ブライダル業界のM&Aが注目される理由とは?動向や事例について解説

「ブライダル業界のM&Aについて知りたい」「ブライダル業界のM&Aを成功させる方法ってあるの?」そのような疑問をお持ちではないでしょうか。本記事では、ブライダル業界の現状と今後の動向、ブライダルM&Aが注目されている5つの理由、ブライダルM&Aの売却・買取相場などについて事例を交えながらご紹介します。

そもそもM&Aとは

M&Aとは、「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」を省略した呼び名です。一般的には、企業の合併や買収のことを示します。そのほか、業務提携や資本提携を含む場合など、経営面での協力関係の意味で使われることもあるのがM&Aです。

もとは、海外企業の経営戦略の1つとして利用されてきましたが、近年では、国内の企業でも積極的にM&Aが活用されています。特に後継者不足を解決するための利用であったり、企業としての成長を期待するパターンが増えているようです。

ブライダルM&Aとは

ブライダル業界のM&Aの特徴として、同業者が買手候補として挙げられることがあります。買収の主な目的は、収益やシェアの拡大です。例えば、式場を所有している企業が映像制作や、ジュエリーやドレスのレンタル・販売など、ブライダル周辺事業を吸収したいという狙いがあります。

ブライダル業界のM&Aのもう1つの特徴は、明確なニーズを持った買手が多く、近年では、買手側主導でM&Aが行われる事例が増えています。この地域にこういった雰囲気の式場があれば、買収を検討したいという具体的なニーズを持っているため、売り手側と買い手側のマッチングが比較的早く、成約までのスケジュールが割と短いというのが特徴です。

ブライダル業界の現状と今後の動向

ブライダル業界とは、挙式・披露宴、結婚に関する情報を提供するサービス、ブライダル用のジュエリーなど、結婚に関するさまざまなサービスを提供している業界のことです。ここでは、ブライダル業界の現状がどうあり、今後どのような展望が望めるのかを解説します。

ブライダル業界の現状

ブライダル業界では、もともと少子化による婚礼数の減少というのが大きな問題でした。昨今では、これに加えて、晩婚化の影響で披露宴を行わない「なし婚」が増加しており、益々厳しい状況にあります。さらに、コロナ渦の直撃によって経営のひっ迫をよぎなくされた企業も少なくありません。

「2021年のブライダル関連市場規模(主要6分野)は前年比117.6%の1兆4,945億円の見込みである。2020年は長く維持していた2兆円の大台を大きく割り込んだが、2021年は挙式披露宴が施行されるようになったことで、全体市場の50%以上を占める挙式披露宴・披露パーティ市場が回復に転じた。挙式披露宴については、2021年調査時予測より早く回復への兆しがみえてきたが、施行件数と組単価(1組あたりの施行単価)の完全回復には未だ至っていない。」

引用:株式会社 矢野経済研究所
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2964

ブライダル業界の今後

コロナ渦における1つの対策として、「オンライン結婚式」や「オンラインお見合い」を企画するなどの試みによって、一時的な市場回復はありましたが、根本的な解決までには至っておりません。今後は、新規事業の開発あるいは、事業の多角化が、より重要になってくるでしょう。

「結婚式や披露宴同様にドレスやタキシード、和装などを身に着けてヘアメイクをし、屋内スタジオや屋外でのロケーション撮影をおこなうサービスです。結婚式とは別の日に写真だけを撮影する「前撮り」「別撮り」と、式の代わりに結婚写真を撮影するサービスがあります。 当社がサービスを開始したころは、日本では一般的ではありませんでしたが、結婚式ニーズの多様化を背景に徐々に定着し、今では結婚するカップルの約半数がフォトウエディングを実施しています。」
引用:DE&CO https://ir.decollte.co.jp/management_policy/business.html

近年ではこのフォトウェディングを、挙式の替わりにするご夫婦も少なくはありません。しかし、新規事業に着手するには多くの資金・人材が必要となります。したがって、新規事業への参入を目的としたM&Aが進められることになるのです。

ブライダルM&Aが注目されている5つの理由

近年ブライダル業界でM&Aが注目される理由は、下記5つが考えられます。

  1. 後継者不足の解決
  2. 市場規模の縮小に対する経営改善
  3. 個人保証や担保の解消
  4. 従業員の働き先の確保
  5. 譲渡による売却益の獲得

