元サラリーマンが会社を経営できるのか

これは、「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」をサイトverでより詳しく解説したコラム(全コラム無料)の第7話/全17話になります。字数や語彙などをはじめ、サラリーマンや学生が通勤時間などといった片手間に読みやすい形にしているので、ぜひお気軽にご覧ください。

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7-1 現実的な回答

サラリーマンが会社を買って経営していけるのか――。

サラリーマンをやっていた個人に大事な会社を譲って大丈夫なのか――。

これは会社を買う方、売る方、双方が当然に持つ疑問でしょう。

結論から言います。人に依ります。

私の立場では、こうした疑問には「大丈夫だ」と言い切るのが正解なのかもしれませんが、やはり会社経営に向いている人、向いていない人はいます。会社経営をするために十分な経験を積んだ人、積んでいない人もいます。経験はなくとも経営者としての素質を持つ人もいます。やはり、人に依るのです。

では、売り手としてはどう買い手を見極めればいいでしょうか。そして買い手は、自分が経営に向いているか、どう判断したらいいでしょうか。

7-2 適否はM&Aの過程で見極められる

M&Aで会社を売買することは、店頭に並ぶ商品を買ったり、ネットショッピングでポチったりといった簡単な手続きで終わるものではありません。売買交渉には非常に時間が掛かります。

その間、買い手、売り手の双方は、コミュニケーションを重ね、さまざまな資料をやり取りします。現場も精査し、交渉は数か月から1年ほどにも渡るでしょう。交渉がうまくまとまるには、胸襟を開いたやり取りをして、お互いが相手のことを理解することがカギになります。

そうした交渉の中で、売り手は買い手が信頼できる人かどうか、自分に代わって経営者としてやっていけるのかを見極めることができます。買い手自身も、その時間で、自分が経営者としてその会社を引き継げるか、判断できるでしょう。

そうした経緯を経て、会社は売買されますから、売り手は信頼に足る人、会社を任せうる人に会社を売ることができますし、買い手は経営に自信が持てたら会社を買うことになります。個人に会社は売れないとか、サラリーマンには会社は経営できないとか、最初から決めつける必要はないのです。

個人でも経営者に向いている人は多くいます。他方、法人であっても、そこに会社を譲ってうまくいくかは、その“中の人”である“個人”に掛かっているともいえます。

7-3 実はすごいサラリーマン

会社経営に向くか向かないかは人に依るとはいえ、私は、サラリーマンというのは、おしなべて「実はすごい人たち」であると捉えています。元サラリーマンであることは、経営者として有利に働くことが多いはずです。そう考えているからこそ私は、「サラリーマンよ、会社を買いなさい」と呼び掛けているのです。

会社というのは常に、内でも外でも競争にさらされています。大企業であればよりその競争環境は激しいでしょう。企業としても、サラリーマンとしても、その競争に勝ち抜き、生き残っていくためには、いまのビジネスシーンに最適化されたビジネスモデル、マネジメントシステムやスキルを持ち合わせていなければなりません。

企業は他社に後れを取らないよう、国内外、さまざまなところから情報を得て、マネジメントシステムやスキルの向上を図り、それを社員におろすため、システムを改善したり、情報提供を行ったりしています。サラリーマン側はオンジョブトレーニングや研修で、そんな高度に洗練されたマネジメントシステムやスキルを身に付け、日々、使いこなしています。

新卒から20年以上、そうやって経験を積み重ねてきたのが40代後半以上のサラリーマンです。もちろんこれも、それぞれの人、職場環境に依りますが、一定の規模以上の会社のサラリーマンであれば、彼らの持つスキルはかなり洗練されているといえるでしょう。

ひとつ実例を紹介します。私が主催するオンラインサロンのメンバーで、大手重工業メーカーを脱サラし、石川県にある町工場を買って、経営者になった人がいます。彼は引き継ぎ後、すぐに製造現場の改革に着手しました。もともと生産管理の専門家でしたから、元のメーカーで身に付けたやり方を生かして、生産工程をまさに秒単位で見直して、生産効率を上げるべく現場を改革しています。

ベテランのサラリーマンにはこういう人がたくさんいます。ですから、売り手の中小企業のオーナーの方々は、会社の引き継ぎ先として、個人を最初から排除しないでほしいのです。私のサロンメンバーの引継ぎ事例は、ほかの記事でまた詳しくご紹介します。

(1914字)

続いてのコラムは、私が「会社を買おう」と呼び掛ける一方、「起業」をおすすめしていない理由について、お話しします。

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記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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