「出資・融資・投資」の違いとそれぞれのメリット・デメリットとは?

資金調達方法「出資・融資・投資」の違い

お金は、“経済活動の血液”です。お金なくして会社運営はありえません。

「出資・融資・投資」これら3つの行為を能動的に行うことで、会社の血液であるお金がその会社に提供されます。逆に、これら3つを受動的に“していただく”会社から見れば、いずれもによってもお金が調達されることになります。出資・融資・投資はいずれも、会社にとって必要不可欠なお金の調達方法ということです。

自社の今後を考えれば、3つのうちからどの調達方法を選べばメリットも含めた調達額を最大化できるかが、最も気になるところではないでしょうか。調達方法の3つすべてが、一長一短です。それらの最大化が可能な選択肢を考えるために、それぞれのメリットとデメリットについて知る必要性があります。

他方、お金を提供する側にとっても、お金はかけがえのない大切な存在であるはずです。そのお金を提供する気になっていただくには、メリットからデメリットを差し引いても提供側をプラスとする必要があります。

それでは、「出資・融資・投資」とは何なのか、見ていきましょう。

「出資・融資・投資」とは?

(1)出資とは?

「出資する」とは、会社に対して資金提供することで、株主などの投資家が会社の株式を購入することを一般的には指します。出資でお金の提供が行われるのは、その事業が大きくなることを期待してのことです。投資とは共通点が多くほぼ同義、つまり、“出資”≒“投資”とされることも少なくありません。

株式購入以外では、例えば下記①~④へのお金の提供などが出資に当たります。

①信用金庫

②生活協同組合

③持分会社

④ゴルフ場などのレジャー施設

信用金庫から融資してもらうためには、5,000円から10,000円程度の出資金を支払って会員になる必要があります。

生協を利用するにも出資金を支払い、組合へ加入することが必要です。その額は生協によって違いがありますが、500円から1,000円くらいが一般的です。

株式会社以外の会社は、持分会社と呼ばれます。具体的には、合名会社・合資会社・合同会社です。その持分会社へのお金の提供が、出資に当たります。

意外に思われるかも知れませんが、ゴルフ場などのレジャー施設の入会金支払いも、一般的には出資とされます。

これらの出資金額は“出資金”という勘定科目を用い、固定資産に計上されます。複式簿記では、資産を左側の借方に記入します。従って、勘定科目“出資金”とその金額が、借方に記入されます。

ちなみに、株式会社が株式を発行し、株主がそれを購入した場合も出資です。しかし、このときの仕訳に、“出資金”という勘定科目が登場することはありません。株式を購入することで出資を行った側の貸借対照表・借方には、勘定科目“投資有価証券”とその金額。現金購入したのであれば、貸方には勘定科目“現金”とその金額が記入されます。また、株式を発行した側の貸借対照表・借方には“当座預金”、貸方には“資本金”や“資本準備金”などの勘定科目とそれらの金額が記入されます。

(2)融資とは?

銀行などの金融機関や投資家が会社にお金を貸すことにより、その会社に対して資金提供するのが融資です。資金調達する側からすれば、いわゆる借金をしているのです。

社債のように債権を会社が発行し、資金調達する場合も、“融資”ということばが使われます。社債はいわば会社の借用書で、お金を借りるときにその会社が発行します。社債発行時も会社は、「融資していただく」受動的立場にあるのです。

(3)投資とは?