上記の内容を詳しく解説していきます。

1.後継者不足の解決

後継者不足とは、会社の経営を引き継ぐ後継ぎが決まっていない状態のことです。会社の経営を後継ぎに引き継ぐことを、「事業承継」といいます。通常経営者は、会社の事業が継続されていくことを望むため、適したタイミングで事業承継を行いますが、近年よく取り上げられるのが、後継者不足の問題です。

特に中小企業では、これまでは広く行われてきた親族への事業承継が減少する傾向にあります。従業員を後継者にする「社内事業承継」も存在しますが、これを辞退する候補者も多いというのが現実です。そのため、M&Aで会社や事業を売却することによって、買い手側に事業承継する方法が年々増加傾向にあります。

2.市場規模の縮小に対する経営改善

2つ目の理由は、採算の見込めない事業からの撤退です。ブライダル業界の市場規模は、年々縮小傾向にあります。コロナ渦の影響でさらなる打撃を受け、ブライダル事業としての収益性の確保が困難になった企業は、非採算事業を手放し、経営の立て直しを図る手段として、M&Aを検討することになるのです。

3.個人保証や担保の解消

3つ目の理由は、個人保証や担保を解消できることです。ブライダル事業では、土地を確保して式場の建設を行いますが、通常は融資を受けて進めます。融資の際には、経営者自身が個人保証・担保を差し入れているため、もし業績の悪化によって融資の返済が滞った場合には、担保差し出しのリスクを負わなければなりません。

しかし、M&Aを実施することにより、個人保証や担保を、買い手側の企業に譲渡することができます。つまり、経営者の負担を軽減することが可能になるわけです。

4.従業員の働き先の確保

次に4つ目の理由は、従業員の働き先の確保です。ブライダル事業の運営には、式のプランを立てるプランナー、式の進行をサポートするアテンダーのみならず、料理・飲み物の配膳をおこなうホールスタッフ、会場の照明操作を行う照明スタッフなど、多岐にわたる従業員の確保が必要となります。

業績が悪化している企業では、従業員の維持・確保が困難な状況にある場合も多いのが現状です。しかし、M&Aでは、従業員の雇用維持が、譲渡先に対する条件に入っているケースが多いため、譲渡後も従業員の働き先を維持できます。

5.譲渡による売却益の獲得

最後に5つ目の理由は、譲渡することで売却益が得られることです。経営者は、株式譲渡の対価として金銭を得ることができます。M&A後も会社自体は存続するため、従業員への退職金を支払う必要がないこともあり、M&Aによって譲渡する方が、廃業するよりも手元に多くの資金が残るのが大きなメリットです。経営者の老後の生活資金になるだけでなく、新事業のための資金にもなります。

ブライダルM&Aの売却・買取相場

実際にM&Aを検討される方には、売却・買収の相場がどの位なのか、気になるのではないでしょうか。ここでは、価格相場や、企業価値を算定する方法について解説します。

企業価値算定によって企業価値を把握し算定する

ブライダルM&Aの、売却・買取の相場は、保有している式場の規模や立地条件、企業の収益力や将来性などの複数の要素によって大きく変動するため、およその相場価格を予測することはかなり難しいです。

そこで利用するのが、「企業価値算定」です。企業価値算定を利用することで、実際にM&Aを行った際に自分の企業につけられる価値の、およその判断が可能となります。

また、ブライダル業界においては、特に式場を保有している企業の場合、その価値評価はDCF(Discounted Cash Flow)法をベースとして、さまざまな算定方法を組み合わせて行うのが一般的です。

専門家やプロに算定してもらう

上述の方法では、ある程度の企業価値を算出することはできますが、ブライダル業界では、日々サービスの幅が広がっておりますし、トレンドの移り変わりも激しいです。そのため、算出のために必要な項目である「将来の予測」が立てづらい所もあります。より正確な企業価値評価の算定を行う場合は、業界に精通したプロに任せるのが1番でしょう。

