ビジネスデューデリジェンス とは?目的や手順とともに重要なポイントについて解説!

ビジネスデューデリジェンス とは?目的について解説

デューデリジェンス とは、M&Aを実行していくにあたって、その会社の実態を把握するために行うプロセスです。

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特にスモールM&Aにおいては、ビジネスデューデリジェンス財務デューデリジェンス法務デューデリジェンス の3つのデューデリジェンス が必要となります。

今回は、この3つのデューデリジェンス の中でも、ビジネスデューデリジェンスについて解説していこうと思います。

ビジネスデューデリジェンス の目的は、その会社のビジネスを理解するとともに、そのリスクを把握することです。作業としては、財務書類や取引のデータに当たったり、オーナーや担当者にヒアリングしたりします。

リスクを見つけたら、それをヘッジする方法を考えるのもデューデリジェンス の役割です。リスクヘッジは、買収価格を下げるなど価格面でヘッジすることが多いですが、それ以外の方法があればそれも検討します。

ビジネスデューデリジェンスはどのような流れで行うのでしょうか?

ビジネスデューデリジェンス の流れについて解説!

ビジネスデューデリジェンスは、その会社のビジネスを理解し、リスクを把握するということを説明しました。しかし、どのような流れで、リスクを見つけていくのでしょうか?

その流れが以下の図のようになります。各項目において、どのようなリスク判断を行い、どのような検証をするのかについてまとめられています。

このような流れで、ビジネスデューデリジェンスを行うのですが、この表だけでは理解するのが難しいと思うので、次の章にて具体的に説明していこうと思います。

ビジネスデューデリジェンス の具体的な業務内容について投資ファンド目線で解説!

それでは、ビジネスデューデリジェンス のやり方をひとつひとつ見ていきます。

見ていくポイントをまとめると以下のようになります。

1.市場動向と競争環境

2.研究開発

3.仕入れ

4.生産

5.新規営業

6.既存取引先

7.関係会社

8.組織

9.経営管理

かなり多くの項目がありますが、それだけビジネスデューデリジェンスは重要で、様々なリスクを把握する必要があります。

1.市場動向と競争環境

このデューデリジェンス でのチェック項目は、その市場には何社くらいのプレイヤーがいて、どんな競争環境にあるのか、規制や許認可の動向はどうなっているか、参入障壁はあるか、需要の変動はないか、市場の成長性はどうか、などがあげられます。

方法はオーナーからのヒアリングがベースとなります。帝国データバンク(1)などの調査会社のデータ閲覧やインターネット検索も必要な作業です。可能であれば市場関係者からも話を聞きましょう。

中でも、規制や許認可についてのチェックは重要です。中小企業の経営では、規制や許認可は大きな変動要因です。たとえば、介護サービスの会社なら、介護保険サービスの点数が変更される度に、売上は大きく変わります。

その会社のビジネスにはどんな規制があるか、規制が変更される可能性はないか監督官庁の動きはどうか、をしっかりチェックしましょう。

2.開発

まずは、「研究開発」についてのデューデリジェンス です。開発が特定の人に依存していないか競合する新しい技術がないか、特許の取得状況はどうなっているか、などがチェック項目になります。

商品の開発設計や、ある技術の研究開発をひとりに依存している場合、その人がいなくなったら、会社の商品が作れなくなるリスクがあります。

このケースのリスクヘッジとしては、その人が辞めないよう慰留したり、ほかの人に技術を継承したりする方法があります。これらの方法を、それぞれどのくらい費用や時間がかかるのかを検討、比較し、どれを採用するべきかを決めます。

技術継承の方法なら、そもそもそれが可能なのか、技術継承を受ける人材はいるのか、新たに人を雇うべきか、などを時間とコストを含めて検討します。そこで大きな費用がかかるなら、買収価格にも反映させます。

このように研究開発のデューデリジェンス をしていく中で、リスクを見つけたときそのリスクはもしかしたら、伸び代と捉えられるかもしれません。例えば、研究開発の環境が乏しかった場合、その環境を整備することでどのくらい開発力の強化を見込めそうか、オーナーや担当者にヒアリングしてチェックすると良いでしょう。

伸び代は、実際にやってみないとわかりませんので、基本的にはアップサイド要因として考慮することになります。実現の可能性が高い場合は、事業計画に取り込み、買収価格まで反映させると、ほかの買い手より有利な条件を提示できるかもしれません。

3.仕入れ

「仕入れ」についてのデューデリジェンス では、どんなものをいくらで仕入れているか仕入れ先はどこか仕入れ先との関係はどうか支払い条件はどうなっているか、などがチェック項目になります。