「投資する」のは、株式や投資信託などを購入する投資家などです。上述のように“出資”ということばが使われる場合の多くがこの場合を指すことから、“出資”≒“投資”と考えられることもあるのです。

“投資”ということばを一般的な国語辞典で調べてみると、「事業などへのお金の投下を利益獲得目的で行う」という解説が、いずれの辞書にも書かれています。また、すなわち、出資も融資も利益を獲得する目的で行うという意味では、投資と言えます。

このように、投資という言葉には幅広い意味合いがあります。会社へお金を提供することで、その会社からのリターンを期待するものばかりではないのです。例えば、国債の購入や外貨預金などがその部分に入ります。これらは会社の資金調達方法には相当しないことから、今回の説明ではこの部分に触れておりません。

「出資・融資・投資」による資金調達する側のメリットとデメリット

資金調達の方法として、自社に最もふさわしいのは3つのうちのどれかをここでは考えます。なお、“会社の血液”=“お金”を調達できることがメリットである点は、いずれについても共通しています。

まず、自社株式を購入いただいたときについてです。

(1)出資・投資による資金調達

1)メリット

①資金調達

会社に不可欠な存在のお金を調達できます。

②返済義務なし

会社が破産すると、出資者=投資家(株主)が持ち続けてきた株式の財産価値は“0”となります。そのマイナス分は、出資者=投資家(株主)が負担。資金提供を受けた(資金調達をした)会社側に、返済義務が生じることはありません。

③利息の支払いなし

融資を受けた場合とは異なり、利息を支払う必要がないこともメリットです。

④融資時ほど信用度は問われない

融資による資金調達の場合には、融資審査をクリアできるだけの自社に対する信用力が問われます。他方、出資=投資による資金調達をするためには、会社の将来性の方が問われます。出資者=投資家(株主)が期待するのは、株式の配当金や売却益などの将来獲得できる利益だからです。特に売却益については、株価の上昇のし方次第で、融資の利息よりはるかに大きな利益を期待できます。株券が紙くずになるリスクを承知で出資者=投資家(株主)が投資を行うのは、融資の利息より以上のリターンを期待しているからです。

2)デメリット

①調達できる額は投資家次第

発行する株式の株価は、現状の株価が反映されて決まります。株価が思ったほど上がらなかった場合には、資金調達できた額も思ったほどにならなかったということもありえます。そもそも株式が売れる売れないも、そのときの状況などを考慮した出資者=投資家(株主)の判断次第です。融資限度額までなら自由に資金調達額を選べる融資と比べると、この点では劣ると言っていいでしょう。

②100%の経営コントロールができなくなる

株主の利益を考えない会社の株式取得や保有に、興味を示す投資家はいません。現在その会社の株式を保有していたとしても、「この会社はわれわれ株主の利益を考えない」と判断すれば、すぐに売却することを出資者=投資家(株主)は考えます。同じことを考える出資者=投資家(株主)が増えれば、株価は下落します。

10,000株を発行して1,000円/1株で買ってもらえれば、1億円のお金が調達できるのです。ところが、800円/1株に下落してしまえば、10,000株売れたとしても8,000万円しか調達できません。この株価下落傾向が長引けば、投資家から「この会社は見込みなし」と判断され、「10,000株の発行」という見込みすら根本的に立たなくなってしまいます。

出資=投資による資金調達を考える場合には、出資者=投資家(株主)が理想とする方向性と会社側が進めたい方向性に、ずれが生じないようにしなければなりません。会社側が彼らに合わせなければならない局面が発生することで、経営陣が思うような経営ができなくなる可能性があるのです。

投資による資金調達額を大きくしようと考えすぎるのも禁物です。特定の第三者に、多くの株式を占有される可能性が出て来ます。持ち株の保有比率による権限は、以下のように会社法で定められています(すべてではありません)。

・3%以上→会計帳簿の閲覧請求権・株主総会招集請求権など

・10%以上→会社の解散請求権

・1/3超→株主総会の特別決議(会社の合併や解散など、特別に重大な事項について決議される)を単独で阻止できる

・1/2以上→株主総会の普通決議(取締役や監査役の選任などが決議される)を単独で阻止できる

・1/2超(=過半数)→株主総会の普通決議を単独で成立できる

・2/3以上→株主総会の特別決議を単独で成立できる

過半数や2/3以上を特定の第三者により保有されてしまうと、その第三者により経営が支配されてしまうことが、お分かりいただけるのではないでしょうか。

③配当金が大きくなる可能性

かつては業績には関係なく、安定した配当を行う会社が多かったものです。しかし、会社の業績がよければ配当金を増やし、悪ければ減らす業績連動型配当を行う会社が、近年は増えてきました。そのため会社の業績が上がれば上がるほど、多くの配当金を支払わなければならない可能性が大きくなることも十分にあります。

