事業譲渡は面倒くさい?そのリスクや注意点を説明

事業譲渡の手続きは難しい?

買収の手続きとしては、株式譲渡は簡単で、「株式を譲渡する」という契約を結べば終わりです。

一方、事業譲渡の場合は引き継ぐものをひとつひとつ、細かく特定する必要がありますから、非常に手間がかかります。車やコピー機のレベルは当然のこと、机や椅子というレベルまで特定しなければなりません。「事業に関わるもの一式」という曖昧な書き方をすると、後になって、「これは引き継ぎ対象か否か」で揉める可能性が高いので、手間がかかっても細かく特定した方がいいでしょう。

事業譲渡がはらむリスクとは?

許認可や契約関係については、2つのスキームの大きな違いになります。

株式譲渡では会社を丸ごと引き継ぐので、元の会社が持っていた許認可や契約関係もそのまま引き継ぎます。(ただし、契約に、株主が変わった場合は契約更改が必要という「チェンジオブコントロール条項」と呼ばれる条項が入っている場合は、引き継ぎ後に手続きが必要です)

関連用語→チェンジオブコントロール条項とは?

事業譲渡の場合は、元の会社が持っていた許認可や契約関係を、新しい会社が引き継ぐことはできません。もしその事業に許認可が必要なら、新しい会社で取り直さなければなりません。

取引契約も同様です。元の会社ではその事業で大企業と取引をしていても、その取引関係は新しい会社には引き継がれません。新しい会社でも取引をしたいのなら、その大企業と契約を結び直す必要がありますが、大企業にとって、新規の取引や口座の開設は、新たな管理コストがかかることになりますし、コモディティの商品やサービスを提供するビジネスなら代わりはいくらでもいます。つまり、新会社になると、大企業との取引ができなくなるリスクがあるのです。

必要な許認可や契約がすぐには取れないとなると売上は大きく下がります。許認可や契約関係を引き継げないという点は、事業譲渡スキームの大きなリスクなのです。

クレームは無視できない?事業譲渡における注意点

さらに事業譲渡で注意した方がいいのは、元の会社時代に販売された商品について、問題が起きたり、クレームが来たりした場合です。

法的には元の会社の問題ですが、同じ商品を取り扱っているわけですから、消費者にとっては旧会社も新会社も同じです。それを「ウチには関係ない、元の会社に言ってくれ」と言い切れるかというと、従業員の未払い残業代と同じように、難しいかもしれません。

これが裁判を起こされたというレベルになると、その対応は元の会社がすることになりますが、クレームのレベルでは、引き継いだ会社が柔軟な対応をする必要が出てきます。それがブランドや会社のイメージを守ることにもつながるでしょう。

柔軟な対応が必要という意味で、私のファンドでも似たようなことがありました。元の会社が、銀行からのリースという形で導入した機械について、新会社は承継対象にしなかったのですが、事後的に、銀行から、その機械も事業譲渡の対象にしてほしいと求められたのです。

私たちとしては、銀行相手にケンカをしたくなかったので、結局、経済合理性に見合う値段で買い取る対応をしました。

経営はいろいろな関係性から成り立つものですかから、ときにはこのような柔軟な対応も必要になってきます。法やルールを振りかざして関係性をないがしろにする人は、良い経営者とはいえません。時と場合によって、「感情」と「勘定」をうまく織り合わせないと、経営はできないのです。

株式譲渡と事業譲渡の違い、次のコラムでは財務面から見てみましょう。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。



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