Column

2018.06.19

資金繰り表の作り方

Spread the love

○「資金繰り」の大切さ
 会社の経営にとって、もっとも大切なもののひとつが資金繰りです。資金繰りとは短い単位でのキャッシュフローを管理すること、つまり、日々や月々のお金の入金や支払いを管理することです。こうした手元の資金をきちんと管理しておかないと、会社は突然、倒産に見舞われることがあります。「黒字倒産」といわれる倒産がそれです。黒字倒産は、会社の業績としては利益が出ているのに、手元の資金が足りなくなったために起きるものです。反対に、本業では利益が出ていなくても、手元の資金をきちんと確保しておくことができれば、会社が倒産することはないといえます。
 資金繰りを管理する必要があるのは、経営において、お金の「入り」と「出」が複雑なためです。商品の売り上げとその代金の入金は、同じタイミングで起きるとは限りません。商品が売れても、お金が入ってくるのは月末や翌月ということも多いでしょう。一方で、従業員の給与、仕入れのための支払いなど、日々の業務のために必要な支出があります。こうしたお金の「入り」と「出」をきちんと把握しておかずに、どんぶり勘定でやっていると、必要なときに必要な支払いができなくなったり、手形の不渡りを起こしたりすることがあります。ひどいときにはこれが倒産にまで至ってしまうのです。こうしたことを防ぐためにも、経営者にとっては、手元の資金繰りをきちんと管理することがなにより重要なのです。

○資金繰り表の作り方
 資金繰りの管理とは、経営における過去と未来のお金の「出」と「入り」を把握して、手元のお金を「自由に使えるお金」と「支払いに必要なお金」に分けることです。それができていれば、会社の財布のお金の流れが見えてきますから、経営の安定化や危機管理に役立つでしょう。たとえば、設備投資に使えるお金がはっきりしますし、ともすれば、支払うべきお金が足りなくなるといった将来のタイミングも見えてきます。それが分かれば、それまでの間に、販売促進策を練ったり、銀行からの融資や資産の売却をしたりなどの対策を打つことができるでしょう。このような時間的な余裕を生むことができるのは、資金繰りを把握しているからこそです。反対に、資金繰りが把握できていない場合は、突然の資金ショートから、ひどいときには倒産に至ることもあり得るわけです。
 資金繰りの管理には、資金繰り表が役立ちます。その資金繰り表の作り方を説明しましょう。
 資金繰り表では、会社のお金を、①経常収支②設備収支③財務収支の3つに分けて管理します。基本的には月単位の収支を、過去3ヶ月から12ヶ月先位の期間を目安に、表にしてまとめましょう。
 ①の経常収支とは、会社の事業の収支です。つまり、事業の売り上げとそれにかかった経費の収支であり、経営にはもっとも重要な項目です。経常収支がプラスであることが、健全な経営の絶対条件です。この数字が継続して赤字になる場合は、何らかの手を打たなければならないでしょう。
 ②の設備収支は、機械の購入や修理、売却など設備に関わるお金の収支です。不動産などの固定資産を売買する場合も設備収支に入ります。
 ③の財務収支は、金融機関などからの融資や返済など、財務に関わる収支です。
 これら3つの項目を、過去の分については実績の数字を、将来の分については、実績をもとにした予測の数字を、資金繰り表に書き込んでいきます。
 売り上げなどからなる収入の予測は、将来の見通しですから不透明な部分がありますが、過去の実績などをもとに考えてみましょう。
 支出については、人件費、光熱費、通信費、リース料、家賃など、毎月、固定的に掛かるものがありますから予測しやすいでしょう。支出を把握することで、逆算して、今後の経営にはどれだけの売り上げが必要なのかが分かってきます。営業戦略もこの数字をもとにすれば、より効果的になるでしょう。
 資金繰り表は、経営者自らが作って、随時更新しましょう。資金繰りが厳しい場合は、日単位の資金繰り表も作って管理した方がいいでしょう。
言葉にすれば当たり前のことですが、経営者が常に、会社のお金の流れを意識しながら経営にあたることが、経営の安定化にはなによりも大事なのです。

○再生プロセスでも資金繰りは必須
 会社や事業の再生のプロセスにおいても、資金繰りは非常に大切な要素です。再生プロセ
スにおいては、再生に着手してから再生計画を作り、利害関係者からの合意を得て、計画が実行に移されるには、少なくとも半年の時間が必要です。その間の資金繰りが担保されなければ再生プロセスは進みませんから、資金繰りの安定は再生プロセスのための第一条件となってきます。
 再生プロセスは、通常は債務の支払いをストップさせてから進められます。金融機関への債務支払いを止めれば、新たな融資を受けることは見込めませんから、その上で、資金繰りが回るのかがチェックされる必要があります。業態によっては、季節によって必要な資金が増える場合がありますから、このいわゆる季節資金についてもチェックが必要です。
 当面の資金を確保するための方法としては、①債権の回収を強化、②遊休資産の売却、③過剰在庫のセール、④不必要な投資資金の回収、⑤ボーナスの延期、⑥税金支払いの繰り延べ、などの方法があげられます。
 こうした方法をとることで資金繰りを安定させながら、再生プロセスを進めていくことになりますが、それでも資金繰りが回らないとなれば、スポンサーからの支援や金融機関からの融資を検討する必要があります。
 再生プロセスの途上にある企業へは、通常、新たな融資は敬遠されますが、DIPファイナンスという形で融資が行われるケースが増えてきました。DIPファイナンスとは、再生プロセスにある企業の資金繰りを助けるための融資です。DIPファイナンスについては、別の章で詳しく説明します。
 再生プロセスでは、資金繰りを安定させる手を打ちながら、各種のデューデリジェンスや再生計画案作りなど、さまざまなプロセスが同時並行で進められます。なかでも資金繰りの安定は、再生プロセスを進める上での土台となる部分ですので、とりわけ優先順位の高いものといえるでしょう。