事業再生に登場する関係者・プレイヤーは?かつての弁護士中心の事業再生から、事業再生ファンド・アドバイザー・支援機関の登場まで、プレイヤーの変化を紹介。

かつての事業再生の関係者は?

かつての日本では、会社の倒産に関わるのは弁護士が中心でした。

しかし、バブル経済の崩壊後、不良債権の処理が問題となり企業の倒産も増えたことで、企業倒産の分野は活性化され、会社や事業の再生を担う新たな分野として確立されていくことになりました。この企業再生の分野は、会社の倒産だけでなく、経営不振の会社の再生や事業の再編など、その関わる領域は大きく広がることとなり、法律のみならず、経営、財務、組織などさまざまな分野の専門的な知識が求められることとなりました。このため、弁護士に限らず、さまざまな専門家がこの分野に参入してくることとなり、現在では、ターンアラウンドマネージャーと呼ばれる企業の再生を専門とする人々も現れています。

今回のコラムでは、企業再生というステージに、どのようなプレーヤーが関わっているのかを見ていきたいと思います。

事業再生に登場する関係者・プレイヤー一覧

そもそも、会社には、さまざまな利害関係者が存在します。そして、会社や事業の再生に乗り出した経営者にとっては、さまざまな利害関係者との調整なくしては、会社の再生はあり得ません。例えば、株主や取引先、従業員、債権者などそれぞれの立場で、利害は異なり、事情は複雑に絡み合います。その難しいパズルを解くような調整を進めるためには、実現可能であり、企業の価値を最大化させ、債権者への支払いも最大化するような計画を、正しいデータをもとに作成し、各利害関係者との調整を図らねばなりません。そのため、当然のことながら、経営者は、自らの経営責任から逃れることはできなく、関係者に含まれます。

ここからは、事業再生に登場する関係者・プレイヤーを羅列し、それぞれ説明していこうと思います。

①株主

まずは、株主です。株主にとっては、株主としての価値を最大化することが目的であり、議決権を持つ立場から、経営に携わることで企業の価値を高めようとします。しかし、一方で、株を持つ企業が再生のフェーズに入った場合は、株主としての責任から逃れることはできず、株式をすべて失うこともあり得ます。

また近年は、経営不振に陥った企業の株を買うことで、企業の再生に携わる投資家やファンドも存在感を高めています。

②取引先

次に、取引先です。取引している会社が経営破綻し、再生のフェーズに入ることは、仕入れ先や販売先である取引相手にとっても、当然他人事ではありません。仕入れ先にとっては、売上債権が回収できないことも考えられ、ひどいときには連鎖倒産に陥ることもあり得ます。仕入れ先は、債権者として会社の再生に関わっていくことも多いでしょう。また、販売先にとっては、連鎖倒産に巻き込まれる心配はありませんが、これまでの仕入れ先を失うことになります。

一方で、企業の再生に、取引先がスポンサーとして関わることもあります。仕入れ先がスポンサーになれば、販売先の確保という意味合いになり、販売先がスポンサーになれば、仕入れのコストを削減するという意味の投資となるでしょう。

関連記事→スポンサーに関して解説した記事

③同業他社

次に、同業他社です。同業他社にとって、同じ業界の会社の経営破綻は、ピンチでもありチャンスにもなり得るものでしょう。ピンチであるとは、経営破綻がその業界の斜陽を示している可能性があるからで、その会社が経営破綻した理由については、特に注目しておかなければならないでしょう。

一方で、経営破綻した会社の事業を手に入れることでシナジー効果が得られるとなれば、取引先がスポンサーとして出資して、再生に関わることもあります。会社としてシェアを広げたり、業務コストを削減したりするなどのチャンスとなるかもしれません。

④金融機関

次に、金融機関です。経営不振の会社が再生のフェーズに入った場合、金融機関は、債権者としてもっとも重要なプレーヤーのひとりとなります。金融機関の最大の目的は債権を回収することであり、その回収額を最大にすることです。そのため、金融機関は、破綻会社の経営者とともに、再生計画を進める立場に立ち、利害関係者との調整を担うこともあります。また、貸し手責任は逃れられず、再生計画によっては、一部の債権の放棄を求められることもあります。

