M&Aの株式譲渡契約書の作成方法とは?サンプル(雛形)を無料配布!

株式譲渡契約書とは?

今回は、M&Aのフローにおいて最後の契約書となる株式譲渡契約書を見ていきましょう。

結論から言えば、株式譲渡契約書は、基本合意契約書の精度をさらに上げて、契約条件を確定させるものです。

関連用語→株式譲渡契約書(SPA)とは?


今回のコラムでは、M&Aに登場する契約書の中で一番重要になる株式譲渡契約書がどんな内容になるのか、書かれている項目を一つずつ解説していきたいと思います。(*かなりの分量のため省略箇所があります)

また、この記事の最後に、株式譲渡契約書のサンプルを貼っているので、もし使うことになった際には、ぜひご活用ください。

項目ごとに株式譲渡契約書の内容について解説!

第1.1条(本件株式の譲渡)

売主は、本契約の規定に従い、平成○年○月○日又は売主及び買主が別途合意する日(以下「クロージング日」という。)をもって、対象会社の発行済普通株式○○株すべて(以下「本件株式」という。)を買主に譲り渡し、買主はこれを譲り受けるものとする(以下「本件譲渡」という。)。

主文(省略済)で売り手と買い手の双方の当事者が示され、第1.1条でいつ株式の譲渡がなされるかが定められます。

第1.2条(譲渡価額)

買主は、本契約の規定に従い、本件譲渡の対価(以下「本件譲渡価額」という。)として、金○○円(1株あたりの譲渡価額である○○円に本件株式の株式数○○を乗じた額)を売主に対して支払うものとする。

前項に基づく本件譲渡価額の支払は、売主が別途指定する銀行口座に振込送金する方法により行われるものとする。振込送金にかかる費用は、買主が負担するものとする。

第1.3条(クロージング)

売主及び買主は、クロージング日に、別途合意する時間及び場所において以下の各事項を履行する(以下「クロージング」という。)ものとする。但し、第1号及び第2号は同時に履行するものとする。クロージングにより、本件株式に係る権利は、売主から買主へと移転する。

(1)売主による本件株式の株主名簿上の名義を売主から買主に書き換えるために必要な株式名義書換請求書の買主への引渡し

(2)買主による前条に基づく売主に対する本件譲渡価額の送金

第1.2条では買収金額と振込先が明示され、第1.3条でクロージングの期日と場所と手続きの内容が示されています。


クロージングの手続きは、通常、銀行など送金しやすい場所で行われることが多いです。契約書に捺印し、続けて、送金の作業を行い、売り手と買い手の双方が着金を確認して、クロージング手続きの完了になります。

第2.1条(売主の義務の前提条件)

売主は、クロージング日において、以下の各号が全て満たされていることを条件として、第1.3条所定の売主の義務を履行するものとする。但し、売主は、その任意の裁量により、以下の各号の条件未成就を主張する権利を放棄することができる。

1.本締結日及びクロージング日において買主の表明保証違反が存在しないこと。

2.本締結日からクロージング日までに(クロージング日を含む。以下同じ。)買主による本契約の義務違反が存在しないこと。

3.クロージング日までに、以下に掲げる書類が売主に交付されていること

a.  買主の印鑑証明書(3ヶ月以内に発行されたものに限る。)

第2.2条(買主の義務の前提条件)

買主は、クロージング日において、以下の各号が全て満たされていることを条件として、第1.3条所定の買主の義務を履行するものとする。但し、買主は、その任意の裁量により、以下の各号の条件未成就を主張する権利を放棄することができる

1.本締結日及びクロージング日において売主の表明保証違反が存在しないこと。

2.本締結日からクロージング日までに売主による本契約の義務違反が存在しないこと。

3.本締結日からクロージング日までに対象会社の経営、財政状態、経営成績、信用状況等に重要な悪影響を及ぼす事態が発生していないこと。

4.クロージング日までに、以下に掲げる書類が買主に交付されていること

a.  売主及び対象会社の印鑑証明書(3ヶ月以内に発行されたものに限る。)

5.売主が本契約に基づき本締結日以降クロージング日までに履行、遵守すべき義務・条件等を履行し、又はこれを充足していること

第2.1条と第2.2条は、買主と売主にそれぞれ買ったり売ったりする権利があることを確認する条文になります。

第3.1条(売主による表明及び保証)

