2025年に70歳を超える中小企業経営者が245万人を超え、そのうち約半数にものぼる127万人が後継者未定といわれています。
そんな「大廃業時代」の到来に向け、中小企業の経営者は、どう備え、何をすべきなのか?
解決の糸口になると言われているのが、「事業承継・M&A」です。経営者自身、そして従業員、取引先、顧客といったすべての利害関係者にとって大きなメリットをもたらしうる「事業承継・M&A」ですが、その中身について、それらを進めていく主導者となる経営者の方に正しい理解が及んでいるとは言えません。 そういった背景を踏まえ、今回は、インタビュアーに名証メイン上場、名南M&A株式会社代表取締役の篠田康人社長をお招きして、中小企業経営者・オーナーが知っておくべき事業承継・M&Aの情報や、それらに関するアドバイスについて語っていただきました。
篠田社長は、東海地方を拠点に、これまで20年以上にわたって中小企業のM&A支援を行ってこられました。様々な課題や悩みを抱えられている経営者の方々をそばで数多く見てこられた篠田社長が、経営者の皆さまが本当に知りたい情報や疑問点について、余すことなく丁寧に教えてくださいます。
*本記事は、弊社代表三戸と篠田社長の対談形式(*要約版)でお届けいたします。
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現在、M&Aや事業承継の認知が社会でも広がっており、後継者不足に対して非常に有効な手段として、幅広く活用され始めています。そんな事業承継・M&Aについて、三戸が、中小企業経営者の目線で篠田さんに気になる部分をご質問し、事業承継・M&Aの全貌や実態を明かしていきたいと思います。
では、さっそく三戸と篠田社長のインタビューに移りましょう。
この記事の目次
どのタイミングで事業承継を考え始めるべきか?
三戸)まず、どんなタイミングで事業承継を考えたり、準備をしたりするべきなのでしょうか?「まだ大丈夫」と事業承継を先延ばししているうちに、突然の理由で譲渡せざるを得なくなり、トラブルになってしまうケースもあると聞きます。
篠田)いつでも事業承継ができるように準備だけはしておきましょうというのが私の意見です。準備さえしておけば、実際に事業承継をするタイミングは選べますし、それが突然に訪れても対応可能です。
事業承継の準備として何をするかというと、BSやPLを磨き上げておくことや株主を整理しておくことが挙げられます。例えば、中小企業のオーナーさんでは、会社名義で高級車や船舶、別荘を買って、オーナーさんが使っているなど、個人と会社の資産がごちゃ混ぜになっているケースが少なくありません。そういうものは事前に分けて、きれいにしておいた方がいいでしょう。
オーナーさんとしては考えたくないことでしょうが、病気や事故などの災難に見舞われることはあります。そんなときのために事業承継の準備はしておきましょうと、私はそれを口を酸っぱくして言い続けているのですが、それでも、たいていの皆さんは後回しにしてしまいますね。
事業承継を行うベストなタイミングとは?
三戸)オーナーさんが事業承継を後回しにして、痛い目を見たケースはありますか?
篠田)ありますね。私たちがサポートをして、買い手を見つけて交渉を進めながら、最後の最後で、「やっぱり会社を売るのはやめる」と意思決定されたオーナーさんがいました。オーナーさんの意思決定ですから我々は尊重したのですが、その数年後、新型コロナウイルスの問題が起きてしまい、その会社は経営が立ち行かなくなってしまったのです。
オーナーさんはその段階でもう一度売りたいと言ってきたのですが、経営難の状態ではなかなか買い手はつきません。オーナーさんは、「あのとき売っておけば良かった」と悔やんでいましたが、後悔先に立たずです。やはり、一度売却すると決めたのであれば、そのタイミングで売った方がいいと思います。
三戸)私の運営するファンドにも駆け込みのような形で案件が来ることがあります。以前あったのは、ある社長さんが突然亡くなってしまい、その妻が会社を引き継いだものの、中身が全然わからないのですぐにでも売りたいというものでした。
そんな形になってしまうと、従業員も取引先も困ります。事業承継が必要なタイミングが突然訪れることを想定して、事前に準備をしておくことは本当に重要だと思います。
「いつでも会社を売れる準備」とはどんなことをするのか?
三戸)事業承継の準備をしておこうということですが、名南M&Aさんは、準備時点ではどんなことをするのでしょうか?
