8.   譲受後の経営方針

譲渡対象株式を譲受後の対象会社の経営方針についてご記入ください。

譲受後の経営方針 (第8項)は、本件の目的(第2項)の延長線上で、引き継ぎ後の経営について具体的に示します。「自分が手塩に掛けてきた事業が、この人に任せると、こうなるのか」ということを、売り手に具体的にイメージさせることが大事です。

たとえば、「私ならIPO(新規株式公開)にまで持っていきます」という言葉を言われたら、売り手としては「オレの会社が上場企業になるのか」と思って、値段が少し安くても、この人に託したいと思うかもしれません。こうした、経営者の心に刺さる言葉やポイントを理解しながら、プレゼンをすることが大切です。

9.   役職員の処遇

本件実施後の対象会社の役職員の雇用に関する貴社のお考えをご記入ください。

10.  譲受けに際しての前提条件の有無・詳細

本件実施に際して前提条件がある場合には、その内容をご記入ください。

11.  意思決定プロセス及び今後必要となるプロセス

本意向表明書の提出にあたり貴社で行われた意思決定プロセス及び今後本件実施のために必要となる意思決定プロセスについてご記入ください。

役職員の処遇(第9項)で、いまの経営陣をどうするのかを示し、このM&Aをどういうスケジュールで進めるか(第11項)についても示します。スケジュールは意外に重要なポイントで、私(三戸)の場合は、細かな行程表を示して、売り手が、基本合意からクロージングまで、どういうスケジュールがあって、どう動いて、いつに何が決まるかがわかるようにしています。そこまで細かく示すことで、本気度を伝えることもできます。

さらに、M&Aというのはたいてい、いろいろな問題が出てきて、スケジュールが遅れがちになるので、行程表は順次更新するようにしています。相手側に不安を持たれないように、スケジュールが遅れる場合は理由を示して、きちんとプロセスが進んでいると相手側にわかるようにします。

ディールの進捗が不透明だと、売り手の虫の居所が悪くなって、「今月中でまとまらないなら、もうやめる」などということがよくあります。そういうところでディールを逃すことがないよう、売り手との信頼関係を維持するツールとして行程表を使っているわけです。

また売り手は、誰が意思決定者なのかを知りたがるので、意思決定のプロセス(第12項)もきちんと示したほうがいいでしょう。どういうプロセスでいつ意思決定が行われ、最終判断は誰がするのかについて、売り手側がわかっていないと、「誰の話を信じればいいのか」「いつ決まるのか」と不安になるからです。

意向表明書の雛形のサンプルデータを配布

ここまで意向表明書についてお話ししてきましたがいかがだったでしょうか?

このコラムで説明してきた意向表明書の内容について、みなさん(スモールM&Aを実行する人)はオーナーさんの前で、口頭で説明することになります。ビジネスにおけるプレゼンと同じように、事前にしっかり準備をして、ロ頭でのプレゼンの練習もしてから、オーナーさんとの面談に臨んだほうがいいと思います。また、実際に内容に何を書いたらいいのかわからないなどの不安材料あれば、必ず専門家を頼った方がいいです。我々もM&Aプロフェショナルとしてお待ちしております。

最後までお読みいただいた皆様にはいかに無料で使える意向表明書のサンプル(雛形)を添付したので、ぜひご活用ください。(下記のダウンロードボタンを押して頂けば、無料でダウンロードすることができます)ここまでお読みいただきありがとうございました。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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