スモールM&Aとは?手法やメリットについてわかりやすく解説。

近年では働き方も多様化しており、会社員の副業も推進する企業も出てきました。サラリーマンができる副業には、どんなものがあるかと悩まれる方も多いのではないでしょうか。本業と副業を両立するためには、起業を考える方もいらっしゃるでしょう。起業には一から立ち上げて始めるか、今ある企業や事業を買収する方法があります。

この記事では、サラリーマンの間にも需要が高まっている「スモールM&A」について、メリット、デメリットと、実際の流れやポイントについてご紹介いたします。

スモールM&Aとは?

スモールM&Aとは、小規模のM&Aのことです。M&Aといえば、大企業が行うものでしょうと思われるかもしれません。しかし、近年では事業や企業の譲渡が盛んに行われており、中小企業または個人でも利用される機会も増えてきました。そのため、従来のM&Aより小規模で行うことができる「スモールM&A」の需要が高まってきているのです。

スモールM&Aとは?

スモールM&Aとは、一般的には売り手や買い手の売上額、または譲渡価格が1億円以下の場合です。また、1000万円以下の金額で行われる事業や企業の売買を、マイクロM&Aと言い、これらを含めてスモールM&Aと呼びます。

小規模事業または個人事業で、従業員数が30名程度までの会社が対象になります。この数年間は、コロナウイルスの世界中の蔓延により、経済も落ち込んでいました。業績が伸びた業界、落ち込んだ業界と明暗も分かれています。

2021年末頃より、少しずつ回復傾向に向かいつつありますが、経営状況が思わしくない企業は売り手側の立場となっているのです。さらに、後継者不足などが背景にあり、買い手が見つかるうちにと、スモールM&Aを利用する企業や個人の事業者も増加傾向にあります。

スモールM&Aがなぜ注目されているのか

スモールM&Aが注目されている理由として、従来のM&Aより売買金額が低く抑えられることもあるでしょう。これまではM&Aというと、大企業が行う制度と捉えられていました。今では、中小企業、個人事業主や、副業を始めたいサラリーマンなどにも注目されています。

中小企業や個人事業者の間では、後継者の問題もあり、事業継承が行われる際に利用されるようになってきました。コロナ禍に入ってからは、副業を始める個人の方が増えてきたことでも注目度が増しています。既に実施されている事業をそのまま買い取ることが出来るので、比較的、専門知識が求められない業種の中で、飲食店などのサービス業があります。その場合、個人でも手が出しやすい案件なので、注目度も高いのではないでしょうか。

スモールM&Aを行うメリットとは?

スモールM&Aを行うメリットは、通常のM&Aプロセスよりも、手間や時間が省けるところです。資金も少額で始められるので、サラリーマンのような個人でも始めることができます。買収計画が立てやすく、早ければ半年足らずで成約することもあります。

「小額で始めることができる」

スモールM&Aは一般的なM&Aに比べると、少額で始めることができるのです。売買金額は1億円以下を指し、さらに少額で始めることができる、マイクロM&Aは1000万円以下のことを指しています。広い定義でいえば、マイクロM&AもスモールM&Aに含まれるのです。

マイクロM&Aになると、サラリーマンや個人でも手が出せる金額の案件も見つかります。働き方改革もあり、副業を認める企業も増えつつあるので、サラリーマンや個人でも参加できる環境も整ってきました。

M&Aのマッチングサイトの普及もあり、検索しやすくなったことも増えてきた理由にあるでしょう。しかし、初心者だと時間や手続きに手間がかかることもあり、仲介会社などに専門的なことはお任せする方が、早期の契約まで進むのではないでしょうか。

起業しなくても事業を始めることができる

自ら起業をしなくてもスモールM&Aで会社を買えば、ゼロから事業を始めなくて済みます。事業承継をすることで、ノウハウや従業員も一緒に雇うことができるので、新たに人材や設備の確保の必要がありません。また、将来の事業の見通しがつけやすいことも始めやすい理由の一つでしょう。

