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個人事業主の廃業手続きとは?

意外?新型コロナウイルスが倒産件数減少の原因

(1)ウイルスの倒産への影響

新型コロナウイルス感染への警戒心は、人々の活動を抑制してきました。同時に経済活動も滞りがちとなってきたことから、「企業倒産件数もさぞかし増えた」とお考えになる方も多いのではないでしょうか?

ところが、実際はその逆のようです。実際東京商工リサーチが2021年12月22日に公開した記事によると、2021年の全国企業倒産件数は「歴史的な」とか、「半世紀ぶり」とかいったことばでその低水準ぶりが表現されています。四半期を通して、驚異的な低水準に企業倒産件数を抑制した最大の要因は、官民が一体となり、強力に各企業の資金繰りを支援したことにありました。

とはいうものの、同年1月から11月までに5526件もの企業が、全国で倒産しているのです。資金繰り支援のおかげで倒産件数の増加を免れているだけで、個人事業主からの廃業相談自体は、新型コロナウイルスの影響から増加傾向が見られます。

(2)廃業を考える前に

資金繰り支援を受けても、焼け石に水。そこまでになってくるとほとんどの事業主は、手塩にかけたわが事業の廃業を考えます。

しかし、今の時代にはM&A(企業の合併・買収)という選択肢もあります。事業主が、「もう廃業しかない」と考える会社でも、その会社が持つ販路やノウハウに魅力を感じ、買ってくれる会社や個人が存在するかもしれません。

M&Aにより、わが子のように育ててきた事業は存続でき、さらにある程度まとまったお金が入ってくる可能性もあるのです。廃業するにしても法治国家日本において、ほとんどを放置したままにしておくわけにはいきません。後述するように、とても煩雑なことを考える必要にも迫られるのです。いわば最後の手段でもあるM&Aという手法を使っても、二進も三進も行かないときに初めて廃業という選択肢を考えるべきでしょう。

今回の記事では、仮に個人事業主が廃業となってしまった場合に必要となる手続きについて説明しようと思います。是非最後までご覧ください。

個人事業主の廃業手続きとは?

(1)法人の解散時よりはまし

廃業することになっても、その手続きに前向きになれる人は多くはないはずです。また、前向きになれないからと放置し続けていると、無申告加算税を課される事態にもなりかねません。廃業手続きは、必ず行うようにして下さい。

“手続き”とはいっても、特に個人事業主の廃業手続きは、法人の解散と比較するとその煩雑さは少なくて済みます。煩雑さの最も少ないケースでは、廃業届を納税地の所轄税務署と都道府県税務事務所へ行うだけです。

(2)個人事業の開業・廃業等届出書

(ⅰ)ダウンロード

所轄税務署に提出するのは、“個人事業の開業・廃業等届出書”です。ある程度のフォーマット(書式)は決まっています。廃業に迫られ慌てているようなときにでも、国税庁の“[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続”のページから、PDFファイルで簡単にダウンロードできます。

(ⅱ)記入→提出

これに記入後、廃業日から1か月以内に所轄税務署に提出しましょう。その期限日が土日祝日と重なったしまったときには、翌平日が期限日になります。提出しなかった場合の罰則はありませんが、税法上提出が求められています。税務署からの確定申告書送付が何回も送られてくるようになってしまうため、必ず提出するようにして下さい。

提出先が、“納税地の所轄税務署”であることには注意が必要です。納税地と事務所所在地が、必ずしも一致しないケースがあります。例えば、納税地は東京都事務所の所在地が埼玉県という場合です。この場合の提出先は、東京都内の税務署です。したがって開業以降、事務所を1度も移転することなく廃業に至ったのであれば、開業届を提出した税務署に原則提出するものと考えて下さい。

(ⅲ)マイナンバーカードが便利

税務署への廃業届提出には、マイナンバーカードがあると、提出物の合計点数を少し減らすことができます。その際の提出物は、下記3点です。

・“個人事業の開業・廃業等届出書”

・提出の必要なその他書類

・マイナンバーカード

マイナンバーカードがない場合には以下4点。

・“個人事業の開業・廃業等届出書”

・提出の必要なその他書類

・マイナンバーが記載されている住民票、または、マイナンバー通知カード

・運転免許証などの本人確認書類

また、提出方法には納税地の所轄税務署へ直接必要なものを持って行く以外、郵送でも受け付けてもらえます。その場合は、マイナンバーカードや本人確認書類そのものを郵送する必要はもちろんありません。それらのコピーを送って下さい。

(3)事業開始(廃止)等申請書

手続きが最小の場合でももう1つ、都道府県税務事務所への“事業開始(廃止)等申請書”の提出が必要です。この申請書類の名称やフォーマットは、都道府県により多少の違いがあるようです。

また、提出期限の点でも、所轄税務署へ“廃業日から1か月以内”に提出しなければならないとする“個人事業の開業・廃業等届出書”とは違いがあります。都道府県により提出期限は異なるため、あらかじめ調べておく必要があります。

(4)ほかにも書類提出が必要な場合が

「個人事業の開業・廃業等届出書」・「事業開始(廃止)等申請書」これら2つに加えて、次の4つの場合に該当するときも、それぞれの手続きをしなければいけません。なお、手続き書類の提出先は、いずれも所轄税務署です。

