中小企業は改善の宝庫!
ビジネスデューデリの解説、前回からの続きです。
「経営管理」についてのデューデリでは、法令違反や粉飾など、経営管理に関わるリスクについてチェックします。
上場企業では、多くの株主が存在し監視していますし、外部監査も義務づけられています。株価のためには、コンプライアンス違反にも敏感にならざるを得ません。
中小企業は、創業者一族がほとんどの株を持つオーナー会社であることが多いですから、大企業のようなガバナンス体制がなく、経営管理は甘くなりがちです。コンプライアンス違反についても、そもそもそれが問題だとは知らなかった、ということがよくあります。
未払い賃金、粉飾などはないか
とくに多いのが、未払い賃金の問題です。働き方改革の流れで、最近は、残業代やみなし残業代が厳しく見られるようになっています。
管理監督者の問題もよく指摘されます。これは、課長以上などのいわゆる管理職は、管理監督者という位置づけになるため、残業代は不要というルールを悪用して、実際にはその権限がないのに、従業員に管理職の肩書きだけを与えて残業代を払わない、という問題です。
経理を任せていた人が、会社の資金を私的に流用し、帳簿ではそれをごまかしていた、ということもあります。経営管理のデューデリでは、こうした問題について、ひと通り見ておく必要があります。
粉飾については、中小企業で粉飾をしているとしたら、ほとんどが売掛金と買掛金、在庫のところです。それらの数字を細分化して、一次証憑まで見たり、現物の在庫を確認したりすれば、たいていの粉飾は見抜くことができるでしょう。目で確認することがポイントですから、倉庫などの現場にも厭わずに行って確認しましょう。
DDでは実際に現場を見てみよう
現場に行って、オフィスの雰囲気など、現場でしかわからないものを感じることも大切です。たとえば、入り口の傘立てが整理できていなかったり、会議室の時計が遅れていたりということがあれば、その会社の風土がルーズだとわかります。それが改善できるレベルか、難しいかについてもわかるでしょう。
ですから、面談はできるだけ、売り手の会社のオフィスでするようにしましょう。工場や倉庫などのほか、仕入れ先や外注先にもなるべく足を運んで、見たり、話を聞いたりするといいでしょう。現場を見ることは、そのディールの成否に関わらず、いろいろと勉強になることが多いと思います。
経営管理はシステム導入で改善!
経営管理のプラス項目としては、システムの導入で改善できることが多いでしょう。
中小企業では、いまだにファックスが活躍しているところが少なくありません。システムが遅れていれば、ビジネスや営業の効率はどうしても悪くなります。
私の投資した会社では、営業や顧客情報の管理のためのクラウドサービスを入れたら、営業の人員が1人必要なくなった、ということがありました。
別の会社では、営業にテレビ電話会議システムを導入しました。注文住宅の会社なのですが、テレビ電話会議システム導入によって、毎回、車でお客さんのところに行く必要がなくなり、訪問回数を減らすことができて、営業効率が上がった上に、お客さんも喜んだ、という結果になりました。お客さんのところに車で行って話をして戻れば、半日は潰れるわけですから、それが少なくなれば、営業効率は間違いなく上がります。それまでそれをしなかったのは、そういう発想がなかったからです。東京では当たり前にやっていることが、地方や中小企業ではその発想すらないことが少なくないのです。
中小企業では、新しいシステムを導入することで、経営の効率化ができる余地は大きいと思います。PLの販売管理費を支出ごとに細かく見ていけば、「このサーバーはいらないので、月に50万円浮く」「ホームページ管理費として月に30万円はいらない」などと、改善ポイントが見つかるでしょう。こうしたプラス項目はかなり堅いので、買収価格にも反映しやすい部分です。
ビジネスデューデリについての解説は以上です。次のコラムでは、デューデリで使える思考の枠組み、いわゆるフレームワークについて説明したいと思います。
記事監修

三戸政和(Maksazu Mito)
2005年ソフトバンク・インベストメント入社。兵庫県議会議員を経て、2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業再生・事業承継に関するバイアウト投資を行う。