会社の値段を決めるEBITDAとは?

会社の値段はどうやって決まるのか?

デューデリを終えて、事業計画を作って、KPIも設定して、スキームも選択しました。いよいよ最終的な会社の値段を確定させる作業です。

会社の値段を付ける方法としては、以前のコラムで、「純資産+営業利益3~5年分」という年倍法と、「EBITDAマルチプル」という方法について説明しました。ここで改めて、EBITDAマルチプルの手法について詳しく説明したいと思います。

事業価値からマルチプルを導く

以前のコラムでは、EBITDAマルチプルの手法とは、

EBITDA×倍率(マルチプル)=会社の値段

という式で表すことができ、マルチプルは、「買収対象の会社の業種や業態の相場を調べて決める」と、とてもシンプルに説明しました。このマルチプルの決め方について、もう少し詳しく説明しましょう。

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EBITDAマルチプルは、その会社の持つ事業価値から導くことができます。事業価値とEBITDAマルチプルの関係を式で表すと、

事業価値÷EBITDA=EBITDAマルチプル

となります。「買収対象の会社の業種や業態の相場を調べる」とは、正確に言うと、買収対象の会社と似た会社のデータを集め、それぞれの事業価値やEBITDAから計算をして、マルチプルを出して比べるという作業になります。

「純資産+営業利益3~5年分」の年倍法は、純資産(=株主価値)から会社の値段にアプローチする方法でした。EBITDAマルチプルは、純資産からではなく、事業価値から会社の値段にアプローチする手法です。

事業価値の求め方は?

その会社が持っている事業価値は、バリュエーションという方法を使って算出します。バリュエーションには3つのアプローチがあります。

1つ目が収益基準(インカムアプローチ)です。インカムアプローチでは、その事業が将来どのくらいの儲けを出すかを計算して、その事業の価値を導く方法です。

2つ目が市場基準(マーケットアプローチ)で、その事業を売却するとしたら、市場でいくらで売れるかを調べて算定する方法です。

3つ目が原価基準(コストアプローチ)で、その事業をまたゼロから作り直すとすると、どのくらいのコストがかかるかというアプローチから算定する方法です。

この3つのアプローチで、その会社の持つ事業の価値を導き出します。事業価値が出れば、それをEBITDAで割ればマルチプルが出て、会社の値段を求めることができます。

ちなみに、事業価値に、その会社が持つ事業に関わらない部分の資産価値(一番分かりやすいのが現金です。中小企業は意外にも、余剰現金を持っていることが少なくありません)を加えると、企業全体の価値(EV)になります。

さらに言えば、EVから借金などの負債の額を引いて、デットライクアイテムという将来的に支出する可能性の高いものを差し引くと、株主価値になります。デットライクアイテムとは、未払賃金や退職金、訴訟による費用、店からの退去などの資産除去の費用、などが当たります。

事業価値を出すには3つのバリュエーションについて、次のコラムで、もう少し詳しく解説します。


記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)

2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。




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