とくに、仕入れ価格と支払い条件についてはしっかり見ましょう。仕入れ価格と支払い条件はいずれも、改善の可能性が高い部分だからです。

中小企業では、仕入れ先と価格の交渉をしていないケースが珍しくありません。ヒアリングをして、価格交渉をしていないことがわかれば、仕入れ価格を下げられる可能性があることになります。

支払い条件はその会社の信用力を測る目安です。その会社が、約束手形で支払いできる会社なら信用力のある会社になりますし、支払い条件が厳しいなら信用力のない会社になります。

もし支払い条件が厳しい場合、リスクではありますが、逆に、改善ポイントとも考えられます。たとえば、支払い条件が長年現金払いだったということなら、交渉をすれば、支払いを翌月払いにできるかもしれません。資金繰りに1ヶ月分の余裕が生まれるということは、資金繰りにとっては大きな改善になります。

仕入先との関係、仕入れ先の経営状況のチェックも大切です。仕入れ先との関係が悪くなって関係が切れたり、仕入れ先が倒産したりすれば、一気に仕入れ先に困ることになり、大きなリスクになるからです。

4.生産

「生産」のデューデリジェンス では、商品の生産価格と商品供給の安定性についてチェックすることが重要です。

生産価格については、それが変わる可能性がないか、チェックしましょう。生産を外注している場合、仕入れと同様に、価格交渉をしていないとわかれば、生産価格を下げられる可能性がでてきます。

逆に、外注先から長年値上げを求められているということがわかれば、いずれはそれを受けざるを得なくなる可能性が高いので、生産価格が上がるリスクがあることになります。

商品の供給については、安定した商品供給が可能かをチェックしましょう。外注している場合は、外注先との関係、その会社の経営状態についても確認しましょう。代わりの会社があるかについてもチェックが必要です。

自分の会社で生産している場合は生産体制をチェックしましょう。安定供給に問題はないか、生産設備は十分稼働しているか、設備にムダはないか、経費削減をして生産価格を下げられる可能性はないか、改善できる点はないか、などを見ていきます。

とくに、地方では人材不足が慢性化しており、社員の高齢化も進んでいます。生産するための人材が確保できるかも重要なチェック項目です。最近は人材不足を補うため、外国人実習生や特定技能外国人に頼る企業もあります。彼らの中には数年で帰国する条件の人も多く、労務管理が複雑になることもあります。入国管理の規制動向によっては、安定的に労働力を確保できない可能性もでてきます。

5.新規営業

新規営業の部分のデューデリジェンス では、新規の顧客を集めるために、どのくらいのコストをかけてどんな営業をしているかをチェックしましょう。潜在顧客がどのくらいいるかについても確認します。

新規営業は、みなさんが入ることで改善できる一番のポイントです。中小企業では営業担当の部署はもちろん、営業担当者さえいないところが珍しくありません。それでも儲けが出ていたわけですから、そこに、みなさんが入って営業力を強化すれば、売上を上げられる可能性は高いのです。

6.既存取引先の営業

既存の取引先の営業のデューデリジェンス では、取引の継続性のチェックが重要になります。既存取引先との取引が、今後も継続するのか、取引条件はどうなっていくか、を確認しましょう。もし継続に疑問符がつくということになれば、売上が下がるリスクになります。既存取引先で売上の多いところについてはしっかり確認しましょう。

既存取引先では、リベートが発注の条件になっていることがあります。リベートを払っていないかについても確認しておきましょう。

とくに気をつけるべきなのは、売上が1社や2社に依存している会社です。その場合は、「サイドヒアリング」といいますが、取引先にもヒアリングをした方がいいでしょう。

サイドヒアリングは、売り手オーナーにとっては、会社を売るという情報が漏れるリスクがあるので嫌がられます。しかし買い手としては、1社2社依存というのは相当なリスクになるので、サイドヒアリングの実施は譲れないところです。

サイドヒアリングの際は、営業代理店やコンサルタントなどの肩書きを使って、M&Aの買い手だとバレないよう細心の注意を払いましょう。その上で、取引先の今後の売上計画などを聞いて、いまの取引や取引条件が継続するのかを確認しましょう。

仕入れなどでもそうでしたが、中小企業では価格の交渉をしていないところが多いです。もし、取引価格が長年変わっていないなら、値上げができる可能性が出てきます。同業他社へ営業して単価水準を確認し、それを材料に既存取引先と交渉すれば、単価を上げられるかもしれません。もしそれで単価が上がらなければ、取引先を変えるという判断もできます。