篠田)準備とはM&Aをしやすい体制づくりです。そのために私たちはまず、第三者から見たときの評価や整理、いわゆるセルサイドデューデリジェンスを行います。
セルサイドデューデリジェンスを行うことで、買い手目線で見たとき、その売り手にはどのような問題があるかを把握できます。その上で、BSやPLをきれいにしたり、株主の整理などを進めたりしていきます。
三戸)株主の整理はどのように進めるのでしょうか?
篠田)とにかく発行済みの株を買い集めていきます。会社で買い集めるのか、個人で買い集めるかはケースバイケースです。名南M&Aが携わった案件で言うと、昔増資した関係で、取引先が株を持っているなど、株主が30~40人いる会社がありました。そのときは、株主をひとりひとり訪ねて、買取りをお願いして回りました。
三戸)名南さんが一緒に帯同されて、お話されたということですね。でも、株式をよくわからない会社や人が持っていたり、どこに行ったか分からないというケースもあると思います。そういうときはどうやって解決するのでしょうか?
篠田)相続が発生するなどして、そんな状態になることもあります。株主をひとりひとり当たっても株を買い集められないとなると、解決はなかなか難しくなります。そうなると、方法としては、分社化をして、その会社の実質的価値を移してしまう方法が考えられます。
税務財務、法務やM&Aに関する知識がなくて不安。そんな経営者でもM&AやM&Aの準備はうまく進められるのか?
三戸)先ほど仰っていたような、専門知識がM&AやM&Aの準備段階で必要になってくるケースだとどう進めていくのが良いのでしょう。
そこは、名南グループには会計士や弁護士などの士業がそろっているので、名南グループ全体の支援を受けて、法律や税務などの専門的論点もクリアしながら、解決策を見出していく、ということができるのでしょうか?
篠田)おっしゃる通りで、名南グループにはそういう難問に対応できる士業が一通り揃っていて、何かトラブルや問題が発生しても、その日のうちにでも解決できるという強みがあります。
三戸)M&Aにはいろいろな法律や専門的内容が絡んできますから、うちのファンドでも、弁護士や税理士をフル動員してやっています。それぞれの専門家は、自分の専門分野だけでなく、M&Aに関わる知識を持っていることが大切です。
たとえば税理士さんでは、中小企業の税務処理だけやっていますという人ではM&Aは対応できません。ファンドの立ち上げのときは、優秀でかつM&A関連の言語が通じる弁護士さんや税理士さんを探すことから始めましたが、そういう人を見つけるのはなかなか大変でした。
篠田)M&Aの知識があり、経験値も高いという士業の方はそれほど多くありませんからね。
でも名南グループでは、株の発行や増資、減資といった資本取引ばかりやっている税務チームや、会社法ばかりやっている司法書士のチームがあるなど、M&A関連の経験値の高い士業が多く、彼らとタイアップして仕事ができます。
三戸)上場しているM&A仲介会社でも、そういう部署や部隊を備えている会社はなかなかないでしょう。そこは名南さんの大きな強みですね。
篠田)そういった意味では、お客様としても案件を紹介いただく金融機関としても、安心感があると思います。
今のM&A仲介の多くは基本的にはマッチングをやっているだけで、資本取引などの専門的な領域までサポートしているところは少ないです。これからのM&A仲介では、複雑な問題を解決できる専門的な対応力がますます求められるでしょう。
私たちは、資本コンサルというサービスを含め、企業活動の本質的な部分へのサポートまで行うことができます。そんな仲介会社であるからこそ、それに見合った高額の報酬を頂いています。そういう方向性が、今後の仲介会社のあるべき姿だろうと思っています。
名南M&Aの創業から上場までの歴史
三戸)先ほど、名南さんの強みの部分に触れられましたが、どういった経緯でそのような「専門部隊がそろっている」というM&A仲介会社としては珍しい強みが生まれたのでしょうか。名南M&Aさんの歴史なども含めて、詳しく教えていただきたいです。
篠田)名南グループは55年前、税理士事務所として始まりました。創業者の佐藤澄男が掲げた経営理念は“経営のよろず相談所“で、お客様からいただいたご要望は全て名南グループがワンストップで叶えようというものでした。それを達成するため、名南グループには税理士だけでなく、弁護士、司法書士、社会保険労務士とさまざまな士業が集まりました。
さらに、経営コンサルもやろう、海外進出もしようなどと手を広げていく中で、M&A部門を作ることになったのがおよそ20年前です。
そして、M&A部門が会社の形態にしたのが2014年です。14年は、すでに上場していた日本M&Aセンターに続いて、M&Aキャピタルパートナーズが上場した年で、ストライクも間もなく上場するという頃でした。
私たちは、名古屋を拠点にM&Aを細々とやっていましたが、そんな3社の動きを見ながら、名南のM&A事業を今後、どうしていきたいかをみんなで話し合いました。その結果、「うちも上場を目指そう」となりました。
当時の役員からは「こんな売上規模で年々波も大きい状態なのに上場なんてできるのか」と首をかしげられたりもしましたが、それでも、「とにかくチャレンジしてみろ」といってくれるのが名南のいいところで、そこから私たちは上場に向けての体制作りに邁進しました。そして上場を果たしたのが2019年です。
名南M&Aと他のM&A仲介企業との違いとは?