個人でゼロから起業した場合、事業の内容によっては、事務所や取引先も見つける必要もあります。また、経理など事務作業も必要です。スモールM&Aを使えば、その必要がいらないので、自分の作業に集中できるのも大きなメリットになります
一方、想定とは違う場合もあります。

資金が想定以上に必要になる、従業員が辞めてしまうなど、思うように経営が進まないこともあるでしょう。個人でおこなうスモールM&Aでは、ご自身の知識と経験以上に、従業員との関係性を築くためのコミュニケーションスキルも必要です。

サラリーマンがスモールM&Aを行うメリットとは?

サラリーマンとして働きながら会社を買い、経営者の経験ができることがメリットではないでしょうか。副業で始めた事業が軌道に乗って上手くいけば、退職の道も選択可能です。定年後など、将来を見据えて事業を選択することもできます。万が一失敗しても、売却という手段も残されているので、本業があるうちだと生活には支障が少なく済みます。

本業の経験を活かせる、または、副業で始めたことが本業にも繋がる事業を選べば、相互でメリットになります。また、ご自身の趣味を生かした事業が見つかれば、やりがいも生まれて生きがいにもつながるのではないでしょうか。

「資本家になれる」

スモールM&Aを利用して、会社を買えばサラリーマンでも資本家になれます。起業や独立を考える人が多い年代は、主に40代でサラリーマンを数十年続けてきた人です。定年も65歳まで延びている企業もありますが、60歳になると給与が定年前よりは下がります。

経済や雇用を支えているのは中小企業です。6割以上の中小企業では、後継者不足により廃業の危機にあると言われています。中小企業をスモールM&Aで買い取り、自ら経営者となることです。

そのためには、現役で働いている間の資産形成は大事になります。経営者となれば、定年もありませんし、働けるうちは働いておけば、老後の生活にも余裕がでるでしょう。大きな資産を形成できるのは経営者だからではなく、資本家だからと言われています。

利益をきちんと出していれば自分の報酬も決めることができ、家族を役員にして役員報酬を支払うことでダブルインカムにもできます。そうなれば、資本家になれたことを実感できるのではないでしょうか。

「働き方にもう一つの選択肢」

サラリーマン以外の働き方を増やせる時代になってきました。給料も上がらず、終身雇用も崩壊しつつあります。すでに定年まで働き続けることのほうが難しいかもしれません。まだまだ働けるうちに、いつ何が起きても慌てないためにも、働き方の選択肢を探しておくことは必要になってくるのではないでしょうか。

国や産業界などでも働き方改革が進められているのもあり、在宅勤務やフレックス制度の利用など、多様で柔軟な働き方も求められています。勤め先が副業可能の場合、サラリーマンを続けながら、スモールM&Aで気になる企業や事業を買収すれば、経営者として働くことも夢ではありません。オーナーとなれば出社せずとも、本業とも両立がしやすいでしょう。

副業がうまくいけば独立の可能性もでてきますが、やはり事業が安定するまでは時間もお金もかかることもあります。定年後に始めるよりは、現役で働いている間に経験を積む方が賢明です。

「サラリーマンで身につけたスキルが活かせる」

サラリーマンを続けている方は、PCなどのツールも問題なく使えますし、マネージャー以上になると、交渉力やマネジメント力などのスキルも身に付いているでしょう。

事業をする場合、マネジメント力やコミュニケーションスキルは必須です。経営者になれば、既存の従業員の方や取引先ともコミュニケーションを取らなくてはなりません。社員の目線と経営者目線だと考え方も違います。これまでのサラリーマンの仕事で培ってきたスキルを活かして、新たな挑戦をするチャンスです。

すぐに結果が出なかったとしても、本業にも活かせることが見つかるかもしれません。サラリーマンしか経験がないという方でも、その経験が活かせる場を自ら作ることが出来るのは、誰でも出来るものではないのです。