⑤弁護士

次に、弁護士です。弁護士は企業再生において大きな役割を果たします。例えば、裁判所から破産管財人や監督委員に選ばれ、その立場から企業再生に関わることもあります。また、会社分割や事業の譲渡、会社更生や民事再生、破産や清算など、さまざまな企業再生の手続きには法的知識が求められ、弁護士が担うことになります。このほか、経営破綻に陥った企業は、訴訟などの法的なリスクを抱えていることも少なくなく、これらに対応するのも弁護士の役割です。

⑥公認会計士

次に、公認会計士です。公認会計士には、会社が経営破綻した経緯や原因について、過去の財務資料などをもとに明らかにするという重要な役割を与えられています。会社破綻の原因が明らかにならない限り、再生計画は構築することができず、それには公認会計士らの専門的な知識が必要とされます。

また、債務の弁済計画や再生スキームの検討を担うのも公認会計士であり、最近の公認会計士や事務所の中には、企業再生に特化したものも現れてきています。

⑦事業再生コンサルタント・アドバイザーをはじめとした専門家

次に、コンサルタントをはじめとした専門家たちです。特に、弁護士や公認会計士以外で、企業再生についてのアドバイスをするプレーヤーを、企業再生コンサルタントと呼びます。彼らは、企業再生の専門家として、チームの中心となって、再生計画の作成や実行に関わります。

また、他にも、中小企業診断士といった、中小企業の専門家という立場から、中小企業の再生に関わるプレイヤー、さらには、税理士やフィナンシャルアドバイザーといった専門家は、それぞれの得意分野を活かして、再生チームの一員として活躍したり、中小企業の再生に携わったりしています。

⑧事業再生ファンド

次に、事業再生ファンドです。中でも、未公開株(=プライベートエクイティ)に投資をすることで、投資先の企業の経営に関わり、企業価値を向上させてから、その株式を売却して利益を得るファンドのことを、プライベートエクイティファンド(PEファンド)といいます。我々日本創生投資もこのPEファンドの一つですが、また、プライベートエクイティファンドの一つで、会社の再生に特化しているファンドである事業再生ファンドにも日本創生投資は当てはまると言えるでしょう。

ちなみに、事業再生ファンドは、経営が傾いた会社の未公開株を買って、事業再生プロセスにスポンサーとして関与し、事業を再生させてから、株式を売却して利益を得ます。事業が再生すれば、大きな利益が得られますが、立て直しがうまくいかないこともあり、そのリスクは少なくありません。

⑨公的機関、支援機構

次に、公的機関・支援機構です。中小企業再生支援協議会や地域活性化支援機構は、公的な機関として、おもに中小企業の再生に関わります。ちなみに、事業再生ADRは民間機関ではありますが、国の認定を受けて、事業の再生に関わります。いずれの機関も別のコラムで触れていますので、是非そちらもご覧ください。

⑩ターンアラウンドマネージャー

最後に、ターンアラウンドマネージャーになります。企業再生を専門とする経営者のことを、ターンアラウンドマネージャーといいます。ターンアラウンドマネージャーは、経営破綻した会社に乗り込んで、経営者として会社の立て直しを進め、再生を軌道に乗せてから、ほかの経営者に経営を引き継ぎます。

欧米ではターンアラウンドマネージャーが職業として確立されていて、日本でもそう呼ばれる人材も増えてきています。

まとめ

以上の説明した10個が、事業再生に登場する関係者になりますが、いかがだったでしょうか?

元々は弁護士だけでしたが、今は、株主や取引先、さらにはターンアラウンドマネージャーといった多くの関係者が、事業再生に対して携わっていることがわかりましたね。会社を終わらせるにあたって、いずれの登場するプレイヤー・専門家に対して目を配るべきか、またそれらのへの費用などの諸経費の問題に加え、複雑な税金の問題も考えなくてはいけません。

そして、こうした問題に対しては、専門家のアドバイスを受けることも考慮に入れて考えることが大切です。お悩みの際是非、下記のリンクより、お気軽にご相談ください。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


こんなタグの記事が読まれています