7.関係会社

ビジネスデューデリジェンスでは、「関係会社」についても見る必要があります。

その会社に、子会社などの関係会社があれば、そことの関係や取引についてチェックしましょう。中には、子会社と循環取引をしていて、全体としては売上になっていなかったというケースもあります。どんな取引をしているのかをヒアリングして、気になる点については細分化して見てみましょう。

また、子会社や関係会社との関係が切れても、会社の経営に影響はないか、追加でコストがかからないかも確認する必要があります。

たとえば、その会社と子会社の両方の事務をひとりが担当している場合、その担当者が子会社に残るのなら、こちらとしては新たな担当者を雇う必要が出てきます。また買収対象とならないグループ会社から、商品を安く仕入れているとしたら、グループから抜けた際、単価アップを求められるかもしれません。そうなると、利益に影響しますし、単価据え置きを約束していても、将来的には不確実性が残ります。これらは、買収価格に反映させるか、検討する必要があります。

8.組織

「会社組織」のデューデリジェンスでは人材の流出が一番のチェック項目になります。会社を買ったはいいが、従業員が全員辞めてしまった、なんて目も当てられない話もあります。

主要幹部やキーパーソンの辞める可能性について、必要なら面談をして確認しましょう。もし辞めそうであれば、その人が辞めても事業価値が下がらないか、代わりにその業務をこなせる人はいるか、新しく人を雇えばその代わりは務まるのか、を検討しなくてはなりません。

ただ、人員というのは、90%以上は代替が利くものです。中小企業経営は、創業者の属人的なノウハウに依存していると考える人も多いですが、創業者がいなくなっても、それはそれで経営は回ります。

給与水準のチェックも必要です。中小企業では、利益は出ているのに、従業員の給料が相場より低いことがあります。そんな状態なら従業員には不満がたまっているはずで、オーナーチェンジを機に、給料アップを要求してくるかもしれません。いずれ給料を上げざるを得ないのなら、経営コストが上がる可能性が高いことになります。

給与水準は給与台帳を当たって調べましょう。給与水準は地域ごとにも変わるので、人材採用のエージェントから、その地域の給与水準の情報を得て、比較することも大事です。

たとえば、給与水準が相場より10%低いとわかれば、事業計画では、人件費を10%上乗せして考えることになります。そうすることで、正常なコストや利益水準に近い数字で検討することができます。

組織の能力についても確認します。主には、資格や許認可についてのチェックになります。

中小企業では、本来は必要な許認可やライセンスを、ごまかしてやっているところがあります。たとえば、宅地建物取引士の資格がないのに不動産ビジネスをしていたり、二級建築士しかいないのに、その業務範囲を超える仕事をしていたり、ということです。

9.経営管理

「経営管理」についてのデューデリジェンスでは、法令違反や粉飾など、経営管理に関わるリスクについてチェックします。

中小企業の経営管理は甘くなりがちです。コンプライアンス違反についても、そもそもそれが問題だとは知らなかった、ということがよくあります。

とくに多いのが、未払い賃金の問題です。働き方改革の流れで、最近は、残業代やみなし残業代が厳しく見られるようになっています。

管理監督者の問題もよく指摘されます。これは、課長以上などのいわゆる管理職は、管理監督者という位置づけになるため、残業代は不要というルールを悪用して、実際にはその権限がないのに、従業員に管理職の肩書きだけを与えて残業代を払わない、という問題です。

経理を任せていた人が、会社の資金を私的に流用し、帳簿ではそれをごまかしていた、ということもあります。こうした問題について、ひと通り見ておく必要があります。

粉飾については、中小企業で粉飾をしているとしたら、ほとんどが売掛金と買掛金、在庫のところです。それらの数字を細分化して、一次証憑まで見たり、現物の在庫を確認したりすれば、たいていの粉飾は見抜くことができるでしょう。目で確認することがポイントですから、倉庫などの現場にも厭わずに行って確認しましょう。

以上がビジネスデューデリジェンスの具体的な業務内容となります。それぞれの項目において重要なポイントがあるので、細かくチェックすることが大切です。

まとめ

今回の記事では、ビジネスデューデリジェンス の流れと具体的に何をすべきなのかについて説明しました。ビジネスデューデリジェンスは、その会社のビジネスを理解するということで、様々な視点からその会社について見ていく必要があります。だからこそ、ひとつ一つの項目を以上のような観点で「細かく」見ていくことが重要となります。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

脚注

(1)帝国データバンク:https://www.tdb.co.jp/index.html


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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