沖縄におけるM&A・事業継承を解説。沖縄産業の特徴からメリットもご紹介

沖縄県で M&Aをおこなうためには、沖縄産業の特徴について知っておくことが大切です。沖縄県は観光地であるため、第三次産業のサービス業が最も盛んになります。そのほかに、沖縄産業の約15%を占めているのが建設業です。

沖縄における産業の特徴

ここではそれぞれの産業について詳しく解説していきます。

最も盛んなサービス業

沖縄県は誰もが知るリゾート地として有名です。そのため、観光サービス業を主体とした第三次産業の割合が約84%となっています。修学旅行や長期休暇で沖縄県を訪れる人が多いからです。

また、米軍基地関係者であるアメリカ人観光客もたくさん訪れます。しかし、沖縄県の第三次産業は景気に左右されやすく受け身な点がデメリットです。

沖縄産業の約15%を占める建設業

沖縄産業で次に盛んな産業が第二次産業です。建設業などの第二次産業が約15%となっています。2018年には「沖縄県建設産業ビジョン」という計画が行われています。

これは建設産業の持続可能な発展を推進するために始まった計画です。沖縄県内の建設業は、県内雇用の重要な受け皿となっているため今後の発展が期待されています。一方で、若年入職者の減少や少子高齢化の影響により高齢者の割合が増えているところが懸念点です。

沖縄は後継者が少ない、後継者不在率は全国2位。

後継者不足は全国でも課題となっていますが、沖縄県は日本国内で後継者不足が目立つ県の一つでもあります。事業継承を推進するための施策がおこなわれていますが、まだまだ不足しているのが現状です。詳しく見ていきましょう。

後継者不在率全国2位

沖縄県は後継者不在率が全国2位です。2011年〜2020年までの10年間トップでしたが、2021年は2位となりました。沖縄県の後継者不在率は72.3%であり、全国平均の61.5%を大きく上回っています。

しかし、不在率80%を下回ったのは初となり、若干の回復傾向です。(帝国データバンク調べ)沖縄県の事業者は黒字であっても、後継者がみつからないことが原因で廃業してしまうケースもあります。

沖縄県は事業継承の補助が出る場合もある

後継者の少ない沖縄県では「沖縄県事業継承推進事業」という沖縄県が事業継承に係る費用の一部を補助する活動も行われています。補助上限額は100万円となっておりますが、補助対象は以下の条件を満たしている必要があります。

  • 県内に本社を有する中小企業者
  • 常時使用する従業員がいること
  • 第三者継承の場合、譲渡側であること

沖縄県外の方が事業継承(M&A)する場合は補助は出ないため、注意が必要です。

事業継承(M&A)する際の買い手のメリット

沖縄県で事業継承(M&A)する際の買い手側のメリットを3つご紹介します。

新規事業に参入しやすくなる

新規事業に参入するためには、人材確保や市場参入などのハードルがあります。そのハードルにより不安を感じる経営者も多いのが現状です。その不安を解消できる M&Aが買い手側のメリットになります。 M&Aをすれば、顧客リストや人脈も獲得することが可能です。

事業継承後も取引先などと良好な関係を継続できるのであれば、スムーズに黒字化できる可能性が高まります。そのため、 M&Aをすることで新規事業に参入しやすくなります。

事業拡大が可能になる

会社として利益を出し続けるためには、事業拡大は必須です。既存事業にも市場が限られているため、既存事業のみで事業拡大するには限界があります。そこで次に行う事業拡大として、 M&Aをおこない新分野に進出していくのです。

M&Aは既に結果の出ている事業を継承するため、リスクを少なく抑えて事業拡大をすることができます。特に沖縄県では後継者不足が続いているため、優良企業を買い取ることができる可能性もあります。

コスト削減が可能になる

M&Aをおこなうことでコスト削減が可能です。経営していく中では、「人材育成コスト」「仕入れコスト」「税金」などさまざまなコストが発生します。 M&Aではこれらのコストを削減することが可能です。

