経営者の高齢化や後継者問題などが懸念される製造業界では、M&Aによって課題解消を図る企業も少なくありません。そこで今回は、製造業の最新のM&Aの動向や製造業の売却・買収側のそれぞれのメリットや成功事例、失敗事例などを紹介していきます。
製造業のM&Aの動向や市場情報
製造業界の企業がM&Aを行う理由は様々あり、中でも一番多いのが後継者問題や事業拡大などです。製造業界は多岐に渡り種類があり、大手か中小製造業かによってもM&Aを行う理由は異なります。ですが、動向や市場情報については製造業の種類によって大きな違いはありません。ここでは、製造業のM&Aの市場情報として件数・動向・価格相場について個別に解説します。
製造業のM&Aの件数
例年M&Aのランキングでも件数がトップで、2014年以降は成立件数で首位でしたが、2020年には成立件数が減少しました。これは、製造業界がコロナショックによる影響を大きく受けているからです。コロナショックによって大手製造業が操業を停止してしまうと、下請けとなる中小製造業界の発注が少なくなってしまいます。2014年度から製造業のM&Aは活性化していたのですが、コロナショックが一つの要因となり現在は下火になりつつありました。ですが、廃業件数は最も多い2020年から比べると2021年は3割減少しM&Aの成功件数も回復しつつあります。
製造業のM&Aの動向
製造業はコロナショックで打撃を受けているとはいえ、M&Aの成功件数がないわけではありません。特に主流となっているのが後継者問題による製造業のM&Aですが、大手製造業の場合にはIT化などを含め技術革新などを目的としたM&Aも行われています。もちろん中小製造業界においても時代の変化に伴い後継者問題だけではなく、自社を主体的にするための手段としてM&Aも増加の傾向にあります。安定や成長を考える場合には大手製造業者の傘下に入るための中小製造業界のM&Aを行うケースもすくなくありません。
製造業のM&Aの価格相場
製造業のM&Aを行うにあたって価格相場を知っておくことは大事なポイントです。自社の相場をしっかりと知っておくことで、安く買収されることや高く売却されることを回避することに繋がります。製造業では、時価純資産+営業利益×2〜5年分が主な計算方法で目安にできます。ただし、将来性なども加味されるし、優秀な人材が多い場合なども価格に影響があります。また買収側が急ぎでM&Aを行う場合なども価格に影響を及ぼします。
製造業のM&Aのメリット・デメリット
製造業のM&Aを行う時には売却側と買収側では、それぞれが異なった部分を見ます。これは売却側と買収側でメリットが違っているからです。製造業のM&Aでは後継者問題が主流となっていますが、後継者問題が解消するだけでなく少しでもプラスに働かせるのが大事です。今後の見通しなどが大事な要素となるように、どんなメリット・デメリットが生じてしまうかも大事なポイントです。ここでは、売却側のメリット、買収側のメリット、売却・買収のデメリットの3項目で解説していきます。
製造業の売却側のメリット
製造業の売却側には、売却利益の取得・事業継承・廃業によって生じる支出の回避・経営の安定化などがメリットになります。売却利益に関しては優秀な人材がそろっている場合などには、相場価格よりも高く売却できる可能性があります。事業継承は後継者問題で悩んでいる製造業のM&Aでは一番のメリットです。従業員が職を失ってしまうことを避けることにも繋がるので、M&Aでは一番のメリットとされています。またブランド力などを活用することで成長させることができるので、M&Aを行う製造業が多いと言えます。
製造業の買収側のメリット
製造業のM&Aの最大のメリットはコストを削減して優秀な人材やノウハウを取得できることです。一から採用して教育していく過程は時間と労力が伴いますが、M&Aでは優秀な人材やノウハウの取得を行えます。さらに、取引先や最新設備を取得することも可能です。時間や労力を省き低コストで取得できるため、すぐに事業に取り掛かることができるので利益につなげることが可能です。M&Aではまとまった買収価格が必要ですが、後にかかるコストを削減できればプラスになると言えるでしょう。
売却・買収それぞれのデメリット
製造業のM&Aでは売却側は、ノウハウや技術を失う可能性があります。買収側に経営を継承しても会社の利益のために業種を変更する場合もあります。また、経営者の交代によって取引先との関係が悪化する可能性もあるのがデメリットと言えます。逆に買収側は、経営者の交代によって辞職してしまう場合がありノウハウなどの引継ぎができない可能性があります。また、買収当時の技術で顧客のニーズに答えられない場合は設備や人材の育成が必要になる可能性があります。
製造業のM&Aの成功と失敗事例
