資本家の思考方法や行動原則、いわゆる「資本家マインドセット」を今だけ無料で公開。今回はその第2弾です。
2-1 資本家になるきっかけ
サラリーマンと政治家という2つの職業を経験して、私が身にしみて感じたことは、自分のパフォーマンスを最大化するには、本当に面白いと思える、本当にやりたいことをやらないとダメということでした。
市長選に惨敗し、次の道を模索していたとき、いろいろな人から声を掛けてもらいました。その中で、面白そうと思ったのが、イギリスのロンドンで、神戸ビーフの販売会社を立ち上げるプロジェクトでした。私はベンチャーキャピタル時代、2年ほどシンガポールで海外勤務をし、アジア市場での仕事は経験していました。成長著しいアジアでの仕事も面白いものでしたが、アジアとは違う、成熟した市場であるヨーロッパでの仕事に、私は興味をそそられました。
ロンドンでの仕事を始めてみると、長い歴史を持つヨーロッパならではの厳しいルールや古くからのさまざまな利権があり、トラブルに見舞われることが多々、ありました。それらを一つ一つ乗り越え、経験としても積み重ねながら、神戸ビーフのビジネスはなんとか軌道に乗せることができました。その会社の年商は2億円くらいまでになりました。その段階で、そのビジネスはひと区切りとし、人に任せて、私は帰国することにしました。
帰国後、出会ったのが、いまの投資ファンドのビジネスでした。
2-2 資本家になるために資金調達を
きっかけは、ある投資家との会話でした。そのとき、その投資家から、「これからの日本は中小企業の廃業が増えるので、買える会社がたくさんある」と聞きました。調べてみると、たしかに、中小企業の後継者不足が深刻で、大廃業時代がくるのは間違いなさそうだとわかりました。
私はもともと、自分には、起業家のようなゼロイチの才能はないと考えていましたが、すでにある事業を大きくする、いわゆるイチジュウなら可能だと思っていました。大廃業時代のことを知ったとき、私の思考は、自分にお金があれば、後継者のいない中小企業を買って、市場価値を高めて売り、利益を上げることができる、という具合に展開していきました。そんなビジネスとはつまり、投資ファンドのビジネスでした。投資ファンドなら自分に向いている、いま投資ファンドの世界に飛び込めば、成功する見込みは高い。私はそう考えました。
問題は資金をどう集めるかです。私は、ベンチャーキャピタル時代、業務として、会社に投資して、株主の一人としてその会社の経営に携わるという経験はありましたが、自分自身で会社を買った経験も、自分が直接会社を経営する経験もありませんでした。投資ファンドの運営ももちろん未経験です。そんな私にお金を任せてくれる人はいるだろうか。私に投資ファンドの運営は可能だろうか。多くの人は、そんなふうに不安になって、なかなか動け出せないのかもしれませんが、私はとにかく動きました。多くの投資家を回って、投資ファンドをやりたい、私なら成功できると訴えました。その結果として、私のもとには30億円が集まりました。
結局、投資ファンドを始めるために、私自身が出したお金は2万4900円でした。そのほかのお金はすべて、投資家の皆さんが、私の思いを理解してくれて、出してくれたお金です。私自身の、投資ファンドのビジネスをやりたい、私なら成功できるという情熱が、投資家の皆さんに伝わったのだと思います。やはり、やりたいことがあれば、お金はあとからついてくるものなのです。
2-3 資本家になるには
おかげさまで、ファンドビジネスは順調で、これまで何社もの会社に投資をして、会社経営、バイアウトの経験も積み上がっています。経験ゼロで始めた私でも、十分、資本家としてやっていけているのです。
ある程度の規模の企業で、経験を積んでいるサラリーマンの方々は、中小企業を経営するための実務や経営の能力は、当時の私より、間違いなく身についています。ただ、そんな人より私が勝っていると思うのは、覚悟があったことです。覚悟がないと、リスクを取って、実際に行動を起こすことはできません。大きな企業にいるサラリーマンという立場では、その地位を捨てて会社を買うというリスクを取る覚悟をするのは、なかなか難しいことでしょう。
私が良かったなと思うのは、ベンチャーキャピタリスト時代に、多くの起業家を間近にみてきたことです。彼らはとにかく動いて、どんどんリスクを取っていました。自分で飲み代も出せず、私が奢っていた若者が、株式上場を果たして数百億円の資産を築く姿も見ました。そんなふうに、身近な人たちが、どんどん「あちら側」にいくのを目の当たりにして、私の中には、「自分でも出来るのでは」という、いい意味での「勘違い」ができていたと思います。
そんな勘違いのおかげもあって、私は、覚悟を持ってリスクを取りに行き、資本家になることができました。資本家として仕事をしていくことは、そんなに難しいことではないのかもしれません。難しいのは、サラリーマンを辞めて、資本家という生き方を始める覚悟ができるかです。あなたにはその覚悟ができるでしょうか。それが、あなたが資本家になれるかどうかの分かれ道になると思います。
自分のやりたいことを追い求めて、私はここまで来ましたが、そんな私を作った原点ともいえる経験があります。
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記事監修
三戸政和(Maksazu Mito)
2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。