売主は、買主に対し、本締結日及びクロージング日のそれぞれにおいて、以下の各事項の重要な部分について真実かつ正確であることを表明し、保証する。 

(1)(権利能力)売主は、日本法に基づき適法かつ有効に設立され、かつ存続する○○組合であり、現在行っている営業を行うために必要な権限及び権能を有している。

(2)(強制執行可能性)本契約は、売主により適法かつ有効に締結されており、かつ両当事者により有効に締結された場合には売主の適法、有効かつ法的拘束力のある義務を構成し、法律、条例、命令、政令、省令、規則その他の法的拘束力を有する規範(以下「法令等」という。)又は信義則によりその履行の強制が制限される場合を除き、その各条項に従い、売主に対して執行可能である。

(3)(法令等との抵触の不存在)売主による本契約の締結及び履行は、(i)法令等に対する違反を構成するものではなく、(ii)売主が当事者となっているか又は売主若しくは売主の財産を拘束する契約等について、債務不履行事由等を構成するものではなく、かつ、(iii)司法機関又は行政機関等の判断等に対する違反を構成するものではない。

(4)(本件株式の帰属)売主は、本件株式を適法かつ有効に保有し、かつ、処分権限を有しており、また、対象会社の株主名簿上の株主である。

(5)(対象会社に関する事項)

ⅰ(設立及び存続)対象会社は、日本法に基づき適法かつ有効に設立され、かつ存続する株式会社であり、現在行っている事業を行うために必要な権限及び権能を有している。

ⅱ(倒産手続)対象会社に関して、法的整理手続の開始の申立は行われておらず、かかる申立の原因は存在しない。

ⅲ(株式)対象会社の発行済株式は、対象会社発行済全株式のみであり、そのすべてが適法かつ有効に発行され、全額払込済みである。対象会社発行済全株式を除き、対象会社の株式、新株予約権、新株予約権付社債、オプション、その他の株式に転換できる権利(以下「潜在株式」という。)は発行されていない。

第3.2条(買主による表明及び保証)

買主は、売主に対し、本締結日及びクロージング日のそれぞれにおいて、以下の各事項の重要な部分について真実かつ正確であることを表明し、保証する。

(1)  買主は、日本法に基づき適法かつ有効に設立され、かつ存続する株式会社であり、現在行っている営業を行うために必要な権限及び権能を有している。

(2) 買主は、本契約の締結及び履行のために必要とされる全てのその他の手続を有効かつ適正に履践しており、又はそれらの手続を、本契約又は法令若しくは規則等に定められた期限までに完了する。本契約は、買主により適法かつ有効に締結されており、かつ両当事者により有効に締結された場合には有効かつ法的拘束力のある義務を構成し、法律、条例、命令、政令、省令、規則その他の法的拘束力を有する規範(以下「法令等」という。)又は信義則によりその履行の強制が制限される場合を除き、その各条項に従い、買主に対して執行可能である。

(3)買主による本契約の締結及び履行は、(i)法令等に対する違反を構成するものではなく、(ii)買主が当事者となっているか又は買主若しくは買主の財産を拘束する契約等について、債務不履行事由等を構成するものではなく、かつ、(iii)司法機関又は行政機関等の判断等に対する違反を構成するものではない。

第3条は表明保証の条文になります。第31条は売主による表明保証で、(1)売主に権利能力があること、(2) この契約に法的拘束力があること、(3) この契約が法律に違反していないこと、(4)株式を適切に保有していること、(5)会社が適法に存在していることを表明保証しています。

関連用語→表明保証とは?

とくに(4) は重要です。株式は登記されているものではありませんから、誰が持っているかで揉めることがあります。ここは法務DDでも確認する部分ですが、蓋を開けたら、株式を遠い親戚が持っていたということがありうるので、最後の契約書でも「大丈夫ですね」と表明保証を取っておくわけです。

第3.2条は買主の表明保証なので、それほど重要ではありません。

第4.1条(善管注意義務等)

売主は、本締結日からクロージング日までの期間、善良なる管理者の注意をもって、対象会社をして、本締結日以前と実質的に同一かつ通常の業務の方法により、業務の執行及び財産の管理・運営を行わせるものとし、本契約に定める場合及び買主の事前の書面による承諾のある場合を除き、通常の業務以外の業務執行を一切行わせないものとする。