多くの製造業でM&Aが行われていますが、その全てが成功しているわけではありません。結果的にM&Aに失敗してしまったケースがあるので、自社のM&Aを行う前にどのような成功事例や失敗事例があるのかを知っておくと参考にできます。成功事例を真似してみることもできますし、失敗事例を教訓にしてM&Aを行うことができます。製造業の種類によっての違いはありますが、成功事例と失敗事例はM&Aを行う場合には知っておくと便利です。
レンゴーが永井鉄工のM&A
2022年に包装資材を製造・販売を行っているレンゴーが、永井鉄工の発行済みの株式を100%取得することで子会社化しました。永井鉄工は製紙関連機械や省力化装置の設計や制作などを行っていて、レンゴーによって経営面の安定した支援を受けることができる点を考慮しM&Aが実現しました。レンゴーにとっては、技術面における連携を図ることができると考えM&Aを行っています。今後はレンゴーグループ全体の技術向上につながると考え双方が一致してM&Aが行われて成功した事例です。
日工による宇部興機のM&A
2022年に、アスファルトなどを生成するプラント機械メーカーで知られる日工が宇部興機の発行済み株式を全部取得して子会社としました。宇部興機はプラント工事やインフラ工事などを請け負っていて環境分野を推進しています。日工は、環境リサイクル事業を行っているので宇部興機を取り入れることで、事業を拡大させることを目的としてM&Aが行われました。両社にとって技術やノウハウを共有できるのはプラスになると考えてまとまり成功した製造業のM&A事例です。
パナソニックの三洋電機のM&A
2011年に、世界的にも有名なパナソニックとリチウムイオン電池で有名な三洋電機で行われたM&Aは失敗事例になります。三洋電機は、巨額の投資などで失敗などがあり経営難に陥っていました。パナソニックはリチウムイオン二次電池事業などの強化を考えてM&Aが行われました。ですが、残念ながら買収後にリチウムイオン二次電池事業の価値が下がる結果になってしまいます。円高などの環境悪化が要因となりますが、パナソニックが三洋電機をM&Aしてから2年で三洋電機の価値がなくなってしまい完全消滅してしまう結果になります。
製造業に強いM&A仲介業者一覧
中立的な立場でM&Aを円滑に行ってくれる仲介業者は多数あります。双方の希望条件などを考慮しながら話を進めてくれるので、仲介業者を利用する方がM&Aの成功事例が多いです。費用が発生してしまう分、効率よく交渉を進めることができるのがポイントです。選び方としては、自分の規模に合わせて選択するのが大事です。また、見積やサービス内容をしっかりチェックするのも大事なポイントです。 大手製造業や中小製造業を専門の仲介業者などもあるのでM&Aを行う場合には注意して選択しましょう。
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社のM&A仲介サービス
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社のM&A仲介サービスは大手のM&A仲介業者で、着手金が無料で利用できます。相談も無料で行うことができるので、製造業のM&Aを行うか迷っている方でも利用しやすいのが魅力の仲介業者です。国内トップクラスの成約件数を誇っていて製造業においても多くの実績があるので安心感を持てる仲介業者の一つです。実際に成約した製造業のM&Aに関しても公式ホームページで確認することができます。対応できるエリアが東京都限定になってしまうので注意するようにしましょう。
株式会社クラリスキャピタルのM&A仲介サービス
株式会社クラリスキャピタルのM&A仲介サービスは、サポートが充実している仲介業者の一つです。売却側・買収側の双方が満足できるように誠実・公正・共栄をモットーとしていて、真心のこもったサービスを受けられます。専門知識や実務経験が豊富なアドバイザーも在中しているので、M&Aに不安を抱えている方でも利用しやすいです。幅広い事業のM&Aの実績を有していて、製造業のM&Aの実績もそろっています。サポート面を重視して仲介業者を選択する場合には、一度チェックしてみましょう。
株式会社オンデックのM&A仲介サービス
株式会社オンデックのM&A仲介サービスは、弁護士や公認会計士などの有資格者によって構成されている仲介業者です。初期費用が少なく見積もられていて、会社規模によって異なる手数料になっているので大手製造業だけでなく中小製造業も対応しています。豊富な実績を持っていて対応スピードが早い点も高く評価されている仲介業者です。事業継承におけるM&Aは特異な分野としているので後継者問題での製造業のM&Aには利用しやすいでしょう。
まとめ
製造業のM&Aは、後継者問題だけではなく事業拡大や経営の安定化など色々な理由で行われます。市場環境や動向は変化しますが、現在の状況をしっかりと把握しておくのが大事です。事前の調査などを怠ってしまい失敗するケースも少なくありません。そのため、過去の事例やメリット・デメリットも含め情報を入手するのは大事な要素です。M&A仲介業者もしっかりと調査して、双方にとっていい形になる製造業のM&Aを実現しましょう。