三戸)現在、上場しているM&A仲介会社は5社です。名南さんは他のM&A仲介会社と比べると、どんなところに違いがありますか?
篠田)名南M&Aの今の拠点は、名古屋、大阪、静岡の3つで、主にその地域の事業承継やM&Aに関わり、その情報を全国に発信していますが、名南グループとしては、東海地域で仕事を始めて50年になります。この東海地域に深く根ざした50年が、ほかの会社とは違う特徴を生んだと思っています。
三戸)東海地域に特化することで生まれる他社との違いというと、具体的にはどういうものになりますか?
篠田)まず、私たちの扱う案件の属性が異なってきます。関東を拠点とするM&A会社と比べると、私たちが扱う案件は製造業の比率が非常に高いです。
大阪・名古屋・静岡は、製造業の集積地です。とくに名古屋は、トヨタ自動車があり、トヨタ系の部品メーカーが非常に多いですから、必然的に私たちはそういう会社の案件を扱うことが多くなります。
もちろん私たちは製造業以外の案件も扱っていますが、地域柄、製造業の案件が多いことで、当然、製造業に関する経験値が高くなります。製造業の案件の扱い方がわかっているという意味で、ほかの地域のM&A仲介会社よりは優れていると思います。
三戸)製造業のM&A案件は他の業種の案件と比べてどんな違いがあるのでしょうか?
篠田)例えば、自動車部品メーカーと一口に言っても、鉄を扱う会社もあれば、プラスチック、ゴムを扱う会社、エンジン回り、内装、外装を扱う会社など、その業種は細かく多岐にわたり、それぞれ製造工程も異なります。そんな製造業のM&Aでは、会社同士をマッチングさせるのがなかなか難しくなるのです。
三戸)売りに出た会社にふさわしい買い手を探すのが難しいということですね。
篠田)そうです。例えば、同じ金属でもステンレスと鉄では全くモノが異なりますから、加工の工程も変わってきます。プレスという技術でも、加工対象が小型のモノか大型のモノかでやはり工程は全く違ってきます。
よくわかっていない人からすると、同じ自動車部品メーカーで、同じ金属加工をやっている会社に見えるでしょうが、実際の中身は、全然違う会社ということが多いのです。名南M&Aは、地域に根差し、製造業をたくさん扱ってきた経験から、会社の中身の理解や売買ニーズの収集がうまくなっています。
M&Aは2つの会社がひとつになることで、より価値が生まれる状態を作るものです。せっかく大きな手間を掛けてM&Aをするわけですから、売り手さん、買い手さん、それぞれのニーズにあった会社を見つけて来られなければ意味がありません。それが製造業ではより大変になりますが、売り手の会社の中身をわかったうえで、製造業の細かさも理解して、その会社にふさわしい会社を見つけられるというのが、私たちの特徴というわけです
三戸)エリアに特化することで、製造業M&Aのマッチングが得意という、そんな強みが生まれたわけですね。
どんな規模・特性の会社をどんな会社が買うのだろう?
三戸)名南M&Aが扱う案件は、どんなサイズの会社が多いのでしょうか?