スモールM&Aの流れについて解説

スモールM&Aで会社を買うために必要な準備は、以下になります。

  1. 予算を決める
  2. 業種を決める
  3. 会社購入後の計画を立てる
  4. マッチングサイト、仲介会社などを利用して相談にいく
  5. 売却希望の会社を探す
  6. 買取先にM&Aの相談
  7. 秘密保持契約を締結する
  8. M&Aの条件を買収先と交渉する
  9. デューデリジェンスの実施
  10. 最終契約書を締結する

買収案件の発掘

サラリーマンが案件を探して買収する場合、手が届きやすい100万円前後〜1000万円までの価格は、規模の小さいスモールM&Aが適しているといえます。

足らなければ数百万円の費用であれば銀行で借り入れできるでしょう。買収先の規模が小さければ、利益も少なく数百万円で買収できる可能性があります。ただし、規模が小さいからといって、買収額が低いとは限りません。

少ない従業員数でも高い利益を出していたり、保有資産が多かったり、一等地に会社があると買収額が高くなるのです。
業界での将来性の心配がある場合や借入金が多いなど、経営リスクが高めの会社は安く買える傾向があります。この場合、早く経営から退きたいのでスムーズに交渉が進むでしょう。

基本合意契約

基本合意契約書とは、デューデリジェンス(適正な評価をする調査)などのM&Aの実現に向けて、確認するための契約書です。

M&Aを検討する売り手側の企業は、さまざまな買い手候補の条件を受けて譲渡先の検討を始めます。買い手候補の中から特定の候補に絞り交渉後、合意ができた双方の間で交わすものが基本合意契約書です。

この基本合意契約書には、交渉の内容やスケジュールなど、双方がM&Aの実現に向けて合意した内容が記載されています。

ただし、売り手側、買い手側双方とも意思決定が変化する可能性があるため、法的拘束力はないのです。基本合意書の締結後、買い手側によって売り手側の財務状況などを調査し、デューデリジェンスが行われた後に、最終的な譲渡価格が決まります。

「デューデリジェンス」

デューデリジェンスとは、基本合意書の締結後に、買い手側が売り手側の財務状況などを調査することです。デューデリジェンスには、財務、法務、税務などの種類があり、どのような調査を置くかを明記する場合もあります。

  • 「財務」:業績、収益、債務の調査。
  • 「法務」:各種の契約の有無とその内容の調査。
  • 「税務」:納税の確認、税務署からの指摘事項の有無などを調査。

デューデリジェンスの実施には、確認内容にもよりますが、少なければ2週間程度で完了するケースも多くあります。費用もかかるので、予算を決めて必要最低限の期間とコストで終わるように完了させます。

事前準備として、「実施範囲」、「期間」、「予算」、「外部委託」の有無などを決定しなければなりません。後から変更が必要になるのは、影響も大きくなるので準備段階での確認は必須です。

「事業計画」

事業計画を作る目的は、売り手側に事業計画を示したうえで納得してもらい、売却の合意を得ることです。また、金融機関より資金を調達しなければならない場合にも、事業計画は必要になります。

事業計画が夢物語ではだめです。実現可能なものでなければ、売り手側にも金融機関にも納得してもらえません。しっかり事業計画を作っておかないと、買収後に事業を開始したとたんに、資金繰りに行き詰っても困ります。目標達成のためにも、経費や人員がどれくらい必要なのかを見極め、決める必要があります。売上はどれくらい上がるかなど、具体的に出すことにより現実的な事業計画を作成することが大切です。

事業計画を作成する中で、最も重要なビジネスを続けるために必要な運転資金は、事業譲渡の場合はついてきません。資金繰りについては余裕をもたせて準備するべきものです。

「スキームの選択」

スキームとは会社を手に入れるための様々な方法のことです。M&Aの主なスキームは、株式譲渡と事業譲渡や経営統合する方法になります。譲渡対象が会社全部か分割して一部、などがあります。この中で、スモールM&Aで関わってくるのは、「株式譲渡」と「事業譲渡」の2つになります。

