事業計画を絵に描いた餅にするな!

事業計画を作ってみよう

このコラムから、実行フェーズで、デューデリジェンスと並ぶもうひとつの柱である「事業計画作り」について解説していきます。

事業計画はデューデリジェンスの作業と並行しながら作成します。デューデリで得られたデータをもとに、自分の持つ経験やスキルも合わせて考えて、「会社をこんなふうに経営しよう」という考えを、事業計画としてまとめるのです。

事業計画を作る目的とは?

事業計画は、会社にとって、普段の経営のために必要なものですが、M&Aにおいて、なぜそれを作る必要があるのでしょうか。

M&Aにおいて、事業計画を作る第一の目的は、事業計画を売り手側のオーナーに示し、それに納得してもらって、売却の合意を得ることです。

資金調達のためにも必要です。金融機関や投資家からお金を集めるには、彼らに事業計画の内容を認めてもらわなければなりません。

いわずもがなですが、事業計画は買収後の経営のために必要です。買収計画は、売り手側や金融機関を納得させるためだけの「絵に描いた餅」ではダメということです。事業計画が使えるものでなければ、会社を買ったものの、事業にも資金繰りにもたちまち行き詰まることにもなり得ます。

事業計画とは、経営陣や従業員が、日々の経営で立ち返って見る指針です。彼らが日々の仕事を具体的にイメージできるような「使える」事業計画を作りましょう。

自分の頭を整理しよう

M&Aにおいて事業計画を作る目的として、私が何より大切だと思うのが、事業計画を作りながら、自分の考えをまとめることです。デューデリで得られたデータをもとに、その会社を買って自分がやりたいこと、やろうとしていることを事業計画として形にしていけば、自分の頭の中が整理され、自分が想像していたことが可能なのかもチェックできます。

スモールM&Aでは、長年、経営が続いている中小企業を買うわけですから、オーナーがチェンジするとはいえ、経営の基本的な部分はそれまでの継続です。ですから、事業計画は、新しいオーナーによって、これまでの経営に何がプラスされるか、会社がどんなふうに変わるかがわかるものであれば十分です。

事業計画を見れば、株主や従業員、金融機関などの関係者が、「これならいける」とワクワクするようなものを作りましょう。事業計画に定型はありません。スモールM&Aでは、それほど大かかりのものを作る必要はないでしょう。

ちなみに、私がこれまで買収を検討した中小企業で、事業計画を作って経営していた会社は皆無です。大企業に勤めていた人からすると、事業計画がないのに企業経営できるのかと疑問に思うでしょうが、中小企業は、オーナーの感覚だけで経営しているところがほとんどなのです。これは裏を返せば、精緻な事業計画を作り、KPIを落とし込んで事業管理をするだけで、中小企業のバリューアップは可能だということです。

次のコラムから、事業計画の具体的な作り方についての解説に入りましょう。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。



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