ブライダルM&Aを成功させるためには

ブライダルM&Aを成功させるためには、下記4つの点を意識することが大事になります。
計画を入念にたてる
目的を明確化する
交渉の材料を用意しておく
専門家やプロに相談する

1.計画を入念にたてる

まず1つ目は、計画を入念にたてることです。
計画的に準備を行わずに進めると、成約までの期間が長くなったり、最悪の場合にはM&Aの機会を逃してしまうことにもなりかねません。
理想の形でのM&Aを実現するためにも、目的を明確にしたうえで、しっかりとして道筋を見据えた計画を立てるようにしましょう。

2.目的を明確化する

2つ目は、M&Aを行う目的を明確にしておくことです。売り手側の目的に応じて、マッチする理想的な買い手側の企業は異なります。

また、M&Aを行う目的が不明確な状態で実施すると、相手側企業との交渉がうまく進まなかったり、実施後に後悔するというように、失敗率が高まってしまうのです。よって、M&Aを検討するさいには、目的を明確にすることが重要です。

3.交渉の材料を用意しておく

3つ目は、交渉の材料を用意することです。自社の立地や収益性など、アピールできる強みを整理して準備しましょう。特に買い手側が重視するポイントは、以下の通りです。

  • 式場へのアクセスのしやすさ
  • 式場の規模
  • 優秀な従業員の存在(プランナーなど)
  • 稼働状況

自社の強みを余すことなくアピールできるよう、準備しましょう。

4.専門家やプロに相談する

最後4つ目ですが、やはりM&Aを有利に進めるためには、専門家に相談することも検討しましょう。通常、買い手側の企業は、すでに買収を経験していることが多いため、交渉面では売り手側が不利になってしまうことが考えられます。専門家のアドバイスやサポートを受けることによって、理想的なM&Aを実現したいものです。

ブライダルM&Aの事例

ここでは、実際にブライダルM&Aが成立した事例を3件、紹介します。

エスクリによるフジ・メディアHDのM&A

「エスクリは、フジ・メディア・ホールディングスの100%子会社で婚礼プロデュース事業を展開するストーリア(東京都港区。売上高9億8000万円、純資産2億2400万円)の全株式を取得し子会社化することを決めた。

ストーリアは2008年7月設立。エスクリは2016年1月にストーリアが運営する披露宴施設、「南青山サンタキアラ教会」(港区)を取得している。今回、ブライダル事業のさらなるシェア拡大を目指し、同社の子会社化を決めた。」

引用:M&A Online
https://maonline.jp/news/20150924a

くふうカンパニーによるフルスロットルズのM&A

「くふうカンパニーは、ウェディングドレス販売や結婚式のプロデュースを手がけるフルスロットルズ(東京都渋谷区。売上高5億4400万円、営業利益3500万円、純資産6100万円)の株式51%を取得し子会社化することを決議した。

くふうカンパニーは結婚関連領域で情報提供から結婚式当日のサービスまでトータルに提供する体制づくりに力を入れている。輸入ブランドを中心とするウェディングドレス販売で実績を持つフルスロットルズ(2004年に設立)をグループに迎えることで、サービスの質向上や事業拡大につなげる。」

引用:M&A Online
https://maonline.jp/news/20190515c

 

カヤックによるサンネットのM&A

「株式会社カヤック(本社:神奈川県鎌倉市、代表取締役CEO:柳澤大輔、東証マザーズ:3904、以下「カヤック」)の子会社である株式会社プラコレ(本社:神奈川県横浜市、代表取締役CEO:武藤功樹、以下「プラコレ」)は、2018年2月14日(木)付けで、沖縄で14年のウェディング事業を行うサンネット株式会社(本社:沖縄県那覇市、代表取締役:上地明彦、以下「サンネット」)の80%の株式を取得し、同社をグループ会社化したことをお知らせいたします。」

引用:面白法人カヤック
https://www.kayac.com/news/2018/02/placole_group

まとめ

当記事では、ブライダルM&Aについて解説しました。ブライダル業界が抱えるさまざまな問題を、M&Aによって解決できる可能性があることを知ってもらえたのではないでしょうか。自社のブライダル事業が抱えている問題が、当記事のパターンに当てはまる場合、M&Aを検討してみてはいかがでしょうか。

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