会社の終わりと事業承継M&Aの必要性

事業承継M&Aの必要性

前コラムでは、M&Aで会社を買う場合は、その会社をいずれ売却することを想定して、M&Aを進めることが大事だという話をしました。これは、私の運営するファンドのように、買った会社をバリューアップして売却することで利益を出すことを目的にM&Aをする人にとっては当然の話です。

他方、会社を買う人の中には、その会社を売却して儲けようとは考えず、自分でずっと経営していくつもりだという人もいます。そういう人たちにとっても、売却を想定して会社を買うことは必要なのでしょうか。私は、それはやはり必要だと考えています。なぜかというと、会社というものは、必ず「終わる」からです。

会社の終わりを直視し、大廃業時代に備えよ

会社が「終わる」とは、どんな経営者であれ、いずれは経営の第一線から退く時期が来るということです。その理由は、引退、引継ぎ、廃業や会社の売却などさまざまですが、どんな経営者にとっても、免れることができないのは年齢による引退です。

しかし、中小企業の経営者の多くは、自分にもいずれそんな時期が来ることを、なかなか直視しようとしません。「会社は終わらない」と思っているのです。

会社の経営者にも、サラリーマンの定年のように、「70才になったら退任」というような終わりの設定があれば、経営者は、それまでに後継者を作ったり、別会社に引き継いだりという、終わりに向けた準備をするでしょう。

しかし、そんな終わりの設定はありませんから、多くの経営者が、「もうちょっとできるだろう」「準備はもう少し先でいいだろう」と先送りをしてしまう。だからいま、多くの中小企業が後継者不足に悩み、大廃業時代という社会問題が起きているのです。

会社の終わりを想定して、良いM&Aをしよう

人はみな老います。どんなに有能で代替の利かない経営者であっても、いずれ、会社の経営からは退かなくてはなりません。それはいま会社を買って、その会社をずっと経営していくつもりだと考えている人たちも同じです。将来には会社を終わらせる時期が必ず来ます。

そのときにどのように会社を終わらせるのか。子どもや親族に引き継がせるのか、自分の代で終わらせるのか、それとも売却するのか。会社をどう終わらせるかをイメージすることは、いまの経営の仕方にも大きく関わります。終わりを想定し、自分の持つ能力や人脈、経営環境の変化の見通しなどから、いまどんな経営をしていくかが決まってくるということです。

M&Aとはつまり、「自分なら、こんな会社をこのように経営して、将来こんな姿になった会社を売却しよう」と考えて、最初の会社探しから始めるものなのです。会社の終わりを想定することが、より良い経営、より良いM&Aにつながるということです。

次のコラムから、実際のM&Aのプロセスに従って、それぞれのプロセスではどんなことをすればいいのかを解説していきましょう。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。



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