実際に運営されている事業を買い取るため、0から人材育成をする必要がなく、人材育成コストを削減できます。仕入れコストも削減が可能です。

例えば、アパレルブランドが裁縫工場を買い取ることで仕入れコストを抑えることができます。さらには節税対策をおこなうことも可能です。税率の低い国の企業を買い取ることにより、合法的に節税できる方法もあります。このように M&Aをおこなうことでさまざまなコストを削減することが可能になるのです。

事業継承(M&A)する際の買い手のデメリット

一方で買い手側にもメリットがいくつか存在します。ここからは M&Aにおける買い手のデメリットを3つ紹介します。

期待通りの効果が見込めない

1つ目は想像通りの効果が見込めない可能性があることです。 M&Aをおこなう場合、どのくらいのシナジー効果が見込めるかを想定し、買い取り価格を提示します。
しかし、期待通りの効果が見込めなくなってしまうことがあります。元々所属していた企業ごとに派閥が生まれたり、管理コストが上がってしまったりすることがあるからです。そのため、 M&Aにより企業を買い取る際は過大評価せず、しっかりと事前調査をする必要があります。

債務を引き継ぐ可能性がある

2つ目は債務を引き継ぐ可能性があることです。債務があることを承知で買い取る場合は問題ありませんが、帳簿上は黒字でも隠れた赤字を抱えている企業も存在します。帳簿に載っていない債務の有無があるかどうか注意して確認する必要があります。

既存従業員のモチベーション低下

3つ目は既存従業員のモチベーションが低下してしまう可能性があることです。事業継承後の統合がうまくいかなければ既存社員のモチベーションを低下させてしまいます。主に以下のような理由です。

  • 企業文化の違いにより話し合いが進まない
  • 社内ルールが変更され働きにくい環境になった
  • 慣れない仕事をするようになった

これらの理由により、社員のモチベーションが下がってしまうと、優秀社員が離職してしまったり経営陣と社員の対立が生まれたりします。
そのため、既存社員のモチベーションを保つために事業継承後の施策を練っておくことが必要です。

事業継承(M&A)する際の売り手のメリット

沖縄県で事業継承(M&A)する際の売り手側のメリットを3つご紹介します。

後継者問題が解決する

事業を第三者に買い取ってもらうことで、後継者不在という問題を解決することが可能です。沖縄県は全国でもトップレベルの後継者不足問題を抱えています。

従業員や取引先、廃業コストなどを考えると、廃業することが難しいことも少なくありません。そんな時に第三者に事業を売ることで、廃業することなく事業を継続させることができるのです。

創業者利益を得ることができる

創業者利益とは M&AやIPOを行うことにより、自社の株式を譲渡し得られる利益のことです。500万円で創業した会社が5,000万円で得ることができれば、創業者は4,500万円の利益を手にすることができます。

そのため、企業価値が高く評価されるほど売却額は上昇し、創業者利益を得ることができるのです。

廃業コストが不要

廃業するのにも「登録免許税」や「施設の現状復帰」などのコストが必要です。また、商品の在庫がある場合は在庫の処分にも費用はかかります。

一方で、廃業しなければ従業員の雇用を守ることが可能です。廃業してしまえば、従業員の方達は新しい就職先を探さないといけなくなります。 M&Aで事業継承することにより、廃業に係るコストが不要になったり、従業員の雇用を守ることができます。

事業継承(M&A)する際の売り手のデメリット

売り手側にもメリットがいくつか存在します。ここでは M&Aにおける売り手のデメリットを3つ紹介します。

自社評価が低い可能性がある

1つめのデメリットとして自社評価が想定より低い可能性があることです。 M&Aによって事業を売却する際は、企業価値が算出されます。現在が黒字だからといって高評価をもらえるとは限りません。

