京都におけるM&Aの現状とは?M&Aの事例をあわせてご紹介

京都はコロナ前まで、年間5,000万人以上が訪れていた人気の観光地です。外国人観光客も890万人以上が来訪していました。しかし、コロナ禍以降はインバウンド特需も失ってしまい、国内の旅行者も減少しています。

観光業など経済復活に向けては、まだまだ始まったばかりです。会社を存続させるためにも、さらに成長につなげなくてはなりません。厳しい経済状況にあり、京都においてもM&Aを選択する経営者も増えてきています。この記事では、京都のM&Aの動向や京都の主な産業、京都の中小企業のM&Aの事例について、ご紹介します。

京都のM&Aについて

M&Aとは、企業の合併・買収を指します。これまでは外国の企業が経営戦略の一つとして活用することが多かったM&Aですが、近年では国内の企業でも活用されている制度です。M&Aを実施する場合の売り手側のメリットは、後継者問題の解消や従業員の確保などがあげられます。デメリットは売却先が見つからない場合や、従業員の労働条件が悪くなる可能性もあります。しかし、多くは買収側の企業の規模のほうが大きいので、改善されることが多いようです。

京都のM&Aの動向について

京都においてもM&Aは実施する企業はあります。主なM&Aの動向としては、休廃業や解散する事業が増えてきているのです。「M&A Online」の調査では、過去4年間の京都府の企業が関わっていたM&A実施数は、都道府県別では京都府は7位でした。

伝統産業や中小企業の製造業などでは、素晴らしいものが作られていても後継者が不在という会社が多くなってきています。大手企業では、新規事業や海外進出が目的のM&Aの実施が多いですが、中小企業では後継者不足問題で事業承継のためにM&Aを行うケースが多くあります。

近年では職種も多様になり、働き方も変わってきました。テレワークを推奨する会社も増えたことで、会社に通う必要がない職種を選ぶ人も多いでしょう。ものづくりに携わる職業を選択する若い人も減ってきていることも理由にあります。国や行政なども支援策を打ち出してはいますが、成果がでるまでには追いついていないのが現状であり、やむをえず廃業を選ぶ会社も少なくありません。

本社が京都にある企業の特徴

本社が京都にある企業が多数あります。創業時から京都に拠点を置いて大きく成長した、世界的に有名な企業もあるのです。京都はものづくりの街でもあり顧客からのイメージがよいので、支店より本社を京都に置くことを誇りにしています。

皆さんがご存じの、任天堂、京セラ、ワコール、日本電産など、世界的にも有名な企業の本社が、創業時より京都にあります。

なかでも、日本電産は早期より企業成長の原動力として、M&Aを積極的に行っている会社です。精密小型モータの開発、製造において世界一のシェアを継続しています。M&Aにより優秀な技術を持つ会社を買収してきましたが、人員削減は行わないで子会社化した会社を再建させて規模を拡大してきた企業です。
また、京都へ進出したい他県の会社が、同業を買収するケースも見受けられます。

京都でのM&Aと事業承継が相談できる公的機関

京都府のM&A・事業承継に関する公的機関4か所を、以下にてご紹介します。

「京都府事業承継・引継ぎ支援センター」

国からの委託事業として京都商工会議所内に設置されている公的機関です。中小企業・個人事業主の事業承継専門に無料相談を受けられ、各種支援事業も行っています。

「京都府よろず支援拠点」

中小企業・小規模事業者向けに国が設立している無料の総合経営相談窓口です。中小企業診断士などの資格を持った専門家に、相談に応じてもらえます。

「京都府内各商工会・各商工会議所」

各地域の商工業の会員制の組織であり、非営利の経済団体です。京都府には、36の商工会(支所含む)8つの商工会議所があり、事業承継やM&Aの相談もできます。

「京都信用保証協会」

中小企業の資金計画をバックアップする公的保証機関です。証業務以外にも経営相談を行っているので、事業承継やM&Aの相談も可能です。

京都の産業について

京都の産業といえば、観光業などのサービス業が注目されがちですが、最大の産業は製造業でしょう。古くから承継されてきた伝統産業から、京都で生まれた世界的に有名な企業の先端産業もあります。京都では、ブランド力も確立されているので、100年以上続く老舗の企業も2,000以上存在します。

