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父親から承継した水産物販会社を3社のM&Aによって立て直した話②

Jさんの人物紹介

今回のコラムでは、「サラリーマンが300万円で小さな会社を買う」サロンメンバーの一人であるJさんのスモールM&A買収劇の後編を紹介します。

前編はこちらからご覧いただけます

彼は、父親の突然の死によって、承継することとなった水産物販売会社を立て直した後、なんと3社も立て続けにスモールM&Aを実施しました。今ではそれらの会社の上場を目指しているなど、かなり活気のある人物です。

彼が一体どのような経緯でM&Aをしてきたのかについて、今回のコラムでは見ていきたいと思います。

Jさんの反省点

まずはB社の買収についての反省から述べていこうと思います。

もともと、前経営者と奥さんのほか、事務補佐がひとりと工場長がひとりしかおらず、残りはパートであり、前経営者は社長兼営業で奥さんが経理をしていました。そして買収によって、その2人が抜けて以降、社内に代わりとなる人材はいませんでした。加えて、引継ぎ期間が半年であり、その間にJさんは、前経営者からある程度、ノウハウは継承したつもりでしたが、もっと細かく聞いておけばよかったなというところは多いです。

そんな中、前編の最後で登場した、新しく入ってもらった人は、仕入れが上手で、いろいろな仕入れルートから安く仕入れてくる手腕が見事であり、従来の仕入れ先はもちろん、その人が持っていた仕入れルートもプラスされて、原価を下げることができました。何より、彼はその水産物業界独特の業界用語がしゃべれる人でした。Jさんは水産物を扱っていたとはいえ、承継した会社とB社では扱う水産物は異なり、また、それぞれに業界用語が存在するため、(B社水産物)語はしゃべれないことなど、不都合な点も多々ありました。

Jさん自身も、B社のM&Aでは失敗が多く、特に「まず基本は買わない方がいい」ということを学んだそうです。買うのなら多くの要因を踏まえての計算をして買うべきであり、複雑かつ大量の計算をしても絶対計算通り行かないのがM&Aであるため、「準備ができないと買ってはいけないし、絶対に勢いでは買ってはいけない」と身を持って学んだそうです。

Jさんもそうでしたが、M&Aでは、買いたい病が出てきてしまいます。しかし、注意してほしいことが、M&Aが目的になってはいけなく、買うことはマイナスからのスタートと理解するべきであるということです。M&Aは投資なので、安く買って高く売らなくてはいけません。買わないという選択肢を忘れないようにしましょう。

さらには、買う前のシミュレーションは必須であり、「買ってすぐに売上が下がったらどうするか、その対応はできるか、人繰りは大丈夫か、自分以外のだれがその会社を見るのか、従業員へのケアはできるか、人が辞めても大丈夫か、シナジー効果は具体的に思い描けるか」などのシミュレーションを嫌というほどした方がいいでしょう。

JさんのM&Aフロー(3・4件目)

3-①M&Aするきっかけ

しかし、この経験を通じて多くのものを得れたことも事実です。その一つに、1社をM&Aすると、その後いろいろな情報をもらえるようになるったことです。

1社目は正直、高い買い物でしたが、1件の実績ができたことで、九州で水産物関連のM&Aをやっている変な奴がいるというフラッグが立ち、トランビなどのウェブサイトから情報はもちろん、検討段階では100社以上見るようになりました。Jさんは、いろいろな会社を見るようになって、地方では後継者不足が深刻だと改めて実感したそうです。その中で、いくつかのM&Aを経験し、後継者不足を何とか解決できないかという思いが強くなりました。

後継者不足はとくに九州のような地方で顕著で、大きな社会問題になっています。その中で、貢献できないかと、周りにも話をするようになりました。そんな中から出てきた案件が2件目のM&AとなるC社でした。

3-②M&A後

C社は中国地方にあり、地元特産品である水産物を扱っていましたが、こちらの会社も後継者不在でした。C社は市場の目の前にある仲買の会社で、水産物を生きたまま買う権利を持っており、3大老舗のうちのひとつでもありました。

