日本創生投資

Column

2021.08.10

スモールM&AにおけるPMI成功のカギ

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  • M&A成功率の低さ、原因はPMIに
  • 36%。これは、デロイトトーマツコンサルティングが発表した「M&A経験企業にみるM&A実態調査(2013年)」にて明らかとなった、M&Aの成功率を表す割合である。

    つまりこの数字は、莫大の資金・時間をかけてM&Aが実行されたにも関わらず、「この会社買収は、高い買い物だった。意味なかった。」で終わってしまった案件が、約6割も存在することを表しており、いかに深刻な問題かがわかる。

    そして、このようにM&Aの成功率が低くなってしまう原因の一つとして、PMI不足が挙げられる。これは、M&A実行段階に関しては(DDとか)、専門家やM&A仲介・FAに任せられる一方で、案件成立後のフローであるPMIに関しては、専門的にやっている会社は少なく、自分たちでやる必要があるため、「どうすれば上手いくのかわからない」と戸惑ってしまうことに起因している。

    そこで今回は、M&A成功には必要不可欠にも関わらず、軽視されがちなPMIについて、数多くのM&A成功経験を持つ、弊社代表取締役、三戸がPMIの方法を紹介していく。

  • PMIとは(成約から成功へ)
  • そもそもPMIとは、Post ・Merger・ Integrationの略で、当初計画したM&A後の統合効果を最大化するための統合プロセスを指す。

    M&A実行中にPMIの重要性を理解し、経営統合後のイメージを持つことを勿論、案件成立後に不十分なPMIでは、想定していたシナジー効果(相乗効果)が得られずに、本来のM&Aの目的である、『双方の企業の相乗効果によって、買収前以上の利益を生み出し企業価値を向上していく』ことが、達成されなくなってしまう。

    しかし、前述したようにPMIを専門的に扱える企業は少なく、ほぼ自力でやる必要がある等、現状として軽視されがちなため、M&A成功率が低くなってしまっている。

  • 理想のPMI
  • PMIのゴールは『将来的に会社の自走を目指す』ところにあると言う。つまり最終的には「買収側の社長は、別に会社に来なくてもいいようにするのがベスト」ということである。

    これは勿論、自ら汗を流し背中をみせるシーンは必要不可欠であるが、常に社長が忙しなく仕事をしていると、社員がその姿を当たり前だと認識し、次なるステップへと進めなくなってしまうからだそうだ。

    ここから、いくつかのフェーズに分けてPMIの実践方法を記述する。

    1.自分の紹介・説明と従業員の気持ちを理解する

    まずは「この人、信用できるな」と思わせ、パワーをかけて従業員と信頼関係を構築していくことである。自分や会社の事を丁寧に説明し、「我々は敵ではない」ことを伝え、心を開いてもらい、「従業員の不満やこれからどうしたいのかを聞きますよ」という姿勢をアピールすることが、ポイントである。

    このアクションを行わないと、ハゲタカ感や怖いビジネスマン感が出てしまい、今後の信頼関係の構築が困難なものとなる。

    故に、最初のフェーズで大事なのはやはり、自分のことを説明することと従業員が現状、会社に対してどう思っているのかを聞くことである。具体的には、従業員の家族がどうだとかそれぞれの生活とか人生の問題みたいなところを聞きながら、心合わせをしていくとよい。

    2.買収企業のビジネスを理解、ビジネスの流れを細かく把握する

    次に、従業員との面談を通じて、今まで以上に被買収企業のビジネス理解を深めつつ、ビジネスのキーポイントや外部取引先を把握することである。

    従業員たちがそれぞれの部署でどういうことをやっているか、引いては会社全体のビジネスの流れを把握するだけでなく、取引先との関係構築も、重要なポイントである。取引先にあいさつをして、「今後どういう方向性でやっていくのか、そしてこれからも取引をお願いします」みたいな話を通じて、信頼されることで、社長が変わったことで取引を切るという可能性をなくす。

    これは取引が切られると、その相手が販売先の場合は売上が落ちていくし、仕入先の場合は仕入れの条件が変わったり、仕入れができなくなったりする上に、代わりの取引先を見つけるのは極めて困難だからである。

    3.会議全体を作る

    次は、特に小さい会社では週次、月次で進捗の管理をする会議体というのがあまりないため、会議体を作ることである。

    会議体では、従業員からのヒアリングを通して把握したビジネスのフローのキーポイントをチェックしていく。しかし、急に週に2、3回会議をするとなると反発が生じるため、既存のペースの延長線上で徐々に増やしていく必要がある。

    従業員の温度感を見ながら、「まずは一回」みたいなところから始めて、自分がファシリテータをちゃんとやりながら、「オーナーも変わったので、みんなが一致団結してこっちの方向を向いて行こう」というふうに会議を進めていくことが重要である。

    4.心合わせが終わってから改革

    ここまで最低でも2、3ヶ月くらい掛けて、従業員との心合わせをしていく。そしてようやく、ここから自分のオリジナルの部分を出していけるようになるフェーズである。

    しかし、自分として新たな目標を加える場合でも、トップダウン方式ではなく、従業員からそういう声が上がってくるようなマネジメントがいい。たとえば生産でいうと、「現状1万個作っているけど将来的には1万5千個を目指したいよね。じゃあどうやっていこうか。」みたいな話を通じて、従業員から、とりあえず「今年度中には1万2千個、生産できるようにしていこう」みたいな発言を引き出す。これは誘導尋問のようにも思えるが、形式上は従業員発信であるために、やらざるを得ないみたいになっていくし、その計画が全員で共有されたものになるため、計画が実行されやすくなる。

    要するに、最初の3ヶ月くらいは、本当に気を使いながら従業員とコミュニケーションをして、従業員からこういう意見が出てくる状態を作るのが目標になる。

    5.ビジネスフローにそってKPIとフロー図を作成

    最後に、この会社で売上を作るために、どういうプロセスがあるかというのを表にして数値化したKPIとフロー図を作ることである。新参者の社長は、前社長や従業員に比べて、そのビジネスの感覚値や定量的な把握ができてない。そこで、ビジネスの作業ごとに全部数値化をすることで、それぞれの数値が目標に対してどのくらい達成しているか、というのを全部追っていく。

    そうやって何がどこでどう問題になっているかを把握できるし、効率化とビジネスの明確性を達成できる。これは、自分のビジネス理解以外にも、KPIやフロー図を作って、それぞれの数値目標が全部100%になっているかを確認し、100%になっていないところはなぜなのかを、従業員と一緒に考える際にも活用できる。

    この資料が完成し、あとはもうこのKPIの数字だけを追っておけば、大きなトラブルにならないし、月次の売上はキープされていくみたいなことになれば、PMIはほぼ終了である。

    <まとめ>

    このようにPMIが、いかに人間関係に深く関わるものであり、重要で難しいものかがわかったであろう。国内案件よりも数倍難易度の高い海外M&Aにおいて、数多く成功させているJTも「任せる経営」を重要視していることから、「従業員に任せる」は、大企業にも通ずるところがあるのであろう。莫大なリソースを割いているM&Aを成功させるために、被買収側の従業員に対して「謙虚さ」を意識していこう。

    また、日本創生投資は、事業成長を目的とした、中小企業によるM&A活性化に貢献すべく、M&Aのコンサルティング/サポート事業も行っています。

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