財務デューデリジェンスの目的やポイントとは?

財務デューデリの目的とは?

財務デューデリの目的とは何でしょうか。

会社を買うには、その会社に値段をつけなければなりません。会社の値段は、その会社の持つ価値である「純資産」に、その会社の「収益力」から一定額をプラスさせて付けていきます。そうして出てきた会社の値段が正しいものであるためには、「純資産」と「収益力」という2つの数字が実態を表した正しいものでなければなりません。それを見極めるのが財務デューデリの作業です。

その会社の純資産の実際の数値を「実態純資産」といい、本来の収益力を「正常収益力」といいます。

実態純資産の見極め方とは?

BSに載っている資産評価は簿価と呼ばれ、本来の評価とは違っていることが往々にしてあります。この資産を時価で見直すのが、実態純資産を出す作業です。細かい資産まですべて見直すのは大変ですが、金額の大きなものは確実にチェックするようにしましょう。

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実際の作業としては、たとえば土地なら、地域の不動産業者に当たって時価の評価額を聞きます。車両などの動産についても、下取りの見積もりを出してもらうなど、専門家に聞いて時価評価に直していきます。

時価評価で算定をし直したら、たいていの資産は価値が下がりますが、中には、簿価を上回る資産もあるかもしれません。たとえば、減価償却が終わって資産価値がゼロの資産でも、市場で売れば、まだ値段が付くものもあります。売り手からヒアリングする中で、気になるものについては一応、確認しましょう。

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機械などの設備については、将来の設備投資に関わる部分なので、しっかり資産評価をしましょう。数十年前に機械を導入して以来、一度も入れ替えていないということなら、買収後すぐに、新たな設備投資が必要になるかもしれません。

オーナーには、機械の耐用年数はどのくらいで、いつまで使えるのか、新しいときといまのアウトプットはどのくらい違うのか、すべて入れ替えるとしたらどのくらいのコストがかかるか、などをヒアリングしましょう。

その結果、近々、設備投資の必要性が高いということでしたら、大きな追加コストが発生する可能性がでてくることになりますので、設備投資のコストを見積もって、買収価格に反映させる必要があるかもしれません。

もちろん、何度も言うように、買収価格の扱いは慎重にする必要がありますから、買収価格の変更をするか、それを交渉するかは、オーナーとの関係性、競合の有無など、ほかの条件も加味して慎重に検討する必要があります。

このようなデューデリをした結果、出てくる実態純資産が、会社の値段をつけるためのベースの数字となります。

正常収益力を見極める

正常収益力のチェックは、PLの数字を見直すことで行います。PLの数字の中で、本来の収益力を歪めているものを洗い出すということです。

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本来の数字を歪めている代表的なものが「オーナーコスト」です。中小企業では、会社とオーナーの財布が同じで、オーナーの自宅の家賃が会社の経費になっていたり、オーナー個人の服や車などの費用が、会社から出ていたりします。オーナーが報酬をもらい過ぎていたり、過剰な接待交際費を使っていたりすることもよくあります。それらを「オーナーコスト」といいます。

オーナーが変われば、オーナーの自宅の家賃は必要なくなりますし、報酬や接待交際費のうち、過剰な分については必要なくなります。オーナーコストはオーナーが変わればなくなるか、減るということです。その分、収益は増えます。

このように、PLの数字のおかしいところを見直せば、その会社の本来の正常収益力を見極めることができます。

以上のような作業をして、会社の値段をつけるベースとなる実態純資産と正常収益力というふたつの数字を作るのが財務デューデリの作業です。

財務デューデリは、スモールM&Aなら自分でやっても対応可能ではありますが、自分で見てなんかあやしいなというところがあれば、専門家に頼んだ方が無難だと思います。コストはかかりますが、後々の問題を避けられ、安心してM&Aに臨めるでしょう。

簡単ですが、財務デューデリについては以上です。必要があれば、拙著「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい会計編」や専門書を読んで、学びましょう。

続いてのコラムでは、法務デューデリについて解説します。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。



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