個人がM&Aをする時代が来た 

これは、「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい」をサイトverでより詳しく解説したコラム(全コラム無料)の第2話/全17話になります。字数や語彙などをはじめ、サラリーマンや学生が通勤時間などといった片手間に読みやすい形にしているので、ぜひお気軽にご覧ください。

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2-1 中小企業M&Aが浸透しない理由

かつて、M&Aの担い手といえば“法人”でした。「会社が会社を買う」ことがイコール「M&A」であり、M&A市場に“個人”が入り込む隙間はありませんでした。

法人が主役のM&A市場では、取引される会社はある程度の規模以上の会社に限られます。なぜかというと、M&Aには非常に手間が掛かるからです。

M&Aで、ある程度の規模以上の会社と合併するとなれば、手間が掛かったとしても大きなプラスが得られますから、M&Aを進めようと考えます。しかし売上が小さな会社であればあるほど、煩雑な手間を掛けてまでその会社を買おうという動機は乏しくなります。ですから、中小企業のM&A市場、承継市場はなかなか立ち上がらなかったのです。

中小企業オーナーの高齢化、後継者不足、事業承継の必要性は2000年代からささやかれていましたが、国も民間も本腰を入れて対応することはありませんでした。しかし、2010年代中盤、国や民間の信用情報機関による調査で、このまま行くと100万社を超える中小企業が失われる可能性のあることが明らかになりました。

日本経済の基盤は中小企業です。その担い手が高齢化し、引き継ぎ手もいないことで、どんどん廃業を余儀なくされていけば、日本経済は基盤から崩れてしまいます。このままでは日本経済に大打撃になると危機感が広がったのです。

そして中小企業オーナーの高齢化、後継者不足問題は、「大廃業時代」と呼ばれるようになり、解決すべき社会問題と認識されるようになりました。

2-2 今こそ個人M&Aが必要だ!

そんな中で、大廃業時代解決のために、中小企業の引き継ぎ手として、サラリーマンという個人がいるじゃないか――。そう呼び掛けたのが、4年前の私の連載でした。

以来、状況は大きく変化しました。中小企業のM&A市場が動き始め、中小企業のM&Aをターゲットとする企業やファンドも現れました。同時に、M&Aの担い手として、個人の存在感が大きく高まってきているのです。

中小企業の承継支援をするため、全国の都道府県には事業引継ぎセンターが置かれています。3年前では個人が事業引継ぎセンターに行っても、ほぼ門前払いに近い扱いを受けました。それがいまでは、センター側が積極的に個人を受け入れるようになっています。日本政策金融公庫の事業承継マッチングサービスでも個人の買い手登録が歓迎されています。大きな企業がなかなか扱えない中小企業の買い手として、個人にスポットが当たり始めているのです。

もちろん、大廃業時代を解決するには現状ではまだまだですが、近く失われる恐れのある中小企業を引き継ごうという動きはたしかなものとなっています。新型コロナウィルスのパンデミックという偶発的な問題も起き、中小企業のM&A、事業承継の動きはますます加速するでしょう。

2-3 個人M&Aが広がる社会

長年、社会経験を積んだサラリーマンには、中小企業を引き継いで経営していく能力が十分にあると私は考えています。いまサラリーマンである個人がどんどん承継市場に乗り出し、引き継がれるべき中小企業を引き継いでいくと、どんな社会が訪れるでしょうか。

大廃業時代はいずれ解決されるでしょう。社会には、サラリーマンである個人から、会社経営者、さらには「資本家」として生きる人が増えていくはずです。そして彼らが年を取ったとき、彼らは会社の売買経験者ですから、素直に別のだれかに会社を引き継ぐ選択をするでしょう。このようにして、個人が会社を売買して引き継いでいくサイクルが回り、私の目指す「個人が会社を買うことが普通である社会」が実現していくのです。

私は、現代においては、サラリーマンを続けるよりも、個人M&Aをした方が、より良い人生を送れる可能性が高いと考えています。

(1897字)

次のコラム(第3弾)では、私がそう考える理由を、時代背景とともに読み解いていきましょう。

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記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。


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