スモールM&Aにおける簿外債務とは?

スモールM&Aで簿外債務は怖くない

M&Aのリスクというと、多くの人が指摘したり心配したりするのが「簿外債務」です。「素人が会社なんて買ったら、簿外債務が出てきて借金まみれになる」「ボガイが危険だ」などとよく言われますが、それに対する私の答えは、「簿外債務はそれほど大きな問題にはなりませんよ」というものです。

簿外債務とは、帳簿に載っていない、帳簿外の負債です。帳簿に載っている負債は把握できますが、隠されていたりして、買収時にはわからなかった負債が、後に発覚して、想定以上の負担を強いられるというのが、簿外債務の問題です。

たしかにデューデリジェンスでも見つけられなかったり、専門家でも見抜けなかったりする債務が出てくるケースがないとは言えません。それでも私が簿外債務は大きな問題にならないというのは、スモールM&Aに限ってのことです。

関連用語→デューデリジェンスとは?

M&Aでは、騙そうと近付いてくる人もいますから、私たちファンドでは、M&Aの際には必ず会計士を入れて、簿外債務が隠されていないかをしっかりとチェックしますし、契約条件でもリスクヘッジをすることは当然、行っています。

しかし、スモールM&Aでは、買う対象となるのは従業員数人程度の小さな会社です。そういう会社では、簿外債務のありかはたいてい想定できますから、デューデリでのチェックはそれほど難しくありません。

なにより、スモールM&Aは、買い手と売り手が心と心を通わせて行うものです。騙し騙されるというイメージではありません。

スモールM&Aにおける信頼関係の重要性

もし、相手側に信用が置けないとか、「なんか嘘をついてそうだな」と思ったら、そのM&Aは進めてはいけません。人と付き合うのと同じで、スモールM&Aは、「この人とはやれる」「この人なら信頼できる」という感覚で進めるものであり、売り手と買い手の二人三脚です。お互いの信頼関係なくしては成立しません。

ですから、簿外債務は問題にはならないのです。売り手と買い手の双方が心を通わせて進めたM&Aで、買収後に、簿外債務がボコボコ出てくるなんてありえないと思いませんか。

もしスモールM&Aでそんなことがあるとしたら、そのM&Aは、相手としっかりコミュニケーションを取らず、不十分な形で進めてしまったものではないでしょうか。スモールM&Aは結婚と同じです。しっかり相手と向き合い、相手のことを理解した上でないと進めてはいけないのです。

スモールM&Aでは簿外債務を恐れる必要がないという理由はもうひとつあります。次のコラムで説明しましょう。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。



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