研究開発にはロマンとリスクがつきもの

「研究開発」デューデリのチェック項目

ビジネスデューデリジェンスを、製造系の会社のビジネスフローを例に見ていきます。製造系の会社のビジネスフローは、「研究開発~仕入れ~製造~生産~営業」という流れになります。

まずは、「研究開発」についてのデューデリです。研究開発が特定の人に依存していないか、競合する新しい技術がないか、特許の取得状況はどうなっているか、などがチェック項目になります。

商品開発におけるリスク事例

リスク事例として、私の投資先で、商品の開発設計をひとりに依存していたケースがありました。その人がいなくなったら、会社の商品が作れなくなるという深刻なリスクです。

このケースのリスクヘッジとしては、その人が辞めないよう慰留したり、ほかの人に技術を継承したりする方法があります。デューデリでは、これらの方法を、それぞれどのくらい費用や時間がかかるのかを検討、比較し、どれを採用するべきかを決めます。

技術継承の方法なら、そもそもそれが可能なのか、技術継承を受ける人材はいるのか、新たに人を雇うべきか、などを時間とコストを含めて検討します。そこで大きな費用がかかるなら、買収価格にも反映させます。

このときは結局、その開発者が辞めないよう、面談をして慰留した上で、最終契約の中に、その人が辞めた場合を想定して、株式譲渡のタイミングで辞める場合はいくら、6ヶ月以内に辞める場合はいくら、という形で、代金の一部を返還する条件を入れました。

弱点がプラスにもなる!?

このように、デューデリではその会社のリスクや弱点を見ていきますが、それらの中には、伸び代ととらえられるものも見つかります。そんな伸び代が見つかれば、そこを伸ばせば、経営をどのくらい改善できるかを見るのもデューデリジェンスの役割です。

たとえば、研究開発のデューデリで、研究開発の環境の乏しさが見つかるかもしれません。その場合は、その環境を整備することで、どのくらい研究開発力の強化が見込めそうかを、オーナーや担当者にヒアリングをしてチェックするわけです。

伸び代は、実際にやってみないとわかりませんので、基本的にはアップサイド要因として考慮することになります。実現の可能性が高い場合は、事業計画に取り込み、買収価格まで反映させると、ほかの買い手より有利な条件を提示できるかもしれません。

ビジネスデューデリの解説、続きます。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。



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