(2)融資による資金調達

1)メリット

①資金調達

会社に不可欠な存在のお金を調達できます。

②必要な額を調達できる

会社に不可欠な存在のお金を調達できます。しかも、ほかの選択肢よりは、会社が必要とする額に近づけられる可能性が高いです。スタートして間がなく、株主の存在が現状ない中小企業の場合などはこの融資、それも公的融資しか資金調達の手段がないことも多いでしょう。

ただし、必要とする額のすべてを調達できるとは限りません。融資を行う際、金融機関は必ず審査を行います。審査項目は多岐にわたります。その会社の財務内容や業績以外にも、例えば以下のようなものがあります。

・保証人や担保の存在

・社長の個人資産

・事業の成長性

・返済の原資となるもの

・社会情勢

これらのことを勘案した上で融資可能額が設定され、その範囲内であれば調達額(=融資額)を自由にを決めることができます。

③経営に介入されない

融資する側の金融機関や投資家が期待しているのは、元本を回収した上の利息です。株主ほど経営に大きな影響を及ぼしてくることは、よほど経営が悪化しないかぎり基本的にありません。

2)デメリット

①(元本+利息)の支払い

融資を受けるとその後は、元本返済と利息の支払いに迫られることになります。それらを月々支払う契約になっている場合、その月の収益が思うように上がらなかったりすると、支払い資金を調達する必要が出てきます。精神的プレッシャーと、月々戦っていくことになるのです。

融資を受けた場合には利息がどれくらいになるのかが、最も気にかかるところではないでしょうか。政府系金融機関の日本政策金融公庫なら0.3~2%台、銀行でも2%がほとんどとされています。個人事業主や法人を対象とした事業者ローン(ビジネスローン)という金融商品もありますが、その最高金利は10%前後から18%です。

②融資実行までに時間がかかる

金利の低い金融機関ほど、その傾向が大きくなります。これは審査に、それだけ多くの時間をかけているためです。融資金額にもよりますが、契約に1時間程度の時間をかけた後、その場で融資実行することをうたう事業者ローンもあります。これが銀行融資なら、1週間から1か月以上かかります。

③担保や保証人を求められる可能性がある

銀行から融資を受ける場合には、担保や保証人を示す必要に迫られることが、特に創業間もない中小企業の場合には多いです。その求めに即応じられる会社は問題ないのですが、そうでない会社にとっては大きな問題となります。

保証人のいないことが問題となるのは、事業承継が行われる場面でも多いです。経営者の親族が事業を受け継ぐことが、かつては当たり前とされてきました。

しかし、それ以外の従業員や役員、あるいは、まったくの第三者に事業を承継させることがここのところは増えてきました。日本の特に中小企業では、金融機関から事業用資金の融資を受ける際、経営者自身が連帯保証人となっているケースが少なくありません。親族以外の者に事業承継を行うときにこれが障害となり、スムーズに事業承継が進まないことが多いのです。

「出資・融資・投資」を行う側のメリットとデメリット

できるだけ多くのお金を、自社に提供していただきたいとお考えでしょう。大切なお金を提供するからには、お金を提供する側にデメリットを上回る大きさのメリットがあるからにほかなりません。

以下、「出資する」・「融資する」・「投資する」という方法で、お金を提供した場合のメリットとデメリットがどういったものかをはっきりさせます。大切なお金を、自社に提供していただくわけです。メリットだけではなくデメリットも伝えることで、より信用していただけるようになります。デメリットをメリットが上回ることを、丁寧に伝えるのです。