京都の伝統産業とサービス業は素晴らしい

京都は、伝統産業と飲食店をはじめ、サービス業も盛んな場所です。京都の長い歴史の中で、伝統産業が独自の文化を作っています。伝統産業を守り続けてきた多くの職人により、今日まで受け継がれてきました。

 

しかし、近年では伝統的な工芸品を作る職人が減少傾向にあるため、注文が入っても制作が追いつかず、出荷量は下降傾向にあります。

京都には世界中からたくさんの観光客が訪れてきます。海外からの旅行者も多いことから、飲食店などサービス業もグローバルに対応する強みを持っています。近年はコロナ禍で、国内外の観光客もめっきり減少してしまいました。ですが、京都は街並みも風景も独特です。

京都の強みは人と京都ブランド

京都には大学も多くあります。大学では様々な研究も行われており、優秀な人材を集めやすい環境にあることも強みではないでしょうか。京都の産業には、京都の魅力が詰まった「京都ブランド」として、国内外に発信できる物や技術がたくさんあります。

また、本社が京都にあり、創業者が一から育てた世界的にも有名な企業もあるので、優秀な人材も集まってくるといえます。京都は盆地で土地も狭く、大型の工場を建てることができません。大量生産はできませんが、小さな工場でも品質にこだわり、多品種少量生産で付加価値を付けた製品を生み出す力があるのはとても魅力です。

海外の顧客に対しても、品質が良い製品のアピールができると共に、京都に本社があることもイメージも良く、京都のブランド価値にも結びつけることができます。

京都のM&Aの事例

京都で2店舗展開する八百屋へ出資、投資事業会社のM&Aにより子会社化

京都にあるベンチャー会社の八百屋をM&Aで子会社化しました。仕入れルートも見直され、店舗展開も期待できます。こだわって選ぶ野菜や果物を取り扱い、スーパーに押されがちな八百屋業界を盛り上げることで、スーパーに押されがちな八百屋業界を盛り上げることで、業界の地位向上やイメージアップにもなるでしょう。さらに、若者が働きたいと思える業界にすることを目指していきます。

個人投資家が副業でM&Aを行う。京都のホテル区分営業権買収

M&Aは企業だけが行うものではありません。副業で不動産投資の物件を探していた個人投資家が、ホテルの区分事業という案件に出会い、ホテル全室の内、数部屋の区分営業権の譲渡を受けた案件です。探していた時期がコロナ禍でもあったので、値段が下がっていたことも購入の決め手となったそうです。

京都の老舗和菓子屋のM&A

京都の100年以上続く老舗の和菓子屋のM&Aの事例です。四代目を継がれたご主人は、親族で経営されていた京菓子の赤字解消のため、材料の見直しと販売方法を変えました。デパートの催し会場での販売、ネット販売の売上も順調に伸びて事業も成長していったのです。親族のみだった従業員も10人以上と増えていったので、人員のコントロールなどご主人の業務も多忙となっていきました。事業拡大と組織を大きくするという将来を考えたときに、M&Aの提案を受けたそうです。4か月ほどで売却先も見つかり、菓子業界を牽引するグループとして頑張っておられます。

まとめ

京都は国内外からの観光客も多く訪れる、魅力が詰まった場所です。外国からのお客様に対して飲食店などサービス業はグローバルに対応できる強みを持っています。しかし、コロナウイルスが蔓延したことにより、以前のようなインバウンド需要もまだまだ見込めない状況にあります。

伝統産業や製造業も盛んではありますが、働き方の多様化に伴い、事業承継問題でのM&Aは今後も続くでしょう。京都は優秀な人材も確保しやすいうえ、技術力の高い中小企業もたくさん存在しているのに、京都の産業が一つまた一つと消えていくのは寂しい限りです。

M&Aを使って伝統産業や技術力を守ることは、京都ブランドの強化につながっていくのではないでしょうか。

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