資本家マインドセット(著:三戸政和) WEB版 vol.8

資本家の思考方法や行動原則、いわゆる「資本家マインドセット」を今だけ無料で公開。今回はその第8弾です。

8-1 資本家の本来的な仕事とは?

資本主義社会では、なぜ資本家の方が有利なのでしょうか。そのもっとも大きな理由は、資本家は「箱」を持っているからです。

箱というのは、たとえば、株、土地、建物、特許や著作権などがそれに当たります。そのほか、ビジネスの仕組みやノウハウも箱になります。箱はそれだけで資産価値がありますし、株からは配当収入、土地や建物は貸せば賃料、特許や著作権からは著作権料が得られるように、持っているだけでお金が得られます。つまり箱とは、持っているだけでお金を生んでくれる「仕組み」のことです。

資本家というのは、会社をいくつも持っていて、それらを経営することが資本家の仕事、というイメージがあるかもしれませんが、それはちょっと違います。会社経営は、資本家の仕事の一部ではありますが、本来的な仕事とはいえません。資本家の本来的な仕事とは、利益を生む箱や仕組みを作ることだからです。

会社という箱を作る。土地やオフィスビルという箱を用意して、人に貸す。新たなビジネスを考えて、それが回るように人と仕組みを用意する。そういった箱をいくつも作って、所有する。それが資本家の本来的な仕事なのです。

8-2 資本主義社会における資本家の優位性

そうした箱の中で、ヒトやモノやカネが動けば、箱は利益を生んでくれます。資本主義社会においては、こうした箱を持つか持たないかで大きく違ってきます。

具体的に説明しましょう。たとえばあなたが腕のいいシェフだったとします。あなたには集客力があり、料理を作れば多くのお客さんを喜ばせて、多くの売上を作ることができます。しかしあなたの身体はひとつしかありません。あなたが誰かに雇われる「労働者」の立場を選ぶとすれば、労働力と労働時間の対価として、月に50万円くらいの収入を得るのが御の字でしょう。

あなたが資本家を選ぶなら話は変わってきます。資本家としては、まずはレストランという箱を用意します。レストランに必要なヒトやモノを集め、あなたの作るメニューを提供して、利益を生む仕組みを作るのです。店が繁盛すればレストランから大きな利益が得られますし、レストランという箱自体の価値も上がります。

同時に、店舗周辺の土地も一緒に買っておけば、周辺の土地を人に貸すことで賃料が得られます。店が繁盛して、人を呼び込む力が上がれば上がるほど、持っている土地の資産価値が上がり、賃料も上がっていくでしょう。

ひとりの腕のいいシェフが、箱を作らず、労働者という立場を選ぶなら、毎日必死に働いて月50万円を得る程度でしょうが、箱を作って、資本家という立場を選ぶなら、レストランの利益に土地の賃料が毎月入り、レストランや土地の資産価値も上がっていきます。さらに言えば、資本家は、箱を作ったら、日々の仕事はほかの人に任せておくこともできます。

箱を持つか持たないかで、その人の人生の景色が大きく変わることが、よくわかっていただけるのではないでしょうか。

8-3 資本家が富を生む仕組みとは?

なぜ箱は、そんなに大きな富を生むことができるのでしょうか。

富は人が働くこと(労働力)から生まれます。労働力を生んでいるのは、人の「身体」とその人の持つ「時間」です。つまり、人を多く集め、多くの労働力を活用することができれば、多くの富が得られることになります。

雇われる側の人間は、労働力を有限でしか持ちえません。自分が持っているのは、たったひとつの身体と1日24時間という時間だけだからです。有限な労働力で得られる富は、足し算でしか増えていきません。

しかし、箱を持っていれば、その中に、多くの「他人」を集めることができます。箱の中で働いてくれる他人が増えれば増えるほど、その労働力を活用することで富が増えます。箱には、お金というリソースもどんどん投入することが可能です。

つまり資本家は、作った箱の中に投入できる、労働力とお金というリソースを、ほぼ無限に増やすことができるので、富が得られやすいというわけです。

さらに資本家は、そんな箱をいくつも作って、同時に所有することができます。富の増え方は、労働者が足し算であるのに対して、資本家は掛け算で増えていくことになるのです。

8-4 会社を買ったら、資本家になれる

会社を買えば、富を生む箱を手に入れることができますが、中小企業の場合は、オーナー自らが、汗水流して働くことが多いでしょう。しかし、資本家の本来の仕事は、箱を作ることです。経営者としてその会社の仕事をしているだけでは、資本家の仕事を全うしているとは言えません。資本家として、自分の身体と時間を使ってなすべきことは、その会社で富を生む新たな仕組みや、その会社とは別の箱を作れないかと常に考え、それを実際に作っていくことです。

会社を買ったら、最初こそ、新オーナーとして、陣頭指揮を執ることが必要でしょうが、それが軌道に乗ったら、日常業務はほかの人に任せて、別の箱や仕組み作りを考えることが大事になります。そういう箱を作って、いくつも所有し、人やお金に働いてもらいながら、かけ算で稼ぐのが資本家なのです。

8-5 資本家は負のイメージ

箱を作る資本家と、自分の身体と時間から生まれる労働力から対価を得る労働者では、まったく富の増え方が違うことがわかっていただけたでしょうか。

世間的には、資本家にはいいイメージがなく、「金の亡者」「労働者を搾取している」といった負のイメージが根強くあります。しかし、資本家が持つ箱が富を生むのは、箱の中で他人が労働力を行使してくれるからです。資本家がいくら箱を用意しても、他人が働いてくれなければ、富は生まれません。ということは、資本家は、箱を作るとともに、箱の中で他人が気持ちよく働いてくれる環境を作れなければ、富を得ることはできない、ということになります。

つまり、資本主義社会では、箱を持つ資本家が有利ではありますが、その有利さが十分発揮されるには、自分の持つ箱の中で働いてくれる他人を大事にすることが、その条件になります。他人を大事にする資本家が儲かり、他人を大事にしない資本家は儲からない。それが資本主義社会の根本にあるのです。続いてのコラムでは、箱を持つ資本家が、そこから利益を得るために、どんなことを大切にしているかについてお話ししたいと思います。

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記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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