事業譲渡は、対象を決めて引き継ぐスキームです。例えば、機械や人など引き継ぐものを特定し、事業譲渡契約書に記載しなければなりません。その後、事業に必要な契約は、再契約する必要があるので、株式譲渡よりは手間がかかります。

株式譲渡の場合は、全てを引き継ぐことになります。その会社が持っているもの全てなので、従業員の雇用の再契約や賃貸契約などの作業は不要です。デメリットは、全て引き継ぐため負債があった場合には、存在を知らなかった負債でも引き継ぐことになります。

「最終合意契約」

デューデリジェンスを実施後、様々な項目について協議と調整を実施したのちに、最終的に合意し、契約を締結します。最終契約は、スキームの種類により契約書も異なります。事業譲渡の場合、事業譲渡契約書の締結、株式譲渡の場合は株式譲渡契約書の締結です。

スモールM&Aを個人で行う場合は、契約書の精査を弁護士や専門家に依頼する方がよいでしょう。最後にクロージングを行います。クロージングは、最終契約の内容に従い、経営権、各種権利などを売り手側から買い手側に移す手続きです。

クロージングのあとに、買い手側の作業で、PMI(ポスト・マージャー・インテグレーション)を実施します。PMIは、スモールM&A終了後に、売り手側と買い手側の経営を統合する手続き全般のことです。PMIが完了すると、スモールM&Aの手続きが全て終了となります。

スモールM&Aにおいて重要なポイント

スモールM&Aを成功させるために重要なポイントは、資金の確保と成長が見込める事業なのか?見極めることも大事です。個人で買収を考えている場合は、手続きに手間取ることが出てくる場合や、まれにですが虚偽の情報を示される場合があるのです。トラブルを防ぐためにも専門家や仲介会社の利用をして、サポートを受けながら進めることをおすすめします。

専門家に相談

サラリーマンや個人でも、投資や会社を経営したいという人にとって、スモールM&Aは、注目されています。注目度も上がり、実際に行うためにマッチングサイトも増えてきましたが、競合も多いので時間がかかるのが難点です。

特に初めて買収を考えている人には、アドバイザーなど仲介会社や専門家に相談してみるのがよいでしょう。案件を見つける際にもマッチング支援や情報も多く持っているので、早期に見つかることもあります。

重要な契約書を作成する際は、弁護士や税理など専門家の知識も必要になるでしょう。トラブルに巻き込まれることを防ぐためにも、専門家にサポートをお願いするのは、安心して売買できるのではないでしょうか。

案件を探す

スモールM&Aに興味を持ったら、まずはマッチングサイトからでも案件を探してみましょう。サラリーマンとして働いている間に、副業として自身の趣味から探すのも、興味ある分野から探してみるのもありです。

興味ある分野が見つかれば、仲介会社など専門家に相談することをおすすめします。これからの時代は会社員であっても終身雇用はなくなると言われています。スモールM&Aで、会社を買収することを経験しておくことで、会社員以外の働き方を持つ経験ができるのです。

中小企業や個人の事業では、後継者問題もあるので売却希望の会社は多いと言われています。また、成長した事業を売却したい投資家もいるので、希望に沿った案件を諦めずに探してみることです。

まとめ

スモールM&Aは、従来のM&Aより少ない資金で始めることができる制度です。メリットは制度を利用することにより、ゼロから起業せずとも、設備や従業員もそのまま譲渡されるので、手続きなどの手間が削減できます。スモールM&Aを考える年代の多くは40代で、長くサラリーマンとして働いてきた人達です。

数百万円の資金であれば、サラリーマンとして働いているうちに始めやすい金額でしょう。事業が成功し利益が出れば、今度はその事業を売却して売却益を得ることもできます。

これからはさらに働き方も変わっていき、終身雇用も望めない時代になるので、サラリーマン以外の仕事を持つことを、本気で考えなくてはいけない時代になるのではないでしょうか。

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