篠田)私たちが扱う案件の6~7割は、金融機関、特に地方銀行や信用金庫から紹介を受けた案件です。地方銀行や信用金庫の紹介ですから、年商で言うと10億円以下の会社が多くなります。中でも、年商1~5億円規模の中小企業のお客様が多いです。
三戸)製造業で年商5億円ほどの会社だと、利益が出ている会社は少ないのではないでしょうか?
篠田)意外かもしれませんが、東海地域では、そのくらいのレベルの会社で利益が出ているところがかなりあります。トヨタの系列に入っているところが多いというのも理由でしょう。定期的に仕事が来て利益が出ている会社が多く、純資産をかなり蓄えている会社もあります。私たちが扱ったあるプレスメーカーは、売上は10億円程度なのに、現金を10億円持っているうえに無借金経営でした。
三戸)それはすごいですね。現金が10億円もある会社が売却しようというのはどんな理由があったのでしょうか?
篠田)オーナーが高齢で後継ぎがいないというよくあるケースでした。同様の、70代くらいの経営者が後継ぎ不在で事業承継をするというケースは、うちが扱う案件ではもっとも多いです。
三戸)中小企業のM&Aでは、引き継ぎ手を、従業員や外部の個人、あるいはほかの中小企業で見つけるより、大企業に統合される引き継ぎ方が多いのでしょうか?
篠田)そうでもありません。例えば、売上10億円くらいの部品メーカーでしたら、売上30~40億円の部品メーカーがよく買っていますし、売上3~5億円のところでしたら、売上10億円くらいの会社がよく買っています。
先ほどの10億円の現金があったプレスメーカーは、まさにそんな買い手が買い取りました。東海地域では、ちょっと上の規模の会社が買い手になるケースが多いです。
会社はどのくらいの金額で売れるのだろう?
三戸)会社の売却や事業承継というものを経験されたことがないオーナーさんがまず最初に気にされるのは金額面だと思います。会社の売却金額はどのように決まるのでしょうか?
篠田)純資産の金額をもとに、そこからどれだけプラスやマイナスがあるかで決まっていくケースが多いです。ずっと経営状態が悪い会社や純資産が貯まっていない会社だと、売却金額はそれほど高くなりません。そこは売り手と買い手でギャップが生じやすいところです。
「うちは儲かっているのに、何でこの金額なのか」と売却価格に疑問を持つオーナーさんがよくいらっしゃいますが、そういう会社の多くは、儲かったお金を多額の役員報酬や経費などに使ってしまい、純資産が乏しい会社です。
純資産として貯めておけば、売却時に売却代金としてオーナーさんに戻ってくるはずだったお金を役員報酬などで事前に吸い取っているわけですから、売却時の価値が高くならないのは仕方ないことです。
三戸)「年間営業利益×何年分」という価値のつけ方はしないのでしょうか?
篠田)一部ではそういう価値のつけ方もします。それでも×3年分くらいがマックスでしょう。その方法は、買い手さんが何年で投資回収できるかという視点での価値評価で、買い手さんからすると短いに越したことはありませんから、それほど高くはなりません。
三戸)高く売るためには、利益を自分でどんどん吸い上げてしまうのではなく、ある程度、内部留保を貯めて、ちゃんとした資産に投資をして、純資産を厚くしておかないといけないのですね。
篠田)税金面から見ても、株を売った方が、キャピタルゲインに対しての2割の課税で済みます。役員報酬にかかる税率よりは安くなりますから、役員報酬を多額に取るよりは得になります。
三戸)確かに役員報酬だと半分近くを税金で取られます。事業承継まで見据えた経営をしておくと、自分の実入りまで変わってくるということですね。
高く売れやすい業種業態は?高く売れるタイミングで売るべき?
三戸)思っていたよりも高い金額で売れたという事例もあるのでしょうか?
篠田)最近の例で言うと、業種としては、調剤薬局、人材派遣、ソフトウェア関連の会社が売りに出ると、買いたいと手を挙げる人がたくさん出てきて、コンペ形式で売り値がどんどん上がっていきます。やはり、毎月お金が入ってくるストック型のビジネスは安定していますから、やはり人気があって高くなります。
三戸)買い手が多くつきそうなビジネスだったら、早めに売った方がいいのでしょうか?それとも、準備をしておいて、市況を見ながら判断する方がいいのでしょうか?