(1)出資する側

1)メリット

①組織を利用できるようになる

信用金庫や生協などへ出資することで、その組織を会員として利用できるようになります。出資することなく、信用金庫や生協などの会員利用はできません。

②経営への関与を大きくできる

持分会社への出資で、その会社の意志決定に加わることができるようになります。また、お金がなくても、現物出資で持分会社の発起人となり、会社経営を始めることができます。

それ以外にも、株式会社への出資とは異なる持分会社への出資には、より大きなメリットがもたらされる場合もあります。出資価額の割合に応じた利益配分が行われるのが、原則である点については株式会社と同じです。

しかし、会社への貢献度が大きい出資者への利益配分を、出資比率以上に設定することも持分会社なら定款次第です。この点に魅力を感じ、持分会社への出資を行う人もいるのです。

③お金がなくても行える

持分会社への出資は、現金により行われるのが通常です。ところが、2006年5月1日に施行された会社法により、最低資本金規制特例制度は廃止されました。これにより資本金が1円以上あれば、誰でも会社を設立することが可能となったのです。会社設立時(発起人のみ)や増資を行うときに、不動産や車などを現物出資することも今では認められています。

④融資にはない魅力がある

事業が今より以上に大きくなることで得られる配当金(インカムゲイン)株式の売却益(キャピタルゲイン)株主優待などを期待して行うのが、株式投資(=出資)です。そのため融資の際には必ず必要な担保や保証人の存在など、会社の今の信用性にそれほど敏感にならなくて済みます。

また、インカムゲインやキャピタルゲインを合計すると、融資の利息をはるかに超える額となる可能性も秘めています。

⑤経営への関与

株主総会に参加し、議決権行使という形で経営に関与できます。

2)デメリット

①出資金や投資金が戻って来ない可能性がある

出資先や投資先が破綻し、出資金や投資金を回収できなくなる可能性があります。

②売買できないこともある

上場していない会社の株式に関しては、すぐに現金化できるわけではありません。買い手側が現れた時に初めて、現金化することができます。

③為替差損の可能性 出資・投資する側が保有した株式が外国株式に当たる場合には、そのときの為替相場の状況によっては為替差損が生じる場合もあります。

(2)融資する側

1)メリット

①融資先を吟味できる

融資したお金が不良債権となる可能性を小さくすべく、審査を厳しくできます。

2)デメリット

①社会的イメージ

貸金業へのよくないイメージが、いまだ一部には残っています。

(3)投資する側

1)メリット

“出資する側”の1)メリット④・⑤と同じです。

2)デメリット

“出資する側”の2)デメリット①~③と重複します。

以上のメリットとデメリットを、出資や融資をしていただく側に包み隠さず伝えることが重要です。そうすることで信頼関係をつくります。そして、交渉の最後に次の“6.”のポイントを意識的に行うようにしましょう。

“出資・融資・投資”をする気になっていただくためのコツ

(1)出資や投資による資金提供を受ける場合

自社の成長性に期待が持てることを分かりやすく説明します。具体的には、今後脚光を浴びそうな技術やノウハウを有していることなどです。

(2)融資による資金提供を受ける場合

融資金額と利息を確実に支払っていけるだけの経営の堅調性・安定性があることを、訴えるのが効果的です。安定経営を継続する取引先や、将来間違いなく達成可能な売上の理論的根拠を伝えることができた上に、身元がしっかりとした保証人も立てることができれば理想的です。収益性など財務内容に不安があるときには、それらを改善後に融資の話を切り出すのがいいでしょう。

まとめ

以上のように、「出資・融資」違い、そしてメリット・デメリットについて説明しましたが、いかがだったでしょうか?

会社を立ち上げるときやM&Aを行うとき、必ず資金調達しなければいけない場面が訪れます。そのときに出資してもらうべきなのか、融資してもらうべきなのかを考えるために、それぞれの違いやメリット・デメリットを理解する必要があります。資金を提供される側だけでなく、資金を提供する側のメリット・デメリットを理解することが重要です。

お悩みの際是非、下記のリンクより、お気軽にご相談ください。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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