C社のPMIでは、父親の会社を引き継いだときと同じことをしました。鉛筆1本まで全部チェックして、経費を減らせるところは全部減らし、付き合いで入っていた生命保険や借りているけど使っていない倉庫も解約しました。こういう契約は、人間関係のしがらみがあるので、当事者には解約しにくいですが、買収したよそ者は、そんなことなく解約できます。このような行動だけで、C社で経費削減できたのは、〇千万円くらいになりました。

C社は体質的にはスリムにできたので、現在は事業を再構築して、新製品を開発したり、ウェブ直販を検討することを通じて、企業価値を上げていこうというフェイズに入っているそうです。C社のメインバンクは地元の銀行でしたが、その銀行はM&Aの専門部隊を持っているという珍しい地方銀行でした。自分の顧客が消滅しないようM&Aのお世話までしているわけですが、地方銀行の危機感の裏返しだと思います。

4-①M&A(4件目)

その銀行にJさんは、M&Aの情報をくださいと言っておいたら、C社から数百メートルしか離れていないD社を買わないかという話が来ました。

D社は韓国から水産物を原料として輸入して、それを魚市場に販売する会社でした。

近くには水産物を加工して売っているC社があるため、D社からC社へはゼロ円で原料を運べる上に、C社とD社を一緒にしたら、原料から加工まで抑えられると考え、結局買うことにし、Jさんは全部で4社に保有する形になりました。

Jさんへのインタビュー

(質問1)連続して複数の会社を買っていて、父親から引き継いだ会社にも負債があったと思うが、借入はどうやったのか?

(Jさん)会社を引き継いだとき、赤字で借入は〇億円くらいありました。でも最初の2年くらいで借入の一部を返済して、借り換えをしたおかげで利息が低くなり、返済期間も長くすることができました。

(質問2)実際かかった費用感はどのくらいなのか?

(Jさん)最初のM&AとなったB社の価格は〇千万円で、手数料はちょっと負けてもらって〇千万円で、合わせて〇千万円借りました。はっきりいって高過ぎましたが、その〇千万円は全部、銀行が貸してくれました。貸してくれたのはもともと引き継いだ会社で付き合いのあった2番手の銀行でした。ただ、借入のために事業計画書をきちんと作ったりといったちゃんとしたことはしていないので、おそらく銀行は貸し出しを増やしたかったのでしょう。

ちなみにC社を買ったときも、億単位のお金をその銀行がフルで出してくれました。このときはさすがに、売上やシナジーの想定を含めた事業計画書を出しましたが、10年計画で3社合計でこのくらいになりますというのをエクセルで作っただけです。C社は、いまはそんなに儲かっていませんが、昔かなり儲かっていた時期があって、利益剰余金がかなりあったおかげで銀行は貸してくれたでしょう。

D社のM&Aはコロナ禍の真っ只中で、僕はビビって、すでにあった3社でコロナ融資をフルに受けていました。コロナ融資は1社につき〇千万円借りられて、3年間無利子で返済猶予です。3年後使わなかったら、そのまま返せばいいし、その間の利子はもらえるので、フルで借りていました。現金がたんまりあったところで、D社の話が来て、コロナ融資のお金でD社を買うことができたので、3年以内に利益を出せれば、勝ちゲームとなりますね笑

(質問3)個人保証は入れているか?

(Jさん)個人保証は入れています。でも先日、サロンメンバーの話を聞いて、個人保証って外せるものだと気づき、C社のメインバンクの銀行にダメもとで言ったら、先週、全部外れました。借入は全部で億以上あります。

(質問4)それは銀行になんて言ったのか。銀行はどう言って外してくれたのか?

(Jさん)C社とオーナーの財布は分離しているので個人保証は外してくださいと素直に言いました。そうしたら銀行側は仕方ないですねと。X銀行で外せたので、別のZ銀行の分も外そうと、「X銀行さんは外してくれた」とZ銀行に言ったら、Z銀行さんもわかりましたと、いま外してもらう方向で動いてもらってます。

(質問5)なぜ会社を買うのか?

