この記事の目次
ROEが高いビジネス
おすすめのビジネスモデルの解説の続きです。
「ROE(Return on Equity=自己資本利益率)」が高いビジネスもおすすめです。ROE(純利益÷自己資本で出ます)とは、自分が出したお金である自己資本に対して、どれくらい利益が出ているかを示す指標です。ROEが高ければそれだけ、効率的に利益を作れていることになります。
ざっくり言うと、「たいしてお金出してないのにえらい儲かってるな」というのがROEの高い状態で、「こんなにお金出してるのにこれだけか」というのがROEの低い状態です。
都市部では、非常に値段の高い土地で収益性の低い事業を営んでいる中小企業がよく見られます。たとえば、父親から引き継いだ会社の保有する土地が1億円もするのに、純利益は100万円しか出てないといった会社です。
こういう会社は、負債の額にもよりますが、基本的にはROEは低くなります。しかし、ここを買収する場合、資産価値は高いので、会社の値段は高くなりがちです。その割に利益が出ないわけですから、投資効果が低くなるのです。
一般的には、設備などの事業資産が必要な製造業などはROEが低く、ネットビジネスのような事業資産の不要なビジネスはROEが高くなります。
資金繰りが良いビジネス
とくにおすすめなのが「資金繰り」の良い会社です。会社経営はなんといっても資金繰りが重要です。デューデリジェンスでは、しっかりと、その会社の資金繰りをチェックしましょう。
資金繰りを調べるときは、その会社と取引先の取引条件をよく見るようにしましょう。取引条件は資金繰りの良し悪しを大きく左右します。
たとえば、売上を回収するよりも、仕入れ先への支払いが先という取引条件の会社であれば、売上が拡大すれば、より運転資本が必要となり、そのままでは資金繰りは悪化します。こういう会社では、ときには黒字倒産もあり得ます。売上の回収は早くて、仕入れ先や外注先への支払いはずっと後でいいという取引条件なら、資金繰りに困ることはありません。代表的な例が飲食店です。
飲食店は、毎日、売上が入る一方で、仕入れの支払いはずっと後でいいという、資金繰りが非常に有利なビジネスモデルです。ただし飲食店は、この資金繰りの良さが逆にあだになることがあります。支払いがずっと後なので、経営者は、売上を自分のお金だと思って使ってしまい、いざ支払おうとしたら現金がない、ということが珍しくないのです。
おすすめのビジネスモデルのポイントまとめると、ストック収入がある、ビジネスに拡張性がある、利益率やROEが高い、資金繰りが安定している、という点になります。ソーシングやデューデリジェンスでは、これらのポイントに注意して見れば、その会社のビジネスモデルが買いなのか否かがわかるでしょう。
さて、次のコラムからはいよいよ、M&Aの実行フェーズについての解説に入ります。
記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)
2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。