スモールM&Aにて作成するプレゼン資料のポイントとは?

M&Aのプレゼン資料を作ろう

前回までは案件ソーシングについて扱ってきましたが、そのソーシングの際にまずやるべきことは、買い手である自分を紹介するプレゼン資料を作ることです。

これは、M&Aの中でも特にスモールM&Aでは、売り手と買い手のマッチングが重要で、双方の気持ちが通じ合わないと成立しないからです。そのために、売り手のオーナーさんに、買い手である自分がどういう人間であるかをわかってもらう必要があり、プレゼン資料は非常に重要になってきます。私(三戸)も、いまのファンド日本創生投資を立ち上げたときは、プレゼン資料作りから始めました。

資料には、自分たちがどんなファンドを目指すのか、どんなキャリアを持ったメンバーがいるのか、日本経済に対する現状認識とそこでどんな投資をしようとしているのか、などをまとめました。私のファンドは、大廃業時代で地方の中小企業の事業承継を進めることを目的としていましたから、それをアピールするものとなりました。では、実際に皆様がプレゼン資料を作るとなると、どのようなものになるのでしょうか?

今回のコラムではプレゼン資料、そのポイント・コツについて扱っていこうと思います。

M&Aの資料作りのポイントとは?

細かいポイントを言いますと、プレゼン資料にメンバーの顔写真を入れることは意外に重要になります。会社のホームページに、経営者の顔写真がある会社とない会社を比べたら、顔写真のある会社の方が、株価が15%ほど高いという話もあるそうです。

メンバーのキャリアに関しては、アピールしたい部分を意識して書きましょう。私の場合は、ベンチャーキャピタルにいたのでベンチャー投資を知っていること、ロンドンで実業をやっていたので実業を知っていること、兵庫県議会議員として地域のために働いていたことなどを書きました。

また、メンバーには日本銀行出身の人がいましたが、実はこの人は月10万円くらいで顧問として入ってもらった人でした。こういう元日銀支店長みたいな人がひとりでもいると、メンバーのプロフィールに重みが出てきて、ファンドの信頼感が増すからです。もちろんこの人は、名前を借りているだけではなく、ミーティングに参加してもらっていますし、金融関係のルート作りにも協力してもらっています。プレゼン資料はどう見せるかが大事ですから、こういう形で協力してくれる人を探すことも必要になります。

社名や社章、スローガンについては、取り立てて、資料で説明をすることはありませんが、それぞれ意味を込めて考えました。

M&Aのプレゼン資料作りは自分の棚卸

私は、前に勤めていたベンチャーキャピタルで投資業務に携わっていましたが、その仕事と会社を100%買うM&Aはまったく別物ですから、ファンドを立ち上げたときは、M&Aにおいては素人同然でした。正直、当時作った資料の中身には、ハッタリともいえる部分が少なからずありました。それでもプレゼン資料ではそれっぽく見せることが大事です。ウソはダメですが、ハッタリといえる部分があってもいいのです。

プレゼン資料作りを通じて、自分のアピールポイントを考える作業は、いわば自分の棚卸です。自分のやってきたことと、これから自分がやりたいことが、180度違うという人は少ないでしょう。自分がこれまで何をやってきたのか、そしてこれから何をしたいのか、それらのイメージを膨らませていけば、その中には一貫した何かがきっと見つかるはずです。それが見えてくれば、自分が買いたい会社のターゲットがはっきりするでしょうし、多くの人に伝わるプレゼン資料が作れると思います。

自分はどんな人間か、これまでどんなキャリアを持っていて、どんな会社を買ってどんなことをしたいのか。自分の思いや買いたいという熱意が伝わるプレゼン資料を作ってほしいと思います。

最後にもう1点、プレゼン資料ができたら、紙に印刷して、相手に渡しましょう。中小企業のオーナーさんは高齢の方が多いので、紙の方が読んでもらいやすいからです。また、モノがあるというのは大事で、会社の事務所の机にみなさんのプレゼン資料があれば、いやでも視界に入りますし、無意識に訴えかけることにもなります。それが後々、功を奏するかもしれません。

M&Aというのは、意外と、紙を使って、足を使って出向いて、ちゃんと顔を合わせて、進めていくものです。ベタな営業と通じるところが多いのです。

プレゼン資料ができたら、次は買いたい会社のターゲットを絞りましょう。次のコラムで解説します。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


こんなタグの記事が読まれています