(Jさん)なぜ、こんな地方で、自分の借金をめちゃくちゃ増やして会社を買っているのかとよく聞かれます。その答えをずっと考えてきましたが、まず言えるのは、僕自身が父親から事業を継いで、いろいろな苦労や経験をして得たノウハウをどこかで役立てたいからですね。

事業承継の問題は、地方では目の前にあるシビアな問題であり、地方経済に直結する問題です。会社が廃業すれば雇用が減りますし、雇用が減ると人はいなくなります。地方創生という言葉はよく使われますが、地方創生は田舎に道の駅を作れば成し遂げられるものではなく、その地元にいる人たちが給料をもらって、もらったお金をその地元で使うというサイクルが回るようになって成し遂げられるものだと僕は思います。だから雇用先が少しでもなくなることはやっぱりよくないし、微力ではあるが、僕の知識でその部分の解決の一助をしたいと考えています。

(質問6)M&Aを通じて感じたことはあるか?

(Jさん)M&Aを続けていきたいと考えるようになり、結果、そんな僕が目指す形としてたどり着いたのが、「『食品×地方×事業承継』で中小企業の新しいカタチをつくる」という企業理念です。

この理念をわかりやすく言うと、「スイミー戦略」ですかね。小学校のときに教科書で読んだと思いますが、スイミーは、一匹一匹は小さくて弱い小魚だけど、みんなで集まれば、大きな魚にも勝てるという物語ですよね。スイミーと同じように、小さな会社でも寄せ集まってやっていけば、まだ戦う道はあると思っています。食品業界で事業承継を進めて、中小企業の新しい形をつくりたいです。

(質問7)東京プロマーケットを目指す理由は何か?

(Jさん)将来的には東京プロマーケットでの上場を目指しています。東京プロマーケットは機関投資家しか買えない市場で、上場の登竜門みたいな市場です。上場できれば、会社の信用度も上がり、採用にもいい影響を与えると感じています。従業員のモチベーションにもなりますが、僕が上場を目指す理由は大きく2つです。

1つが、地方の中小企業の後継者不足という社会問題を解決したいという僕の活動を上場によって知ってもらいたいからです。もう1つが、これは結構、現実的な問題で、グループ4社の経営効率化のためです。

現状では4社はただ並べて置いているだけなんです。税理士は4人いて、僕は毎月、4人の税理士とミーティングをしています。警備のシステムも4社バラバラで、決算月も4社バラバラの状態なので、対応で手一杯となり、この非効率さを何とかしないと、5社目を買うことはできないですね笑

とくにバックオフィス系を効率化したいと考え、その方法をいろいろと人に聞きまわった結果、上場に耐えうる組織を目指せば効率化していくという話を聞きました。たしかに上場するためには、組織体制、ガバナンスなどを整え、上場審査に通らないといけませんが、それを目指せば、組織は効率化していくだろうし、本当に上場するかは別にして、そこを目指してみるのは、方向性としてはアリだと考えています。

(質問8)いま目の前にある課題は?

(Jさん)上場に耐えうる組織作りという方向性で、いま目の前にある課題を挙げてみると、組織作りにおいては、企業理念の浸透、人事評価制度の制定、業務管理責任者の育成、PMIやM&A実践人材の育成など山積みです。業務の効率化においても、会計ソフトの統一、給与や勤務管理などのバックオフィス系の一本化、などがあります。

うちは4社ともBtoBの会社なので、コロナ禍でかなり傷みました。うちは原料はたくさんありますが、それを最終消費者が好むような形にはできません。だからそれができるようにして、BtoC市場に参入できないかというのも課題ですね。そのためには組織も必要になるので、いろいろといまやっています。

以上のようにJさんの体験談を見ていきましたが、いかがだったでしょうか?

このように、これからもいくつか実際に会社を買った人の体験談やインタビューコラムを増やしていきたいと思うので、チェックお願いします。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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