売主は、本締結日からクロージング日までの間に、対象会社に新株又は新株引受権、新株引受権付社債、転換社債、ストックオプション、新株予約権等の潜在株式を発行させず、または、自ら対象会社の新株又は新株引受権、新株引受権付社債、転換社債、ストックオプション、新株予約権等の潜在株式の割当を受けない。

第4.2条(本件譲渡の承認)

 売主は、本締結日からクロージング日までの期間に、対象会社をして、本件譲渡を承認する手続きを適法に行わせるものとする。

第4.1条は善管注意義務の条文で、クロージングまで会社の経営で大きな変化はさせず、通常通りの経営を続けてくださいというものです。契約の捺印と送金のタイミングがずれるようなシーンを想定しています。

第5.1条(売主による補償)

1.売主は、自らの表明保証違反(当該違反につき相手方において合理的に知り得たものを除く。また、クロージング後は、クロージング日における表明保証違反に限る。)、又は、本契約に基づきクロージング日までに履行又は遵守すべき義務の違反に起因して買主に損害を被らせた場合には、当該損害(弁護士費用等を含む。)を○○円を上限として賠償する義務を負うものとする。なお、かかる場合における損害賠償義務は、単一の事実に基づく請求の合計額が金○○円以上となる場合に限り認められるものとする。

2.前項に基づく補償は、本契約上別段の定めがない限り、買主がクロージング日から1年以内に書面によりその旨を通知した場合に限り行われるものとする。

第5.2条(買主による補償)

1.買主は、自らの表明保証違反(当該違反につき相手方において合理的に知り得たものを除く。また、クロージング後は、クロージング日における表明保証違反に限る。)、又は、本契約に基づきクロージング日までに履行又は遵守すべき義務の違反に起因して売主に損害を被らせた場合には、当該損害(弁護士費用等を含む。)を賠償する義務を負うものとする。

2.前項に基づく補償は、本契約上別段の定めがない限り、売主がクロージング日から1年以内に書面によりその旨を通知した場合に限り行われるものとする。

第5.1条は売主の補償についての条文で、表明保証違反があった場合はどのくらいの金額の補償をするかを定めています。ただここで、補償金額を定めるとはいえ、お金はなければ払えないので、買い手としては、回収できない可能性も想定に入れておかなくてはなりません。

将来発生するかもしれないリスクについて、議論がうまくまとまらなければ、エスクローという方法が打開策になります。エスクローは売り手と買い手の双方にメリットがあります。こういうオプションを複数持っているほうが契約は進めやすくなるでしょう。

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第6.1条(本契約の終了)

1.本契約は、以下の各号に掲げる場合にのみ終了するものとする

(1)売主及び買主が、書面で本契約の終了につき合意した場合。

(2)本契約第6.2条に基づき本契約が解除された場合。

2.売主及び買主は、本契約に別途定める本契約の終了により、終了時においてすでに本契約に基づき発生した義務・責任又は終了前の作為・不作為に基づき終了後に発生した本契約に基づく義務・責任を免除されるものではなく、また、本契約の終了は、本契約終了後も継続することが本契約に意図されている一方当事者の権利、責任又は義務には一切影響を及ぼさないものとする。

3.本契約の終了にもかかわらず、前項及び本項、第6.2条(解除)乃至第7.11条(一般条項)の効力は存続するものとする。

第6.2条(解除)

1.売主又は買主は、以下の各号に掲げるいずれかの事由又は事象が生じた場合には、クロージング日までに限り、相手方への書面による通知により、本契約を直ちに解除することができる。(ただし本項第(3)号の場合は、売主のみ解除できる。)

(1)相手方に重大な表明保証違反があることが判明し、その結果本契約の目的を達成することが困難となった場合。

(2)相手方に本契約を継続し難い重大な義務の違反があり、書面による催告にもかかわらず10営業日以内に当該違反が是正されない場合。

(3)買主が本件譲渡を○年○月○日までに実行しない場合

(4)相手方に対し破産手続開始、民事再生手続開始、会社更生手続開始、特別清算開始その他これらに類する手続の申立てがなされた場合又は私的整理手続が開始された場合。

2.売主又は買主が、本契約に違反することで相手方に損害、損失、費用を生じさせた場合(クロージング日までに本件譲渡が成立しない場合を含む)は、その損害を賠償する責を負う。前項に基づく解除は、損害賠償の請求を妨げない。

