名古屋のM&A・事業承継を解説。会社売却事例も含めてご紹介

名古屋は、多くの産業が存在することで有名な日本の都市です。トヨタ自動車や三菱重工業をはじめ、いくつかの大手メーカーやサプライヤーがこの地域に拠点を置いています。本記事では、名古屋でのM&Aの傾向と事例について解説します。M&A仲介業者を選ぶ際のポイントについても触れていきますので、参考にしてください。

名古屋におけるM&Aの現状

名古屋は「ものづくり」の町

愛知県の会社といえば、トヨタ自動車株式会社が真っ先に思い浮かぶと思いますが、名古屋においてもトヨタの影響が強く、関連会社、取引先の会社などがたくさんあります。自動車工場、部品を提供する会社、その部品を運搬する会社など…そのため「ものづくり」に関わる製造業が多いという特徴があります。

高齢化の問題

しかし近年では高齢化が問題となっています。今まで第一線で働いてきた技術者やオーナーたちが高齢化してきており、若手の人材育成が追いついていない会社も多々あります。「2021年版ものづくり白書」によると、2020年の製造業における高齢就業者数 (65歳以上) の割合は8.8%であり、2002年度の4.7%から約2倍も増加しています。

一方で、若年就業者数 (34歳以下) の割合は2002年には31.4%であったのに対し、2020年度には24.8%にまで減少しています。そして、経済産業省の試算では、2027年には70歳を超える全国の中小企業経営者は約245万人と推計するなど、経営者の高齢化が問題視されています。

参照:「2021年版ものづくり白書」
参照:「事業引継ぎ支援事業に関する 事業評価報告書」

後継者不在の現状

多くの中小企業では後継者がいないことに頭を悩ませています。これは愛知県に限定したことではなく、日本全体の中小企業にもいえることです。親族や社内に適する後継者がいない場合、廃業の危機にも陥ってしまいます。中小企業360万社の内の約3分の1にあたる127万社が後継者不在と言われています。

そこで、最近増えてきているのがM&Aによる第三者への事業承継です。会社を売却または合併させることで、その買い手が新たな経営者(後継者)となり事業承継が実現します。この友好的なM&Aが、会社存続の手段として用いられるようになったのです。

M&Aのメリットとデメリット

M&Aのメリットとデメリットを知り、自分にあった手法を模索してみましょう。

譲渡企業(売り手側)のメリット

まずは、一番の問題点である後継者不在が解消され、事業の存続ができ従業員の雇用も維持できます。また、相乗効果が期待できる買い手と巡り合うことができれば、企業価値を高く評価してもらえる可能性があり、事業の拡大につながります。

例えばですが、負債があったとしても、買い手に借金を引き継いでもらうことができる場合があります。もちろん売買による金銭的収入が得られます。株式譲渡であれば経営権をそのまま買い手に移譲できるため手続的にも簡単になります。

譲受企業(買い手側)のメリット

事業規模、エリアの拡大、市場におけるシェア拡大ができます。金融や通信、航空、放送などの規制業種の場合、既に構築されている企業を買収するので市場参入がしやすくなります。外国市場への参入も場合によっては容易になるので、迅速な事業展開の実現が可能になります。

新たな技術、生産のノウハウ、優れた人材を得られるため、効率よく生産体制を強化し収益性を高めることが可能になります。また、以前より職場環境が改善されたり、福利厚生が充実したりして、従業員のモチベーションが高まる可能性もあります。

譲渡企業(売り手側)のデメリット

まずは、想定通りに会社に価値がつかない可能性があります。また、最適な相手先が見つからない可能性があります。相手先候補が見つかったとしても、交渉が難航した結果お互いの条件が折り合わずに破談となることもあります。

相手先との話がうまくまとまったとしても、従業員、取引先が必ずしも好感触を持ってくれるとは限らないので、しっかりと説明し理解を得られないと関係が悪化する可能性があります。以上は可能性があるデメリットの話でしたが、必ず訪れるデメリットは「売却益には税金がかかる」ということです。

譲受企業(買い手側)