篠田)市況といっても、普通の経営者の方が読むのは難しいですから、私は、一度気持ちが売却する方に動いたら、その時に売った方がいいと思っています。
売却の意思決定というのは、経営にも非常に大きな影響があります。オーナーの方々の話を聞いていると、やはり、売るという意思決定を一度した後の経営は、なかなか身が入らないと言います。「投資をしよう、新しい人材を採用しよう」という発想にもなりにくくなって、会社としても、だんだんマイナス方向に縮小していってしまうようです。
三戸)確かに、会社を売ろうかなと思いながら、3年後5年後の設備投資を計画して進めるということにはなりませんね。
篠田)その通りです。会社を売却しようという気持ちが少しでも出てきたら、進めるのか進めないのか、はっきりした方が良いです。もし進めないのなら、売却のことはもう頭の中から消してしまった方がいいくらいです。
社員や取引先は承継後どうなるのか?
三戸)次にお聞きしたいのは、事業承継の際、社員や取引先はどうなるのかという不安です。名南M&Aが関わった案件でその辺りのトラブルはありませんでしたか?
篠田)実は、名南M&Aの初期の頃に、社員を巡るトラブルが起きたケースがありました。その会社では、承継後、賃金規定や就業規則などを一気に変えてしまったのです。具体的に変わったのが出勤時間で、本社と同じ時間にするために30分早くなったのですが、それだけで、従業員が大量に辞めてしまいました。その会社はサービス業で、マンパワーが必要な仕事でしたから、本社から従業員を送りこむといった処置を行いましたが、バタバタと大変になりました。
いまは、そんなトラブルが起きないよう、売り手さん、買い手さんにしっかりと確認しながら進めています。買い手さんに対しては、買収後、親会社となる自分の会社の規定や方針に合わせる作業をしたくとも、それをするのは、一気に変えるハードランディングよりも、3年ぐらいかけるソフトランディングで進めた方がいいとアドバイスしています。
三戸)最近の日本はM&Aがかなり一般化して、M&Aを数件経験しているという買い手も増えてきた印象です。
篠田)おっしゃる通りです。買い手さん側も慣れている人が増えてきたので、どうすれば引き継いだ会社をうまく経営できるのかということも理解されています。ほとんどの買い手さんは、基本的には、社員や取引先、お客様も含め、今ある状態を維持していくことを考えています。
元のオーナーさんに数年くらい社長を継続してもらって、引継ぎは徐々に進めようという買い手さんもいます。無茶なことをする買い手さんは昔ほどはいなくなりました。
取引している金融機関はどう思う?
三戸)会社を売ろうという意思決定をするときに、オーナーの皆さんが気にするのが、銀行との関係でしょう。M&Aの意思決定をした後、実際に売却まで進めば問題はないでしょうが、それが頓挫した場合、銀行側にその情報が洩れてしまうと、貸しはがしとまではいかなくとも、銀行との関係がうまくいかなくなるのではないかという不安です。実態としてはどうなのでしょうか?
篠田)昔はまさにおっしゃっているような感じでしたが、最近は、銀行さん自身が積極的に事業承継問題に取り組んでいます。いまでは、オーナーさんが事業承継を考えていると銀行に伝えると、銀行側は喜んでいろいろなお手伝いをしてくれます。
三戸)いまの銀行は、オーナーさんが事業承継について相談してくれるなら、むしろウェルカムというスタンスなのですか?
篠田)そう思います。オーナーさんが事業承継に関心を持たないまま会社を廃業することになったら、銀行としてはお客様が一社減ってしまうわけですしね。
おわりに
篠田社長、三戸の対談はいかがでしたでしょうか。M&Aや事業承継は、外から見ているだけでは、なかなか実態をつかむの難しいと思います。篠田社長ほど、長きにわたって、数多くのM&A・事業承継案件にかかわってこられた方は、業界内でもほとんどいらっしゃらないのではないでしょうか。
豊富な経験、ネットワークを有する名南M&Aさんは、売り手、買い手どちらの立場で案件のサポートをお願いするとしても、非常に心強いパートナーになると思います。
また、篠田社長は、経営者の方に向けて、事業承継の準備はなるべく早くから行うべきとおっしゃっていました。そういった事業承継の準備や、会社売却を検討されている経営者さまは、ぜひ一度名南M&Aさんに相談してみてください。
記事監修
三戸政和(Maksazu Mito)
2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。