将来的な収益性というのは、企業を評価する重要な指標の一つです。そのため、どれだけ収益があっても、将来性がない業種であれば評価が低くなってしまうことがあります。

最適な買い手が見つからない可能性がある

2つめは最適な買い手が見つからない可能性があることです。売却希望の企業は多数存在します。その中から自社を買い取ろうという買い手はそう簡単に見つかりません。

M&A仲介会社に売却を依頼した場合でも、すぐに買い手を見つけるのは難しいです。ましてや、経営難から自社の売却を考えている場合は更に買い手を見つけるのは難しいでしょう。そのため、売却するための準備は整っていてもすぐに最適な買い手が見つからない可能性があります。

取引先とのトラブルに発展する可能性がある

3つ目は取引先とのトラブルに発展したり、契約が打ち切られてしまう可能性があることです。 M&Aによって他企業の傘下になり、契約条件や担当者が変わることで取引先は不信感を抱いてしまいます。

急に契約条件や担当者が変わることは、取引先にとって不利益になりかねません。会社を譲渡した後でも良好な関係性を続けるためには、現在の担当者が事前にしっかり説明をし、納得してもらうことが必要です。

沖縄におけるM&Aの成功事例

ここでは実際に M&A(事業継承)が成立した事例を紹介します。現在、 M&Aを視野に入れている人はぜひ参考にしてください。

デイゴホテルを南西観光がM&Aで買収

デイゴホテルは1966年に設立されたシングルルーム18室のホテルです。そのデイゴホテルを同県内同業種である南西観光が2020年7月に買収しました。宮城勝社長(デイゴホテル)が「沖縄県事業引継ぎ支援センター」へ第三者継承の相談をしたことが M&Aのきっかけです。

宮城社長は「従業員全員の雇用継続」と「商号の継続」を事業譲渡の条件としてあげていました。一方で、大田氏(南西観光)は先代である義父からデイゴホテルと同規模のホテルを引き継いだ経験があり、今後の事業展開として M&Aに挑戦したい気持ちがあったそうです。

双方のホテルの経営理念も近く、大田氏は「商号は守っていく方針で、デイゴホテルブランドに磨きをかけたい」と考えており譲渡契約を締結しました。

ぎぼ酒店を南島酒飯株式会社がM&Aで買収

ぎぼ酒店は1982年に開業し、年商2億円を誇る地域密着型の酒店です。そのきぼ酒店を酒の卸売を営む南東酒飯株式会社が買収しました。宜保社長(ぎぼ酒店)の M&Aのきっかけは自宅に届いた一通の封書です。

差出人は沖縄県事業引継ぎセンターで「事業引継ぎ相談のご案内」と書かれたチラシになります。宜保社長(ぎぼ酒店)が出した譲渡の最大条件は「従業員の雇用を守りたい」でした。

一方で大岩社長(南東酒飯株式会社)は沖縄銀行西原支店の支店長より、事業継承のお話があり今回の M&Aに踏み切りました。大岩社長は「酒飯店をグループ化できれば、本業である卸部門のシナジー効果が大きい」と考えていたそうです。

双方の希望や条件が一致したことや、先代社長同士が知人だったこともあり相談開始からわずか10ヶ月で事業が継承されました。

まとめ

沖縄県の M&Aの特徴や実際の M&A事例についてご紹介しました。後継者不在で悩んでいる沖縄県の事業者は「既存従業員の雇用の確保」を譲渡条件としてあげていることがわかります。

一方で事業を継承する企業は、事業拡大やシナジー効果が大きい企業であれば積極的に買い取りを行うこともわかりました。二つの M&Aに沖縄県事業継承センターが関わっており、売却を検討している方は相談してみるのも一つの手です。

また、買い取り側は銀行からの相談がきっかけとなっているため、銀行と良好な関係性を築くことでより良い企業と巡り合うことができるでしょう。沖縄県での事業継承を視野に入れている方はぜひご参考ください。

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