まずは、計画的に進まない場合があります。そして多額の資金が必要です。また、簿外債務や偶発債務を引き継ぐ可能性があるのでよく注意しましょう。以上が譲受する前に気をつけることです。

次に、譲受してから懸念されることですが、期待していたシナジー効果が見込めない可能性があります。また、新たな風が入ってくることは必至なので、うまく対応できなかった場合に従業員のモチベーションが低下してしまう可能性があります。M&Aを成功させるためには、譲受企業(買い手)と譲渡企業(売り手)の視点からメリットとデメリットを把握し、自社に合った手法を選択することが重要です。

また、M&A後も、労働条件の変更や就労環境の変化などに対し譲渡企業の従業員から理解が得られず、離職に繋がる可能性もあります。そのため、M&A後の処遇やビジョンについても企業同士で事前に話し合った上で、従業員にもしっかりと説明を行い、理解を得ることが重要です。専門家を通し、よくリサーチ&話し合いなどをして、M&A取引ができるようにしていきましょう。

名古屋におけるM&A成功事例

名古屋におけるM&A成功事例をいくつか紹介します。

老舗料亭のブランドを守りつつ事業拡大へ:名古屋の老舗料亭「蔦茂」の事例

後継者不在によりオーナーも従業員も未来への不安を持っていた名古屋の老舗料亭「蔦茂」では、2019年にM&Aが成立しました。オーナーがもっとも大切にしていたポイントは従業員の雇用の維持です。次に、老舗ブランドを守るとともにその価値を高め、それを上手に活用していただける譲渡先が望ましいと考えておられました。

また、名古屋の繁華街という店の立地が良かったため不動産価値を目当てにしている譲渡先はお断りしたいと慎重に検討しておられました。結果的に、相乗効果が期待できる企業とパートナーシップを結ぶことができました。専業会社ならではのノウハウ・スケールメリットを持った企業とパートナーになったことで、小さい企業だけでは難しかったハードルを超えられたり、トラブルも減りました。そして何より後継者不在の心配がなくなったため、オーナーも従業員も安心できたようです。

参考:HLサクセション株式会社「中小企業のM&A事例第3弾 蔦茂旅館の事業承継」

少数精鋭の製造業が東京進出の鍵に:株式会社シー・エス・シーの事例

東京都の電装部品の製造をしている「株式会社シー・エス・シー」は30年以上、少数精鋭で長年経営されてきましたが、オーナーが高齢になったため、会社の今後を考慮し2019年に愛知県の同業者に会社譲渡されました。最初から廃業は考えておらず、従業員への承継を考えていたそうです。

しかし、技術者がいきなり経営者になるのは不安があるのではないか、そうではなく自分達の能力を存分に発揮できる新しいオーナーの元で働くほうが彼らにとって良いだろうと判断し、M&Aも視野に入れ事業継承を本格的に検討していくことになりました。

交渉の段階で、買い手企業は関東進出への基盤を作るため、売り手オーナーは従業員の雇用・待遇維持を第一条件として話し合い、拠点をうまく活用して将来的に相乗効果が生み出せればということで無事にM&Aが成立しました。

創業70年の自動車部品メーカーが経営の近代化へ:三井屋工業株式会社の事例

名古屋にある自動車部品のメーカー「三井屋工業株式会社」は創業70年という歴史がありトヨタ自動車の自動車部品のサプライヤーとして安定した業績をあげていたのですが、後継車不在と経営者の高齢化という問題を抱えていたため、2018年10月にセレンディップ・コンサルティング株式会社の子会社となりました。

「経営の近代化」を推進し、事業承継とプロ経営者の派遣を柱とした独自の支援サービスを提案しているセレンディップ・コンサルティングとタッグを組むことにより、双方の企業を発展させています。

まとめ

跡継ぎが居ないからという理由で、大切に育ててきた会社を廃業にしてしまうのではなく、それは最後の手段として置いておいて、その前に色々な可能性を探ってみてはいかがでしょうか。M&Aを行う場合は、豊富な知識とコミュニケーション能力が備わった専門家のサポートを受けるのがおすすめです。

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