スクイーズアウトとは?目的や具体的な方法について投資ファンドが解説

スクイーズアウトとは?

あなたがもし、現段階で会社の所有者である場合、「何%の株式を保有してあるか」把握していますか?また把握している場合、それは何%の株式ですか? 事業承継を検討している方は、特にこれらの問いについて敏感になる必要があります。

スクイーズアウトとは、大株主による強制的な株式の取得方法のことです。すなわち、保有する株式の割合を高める目的で行われます。

今回の記事では、なぜ株式を何%保有しているのか気にする必要があるのか、そしてスクイーズアウトとはどのような目的でどのような方法で行うことができるのかについて解説したいと思います。

スクイーズアウトの目的とは?

最初に、少し基礎的な話をしますが、「所有と経営の分離」の概念から、株式会社において株式を保有している株主は、議決権や罷免権、指名権などの株主の権利を、株式の割合に応じて得ることができ、会社の「所有者」になれます。ちなみに、これは通常の場合、「経営」に携わるいわゆる社長とは区別されます。(中小企業の場合は、「所有」も「経営」もするオーナー経営者であることも多いですが)

そして、スモールM&Aの世界において、 つまり中小企業の会社経営(運営)においては、持ち株比率が100%であることが理想です。(これは相続税にも関わってきます)しかし、これはあくまでも理想的な形の話であり、特に長く続いている会社は、株式会社設立時に、配偶者やその他の家族、友人に株式を持ってもらっていたなどのケースもあり、経営者が100%保有していない状態の会社も多く存在します。(現在は、株式会社設立する際の資金が1円でもいいことになっているため、そこまで多くはないですが)

そして、そのような株式が分散している会社では、さまざまな不都合が生じてきます。例えば社長が、(筆頭株主とはいえ)30%しか株式を保有していなかった場合、この会社をコントロールすることはできないというような状況に陥る...なんてことがあることを皆さんは知っていますか?

この理由は、「50%以上の株式を保有していないと、株主総会の普通決議において単独で可決することはできず、他の株主に左右されるため」や、「66.7%以上の株主を保有していないと、株主総会の特別決議において、単独で可決することができず、他の株主に左右されるため」です。

このことは、M&Aにおいても、重要な意味を持ちます。

それは、買い手にとっては、会社の経営権を握るためには、上記のように66.7%以上の株式を買いとる必要があり(ちなみに経営を円滑に進めるためには100%取得が理想であり、多くのM&Aは100%買収をします)、売り手にとっては、親族承継で子供に会社を譲ってたとしても、その子供が上記のような割合の株式を保有していないと、せっかくの後継者が、他の株主達が結託した場合に、クビになる可能性があるためです。

上記のようなケースを防ぐために、買い手も売り手も100%株式保有を目指しますが、「昔に株式を保有してもらった知人の消息が不明」であったり「大企業のように不特定多数の株主が存在する」などさまざまな要因から、100%の株式を取得することが現実的に困難な場合も、ごく普通に存在します。

ではこのような「100%株式保有を目指したいが、できていない」という状況では、諦めるしかないのでしょうか?

答えは、NOです。その理由は、今日のコラムのメインである「スクイーズアウト」という手法が存在するからです。

ここまで読んでくれた人たちはわかると思いますが、改めて、スクイーズアウトの目的は「100%株式を保有し、経営や承継を円滑に進めること」にあります。

ここからは、スクイーズアウトの手法について説明していこうと思いますが、そのやり方が、場面や株式保有割合によって変化するので、3つの場面にわけて一個ずつ説明していきます。スクイーズアウトの手法は、株式の保有割合によってできること、できないことがあるのです。

ここで、説明に入る前に、先に覚えておいてほしいこととして、「1株に満たない株式は、株は端株といって、対価を払えば、強制的に買い取ることができる」というのがあります。これは、簡単に言えば、0.7株などの株式は、1株に達していないので、強制的に買い取ることができるということです。次からの説明で多用するので覚えておきましょう!

では実際のやり方を見ていきます。

スクイーズアウトの方法とは?

90%以上株式を保有している場合

特別支配株主の株式売渡請求が可能になります。この手法は、社長が90%以上の株式を保有していることが条件で、「総株主の議決権90%以上を保有している株主は特別支配株主として、他の少数株主から残りの株式を強制的に買い取ることができる」という株主の権利を活かしたものになります。この手法は「90%に達するまでは他の方法で株式を集め(単純に交渉して買い取ったりするなど)、90%達成後にこの方法を用いる」というのが一般的です。

66.7%以上株式を保有している場合

この場合は2つの方法が使えます。

一つ目が株式併合に通じての買収が可能になります。株式併合の実施には、株主総会の特別決議における承認が必要なため、これは66.7%以上の株式を保有していることが条件になります。

株式併合というのは、簡単にいえば、複数の株式を一つの株に変更するということです。これは「例えば、1万株=1株とすると、1万株以下の株が、(例えば5000株=0.5株になります)1以下の少数株、端株になり、強制的な買収が可能になる」ということを狙ったものです。これによって、最初に述べた「1株に満たない株式は、株は端株といって、対価を払えば、強制的に買い取ることができる」ことを活かし、残りの株式の回収が可能になります。もちろんこの過程によって、会社の価値などが変わることはなく、ただ割合に応じて保有する株式の“数”だけが変化します。

二つ目が全部取得条項付種類株式に変更をしてからの買収が可能になります。これも株式併合と同様に、株主総会の特別決議における承認が必要なため、66.7%以上の株式を保有していることが条件になります。

「全部取得条項付種類株式」という株式は、「会社が株主総会の決議により、その全部を取得する旨の定めのある株式」という種類株式のことであり、一般の普通株式とは区別されます。これは、一旦全ての通常株式をこの「全部取得条項付種類株式」に変更し、その後に「全部取得条項付種類株式」の対価を「普通株式〇〇株」と決めて、その株式を取得することで、株式併合同様に、端株を生み出し、強制的な買収が可能になるというような流れになります。

関連用語→種類株式とは?

もう少し具体的に説明すると、まず、全ての普通株式を全部取得条項付種類株式株に変更します。すると、普通株式100株を保有していた株主は、全部取得条項付種類株式100株を保有することになります。

次に、株主総会の特別決議の承認を経て「普通株式1株=全部取得条項付種類株式1000株」といったような設定をします。すると、本来普通株式100株を持っていた株主は普通株式0.1株、つまり端株となります。

すると、これまた、「1株に満たない株式は、株は端株といって、対価を払えば、強制的に買い取ることができる」ことを活かせ、大株主による強制的な買収が可能になるという感じです。

なかなか複雑ですが、理解できたでしょうか?

最後に

このほかに、特に中小企業の場合は、「交渉」によって時価での株式買い取りをすることもあります。これは中小企業だからこそできることです。そしてまた、本来、スクイーズアウトという手法自体、上場企業がTOB後に実施することがほとんどであり、100%保有していることが多い、中小企業のM&Aにおいて登場することはあまりないです。

関連用語→TOBとは?

ですが、今回紹介したような、「株を分散させてどこに行ったのかわからない」というようなケースを何度も私は知ってますし、そのような状況に陥っている会社は間違いなく存在します。そこは注意する箇所です。気をつけましょう!


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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