経営者は儲かる

これは、「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」をサイトverでより詳しく解説したコラム(全コラム無料)の第4話/全17話になります。字数や語彙などをはじめ、サラリーマンや学生が通勤時間などといった片手間に読みやすい形にしているので、ぜひお気軽にご覧ください。

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4-1 中小企業の経営者は儲かる

なぜサラリーマンは会社を買うべきなのでしょうか――。

もうひとつの理由は、サラリーマンより中小企業の経営者の方が、はるかに儲かるからです。

労務行政研究所の2017年のデータによると、中小企業のオーナーの年間の平均報酬は3235万円です。一方、国税庁の発表した2019年のサラリーマンの平均給与は441万円です。

大企業に勤めるホワイトカラーと、町工場の経営者を比べると、一見、前者の方が華やかな人生を送れるように思うかもしれませんが、町工場の経営者は、サラリーマンの2億円と言われる生涯報酬を10年足らずで稼いでしまうのです。

なぜそんなことになるかというと、資本主義という経済システムが、資本家に有利なようにできているからです。中小企業の経営者の多くは、その会社の株を持つオーナー経営者、つまり資本家です。資本主義社会ではどのくらい資本家が有利なのかを説明するために、ソフトバンクの孫正義さんの収入について、紐解いてみましょう。

4-2 豊かな暮らしをするための合理的な方法

孫さんはソフトバンクグループの経営のタクトを振るう経営者であるとともに、グループ企業のさまざまな株を持つオーナーです。経営者としては、会社に雇われて給料をもらっていますから、会社のトップではありますが、立場としてはサラリーマンと変わりません。一方、株のオーナーとしては、会社の所有者、いわゆる資本家の立場です。

経営者としての孫さんは、年間1億3千万円ほどの給料を会社からもらっています。雇われる立場としてはトップレベルの報酬でしょう。それだけを聞くと多いように思います。しかし、資本家としての孫さんが得ている報酬は桁が違います。その資産額は2兆円に上り、そこから得る年間の配当は100億円です(ちょっと前のデータです。先日発表された孫さんの総資産額は4.8兆円でした)。

日産の元社長のカルロス・ゴーンさんがもらい過ぎと言われるからと隠そうとした報酬が20億円くらいでしたが、資本家としての孫さんには大きく及びません。資本主義というシステムでは、そのくらい、資本家(=雇う側)とサラリーマン(=雇われる側)の得られるお金の格差が大きいのです。つまり、資本主義社会で豊かな生活をしたいと考えるなら、資本家になるのがもっとも合理的な方法なのです。

4-3 サラリーマンには合成の誤謬がある

そもそも、サラリーマンとして出世して生きていこうとしても、そこには合成の誤謬があり、合理的な選択とはなりづらいのです。どういうことか、説明しましょう。

サラリーマンそれぞれが、出世競争を勝ち抜こうという姿勢は正しく見えます。でも、みんなで競い合って、出世ポストに座れたとしても、収入で比べると、実はたいした差はついていません。そもそも出世競争のゴールである社長になったとしても、その収入を資本家と比べてしまうと、大きく見劣りします。サラリーマンの行動はミクロレベルでは正しくとも、マクロレベルでは正しくない。それが合成の誤謬というわけです。

もう少し詳しく説明しましょう。マッキンゼーといった有名コンサルティング会社のコンサルタントの時給は8万円です。専門性を磨いた行き着くトップがそこです。アルバイトの時給が800円くらいですから、100倍の差となります。

時給8万円レベルの、専門性が高く、時給も高いトップオブトップは、サラリーマンのうち1%くらいだと思いますが、そういう人を目指そうというのが、教育の専門家、藤原和博さんの言っていることです。真っ当な意見だとは思いますが、専門性の高いキャリアを築いて、希少性のある人になるには、多大な努力と能力が必要です。

それに、藤原さんの言っていることは、足し算の世界です。時給を上げても、結局足し算ですから、いくら頑張っても資本家には及びません。資本家が生きるのは掛け算の世界です。掛け算の世界では、収入は指数換算で増えていきます。

サラリーマンとして出世競争に挑んでも、結局、どんぐりの背比べでしかありません。サラリーマンでいる限り、合成の誤謬を避けることは出来ないのです。そんなサラリーマンの現状に甘んじるのではなく、会社を買って、時給換算という足し算の世界から離脱して、資本家の掛け算の世界で生きようというのが、私からの呼び掛けです。サラリーマンではない、別の戦い方をした方が、この社会では豊かな生き方に近づけるのです。

4-4 なぜサラリーマンになることを選んだのか

しかし多くの人が、資本家になることを、自分とは縁遠い話と考えています。

なぜでしょうか。それはいま、サラリーマンであるほとんどの人が、資本主義の仕組みを学ばないまま、学校を卒業したら会社に就職するのが普通のことだと思い、組織に雇われる人生を、“なんとなく”選んだからではないでしょうか。

中小企業の経営者になった方が経済合理性は高いのに、それを知らずに多くの人がサラリーマンという生き方を選んでしまっている。それが現状なのです。

サラリーマンをめぐる問題点はそれだけにとどまりません。

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次のコラム(第5弾)では、サラリーマンというビジネスモデル自体が危ういというお話をしましょう。

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記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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