3.本契約の解除は、本条に従ってのみ可能であり、売主及び買主は、本条に基づく場合を除き、債務不履行責任、瑕疵担保責任、その他法律構成の如何を問わず、本契約を解除できないものとする。

第7.1条(費用負担)

本契約において別段の定めがある場合を除き、本契約の締結及び履行にかかる費用(ファイナンシャル・アドバイザー、弁護士、公認会計士、税理士及びその他アドバイザー等にかかる費用を含むが、これらに限られない。)については、各自の負担とする。

第7.2条(秘密保持義務)

1.売主及び買主は、秘密情報(次項において定義する。)を本契約の目的のためにのみ使用し、そのために必要な最小限度の内容及び範囲内で自己の役員、従業員、アドバイザー(ファイナンシャル・アドバイザー、弁護士、公認会計士及び税理士を含むが、これらに限られない。)若しくは代理人(以下、これらの者を総称して「役員等」という。)に開示する場合を除いては、厳に秘密を保持し、相手方の事前の書面による同意なく秘密情報を第三者に開示又は漏洩してはならないものとする。

2.本条において「秘密情報」とは、(a)本契約の内容及び(b)本契約の交渉過程、本契約の締結若しくは履行又は対象会社による事業開始の準備に関連して知り得た相手方若しくは対象会社に関する情報をいう。但し、対象会社に関する情報は、クロージングが完了するまでの間並びに本契約が終了した後は、売主との関係では秘密情報に含まれないものとする。

3.前項の規定にかかわらず、以下の各号のいずれかに該当する情報については、秘密情報から除外されるものとする。

(1)受領の時点で、既に公知の情報。

(2)自らの責によらずに公知となった情報。

(3)受領の時点で既に正当に保有していた情報。

(4)正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく適法に入手した情報。

(5)受領情報によらず、自らが独自に開発又は発明した情報。

4.売主及び買主は、本条第1項に従い、自己の役員等又は第三者に秘密情報を開示する場合、当該役員等又は当該第三者に対して本条に基づく秘密保持義務を遵守させるものとし、当該役員等又は当該第三者の秘密保持義務違反について、一切の責任を負うものとする。

5.本条第1項乃至前項の規定にかかわらず、秘密情報について、裁判所、監督官庁、その他の司法機関・行政機関から適法に開示を求められた場合その他法令又は金融商品取引所若しくは証券業協会の規則により開示義務を負う場合には、本契約の当事者は、法令又は規則上必要とされる最小限度の内容及び範囲内で、当該開示を行うことができる。但し、かかる開示義務を負う当事者は、当該開示前に、相手方にその旨を書面により通知し、かつ、秘密情報の秘密が保持されるよう最善の努力をするものとし、仮に開示前に書面により通知できなかった場合には、開示後遅滞なく書面により通知するものとする。

6.売主及び買主は、本条第2項但書に定める場合を除き、本契約の終了日から3年が経過するまでの期間、秘密情報につき本条に基づく秘密保持義務等を引き続き負うものとする。

第6.1条で契約の終了、第6.2条で契約の解除について定めて、第7.1条で費用負担、第7.2条で秘密保持義務について定めます。


株式譲渡契約書の重要なポイントはだいたいこんなところになります。あとは添付してあるサンプルに従ってもいいでしょう。

株式譲渡契約書のサンプル(雛形)配布

ほかの細かいところについても、一応目を通してもらって、ここには書いていないことは、いわば踏み絵を踏んでもらうようなものだと理解しておいてください。

ここまで株式譲渡契約書についてお話ししてきましたがいかがだったでしょうか?

このコラムで説明してきた株式譲渡契約書の内容について、みなさん(スモールM&Aを実行する人)は自分達の案件に沿った形で作成していくことになります。その中で、「実際に内容に何を書いたらいいのかわからない」などの不安材料が出てきた場合は、必ず専門家を頼った方がいいです。我々もM&Aプロフェショナルとしてお待ちしております。

最後までお読みいただいた皆様にはいかに無料で使える株式譲渡契約書のサンプル(雛形)を添付したので、ぜひご活用ください。(下記のダウンロードボタンを押して頂けば、無料でダウンロードすることができます)ここまでお読みいただきありがとうございました。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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