(ⅰ)青色申告をしていた

(ⅱ)売上が1000万円を超えていた

( iii )従業員を雇用していた

( iiii )予定納税をしている

(ⅰ)の場合

“所得税の青色申告の取りやめ届出書”廃業翌年の3月15日までに、提出する必要があります。“個人事業の開業・廃業等届出書”の提出のみで、青色申告の取り消しが行われることはありませんので注意が必要です。

(ⅱ)の場合

売上が1000万円以下だったのなら消費税の納税は必要ありませんが、超えていた場合には“事業廃止届出書”の提出が求められます。提出期限は、決められていません。

( iii )の場合

廃業日から1か月以内に、“給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書”を提出しなければなりません。

( iiii )の場合

予定納税とは、税金の前払い制度のことです。前年の納税額を基準に、その年の納税額が予定されます。予定納税基準額が15万円以上の人に対して、税務署からの通知が6月15日までに突然届くことから、驚く人も多いのではないでしょうか。“所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請書”を、提出期限までに提出しなければなりません。提出期限は個人事業者によって違うため、確認を怠らないようにしましょう。

ちなみに、この申請書は予定納税額の減額申請を目的として提出します。廃業すると所得が減り、本来なら所得税の納税額も減らされるべきです。ところが、廃業前年の所得から予定納税額が算出されています。この申請書を提出しないと、納税額が減額されることもありません。

節税を考えるなら廃業日はいつごろに?

(1)年末近く

1月1日から12月31日までの事業活動にともない生じるお金が、個人事業主の課税対象とされます。通常3月中頃を申告期限とする、いわゆる確定申告で申告を行います。廃業の年の所得がプラスであるなら、忘れずに確定申告して下さい。反対にマイナスの場合には、その必要はありません。

それでも、廃業年の個人事業税額は重くなりがちです。事業が順調だったころには、地方税の1つ個人事業税の昨年分を今年に支払っていたはずです。廃業年には、昨年分と今年の分を合わせて支払う必要があるためです。

節税のためには、年末の12月31日に可能なかぎり近い日に、廃業日を設定するのがいいでしょう。その理由を、次に説明します。

(2)廃業後にも経費が

廃業し、売上がまったくなくなった後にも、思った以上に費用が発生するものです。具体的には、仕事場の片づけにかかる費用・備品の廃棄費用・光熱費などです。これらの金額は廃業がなかったのなら、確定申告時に必要経費として計上されていたものです。

(3)更正の請求

廃業した日で、事業は終了します。その翌日以降に発生した経費は、元来経費とはされません。しかし、廃業後に発生した必要経費への算入は、“更正の請求”という手続きを取って、原則的には行われています。

ただ、その手続きを行うための期間は2ヶ月以内であり、あまり多く与えられていません。廃業後に発生した必要経費が生じた後、わずか2か月という時間内に、すでに申告済みの確定申告に対して、更正の請求という手続きをする必要があります。

(4)事業を廃止した場合の必要経費の特例

また、“更正の請求”手続きによらない場合には、所得税法第63条の“事業を廃止した場合の必要経費の特例”で、廃業後に発生した費用を必要経費として確定申告で計上することが認められています。ところが、それをもってしても必要経費として認めるか否かの線引きが、税務署によりけりで明確ではありません。この特例に頼るつもりで9月に廃業し、税務署に必要経費として認められなかったときには、原則的に行われている“更正の請求”はできないのです。

(5)失念防止

さらに、確定申告とほぼ並行する形で廃業に関する事務作業を進めれば、更正の請求などを失念する可能性を小さくもできます。

12月31日にできるだけ近く!」というアドバイスが行われるのには、(3)~(5)の理由があるのです。

廃業に備えた制度について

事業者の人生の分かれ目となる廃業です。その廃業については、ほかにも知っておくべきことがあります。

(1)所得補償保険

けがや病気で働けなくなることへのリスクヘッジとなる保険で、損害保険会社の商品の1つであることが多いです。体が資本の個人事業主には、いつ何時災いが降りかかるか分かりません。思いもかけず事故に遭ってしまい、廃業せざるを得なくなったときにはこの所得補償保険が物を言います。就業不能リスクを考え、この保険への加入を考えてみてはいかがでしょうか。

(2)小規模企業共済

文字どおり、小規模企業の経営者や個人事業者向けの共済制度です。廃業時以外、退職時にもお金を受け取れることから、退職金に近いイメージで考え、加入している事業主が少なくありません。全額所得控除となる掛け金も魅力です。

(3)失業保険

退職するときに失業保険が支払われるのは、会社に雇われ、雇用保険に加入している、いわばサラリーマンです。そもそも個人事業主が、雇用保険に加入することはできません。そういった意味からも、所得補償保険と小規模企業共済を十二分に利用されることが勧められます。

まとめ

以上のように、個人事業主が廃業する際に、行うべき手続きについて説明しましたが、いかがだったでしょうか?

個人事業主の約4割は1年以内に廃業すると言われています。廃業する際の手続きは意外と多く、また節税の観点からも慎重に手続きを進める必要があります。

そこで、廃業する前にM&Aによって会社を売却するという選択肢もあります。これまで積み上げた事業を廃業するのではなく、売却して他の企業や個人に託すことによって、ある程度まとまったお金を手にする方法も考えると良いでしょう。

廃業やM&Aに関してご質問がある方は、下記リンクよりお気軽にご相談ください。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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