Column

2018.06.10

登場するプレーヤー

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○会社や事業の再生に関わるプレーヤー
 かつての日本では、会社の倒産に関わるのは弁護士が中心でした。しかし、バブル経済の崩壊後、不良債権の処理が問題となり企業の倒産も増えたことで、企業倒産の分野は活性化され、会社や事業の再生を担う新たな分野として確立されていくことになりました。
 この企業再生の分野は、会社の倒産だけでなく、経営不振の会社の再生や事業の再編など、その関わる領域は大きく広がることとなり、法律のみならず、経営、財務、組織などさまざまな分野の専門的な知識が求められることとなりました。このため弁護士に限らず、さまざまな専門家がこの分野に参入してくることとなり、現在では、ターンアラウンドマネージャと呼ばれる企業の再生を専門とする人々も現れています。
 以下では、企業再生というステージに、どのようなプレーヤーが関わっているのかを見ていきたいと思います。

○経営者
 会社には、さまざまな利害関係者が存在します。会社や事業の再生に乗り出した経営者にとっては、さまざまな利害関係者との調整なくしては、会社の再生はあり得ません。株主や取引先、従業員、債権者などそれぞれの立場で、利害は異なり、事情は複雑に絡み合います。その難しいパズルを解くような調整を進めるためには、実現可能であり、企業の価値を最大化させ、債権者への支払いも最大化するような計画を、正しいデータをもとに作成し、各利害関係者との調整を図らねばなりません。当然のことながら、経営者は自らの経営責任から逃れることはできません。

○株主
 株主にとっては、株主としての価値を最大化することが目的であり、議決権を持つ立場から、経営に携わることで企業の価値を高めようとします。一方で、株を持つ企業が再生のフェーズに入った場合は、株主としての責任から逃れることはできず、株式をすべて失うこともあり得ます。また近年は、経営不振に陥った企業の株を買うことで、企業の再生に携わる投資家やファンドも存在感を高めています。

○取引先
 取引している会社が経営破綻し、再生のフェーズに入ることは、仕入れ先や販売先である取引相手にとっても他人事ではありません。仕入れ先にとっては、売上債権が回収できないことも考えられ、ひどいときには連鎖倒産に陥ることもあり得ます。仕入れ先は、債権者として会社の再生に関わっていくことも多いでしょう。
 販売先にとっては、連鎖倒産に巻き込まれる心配はありませんが、これまでの仕入れ先を失うことになります。
 一方で、企業の再生に、取引先がスポンサーとして関わることもあります。仕入れ先がスポンサーになれば、販売先の確保という意味合いになり、販売先がスポンサーになれば、仕入れのコストを削減するという意味の投資となるでしょう。

○同業他社
 同業他社にとって、同じ業界の会社の経営破綻は、ピンチでもありチャンスにもなり得るものでしょう。ピンチであるとは、経営破綻がその業界の斜陽を示している可能性があるからで、その会社が経営破綻した理由については注目しておかなければならないでしょう。
 一方で、経営破綻した会社の事業を手に入れることでシナジー効果が得られるとなれば、取引先がスポンサーとして出資して、再生に関わることもあります。会社としてシェアを広げたり、業務コストを削減したりするなどのチャンスとなるかもしれません。

○金融機関
 経営不振の会社が再生のフェーズに入った場合、金融機関は、債権者としてもっとも重要なプレーヤーのひとりとなります。金融機関の最大の目的は債権を回収することであり、その回収額を最大にすることです。そのため金融機関は、破綻会社の経営者とともに、再生計画を進める立場に立ち、利害関係者との調整を担うこともあります。また、貸し手責任は逃れられず、再生計画によっては、一部の債権の放棄を求められることもあります。

○弁護士
 弁護士は企業再生において大きな役割を果たします。裁判所から破産管財人や監督委員に選ばれ、その立場から企業再生に関わることもあります。また、会社分割や事業の譲渡、会社更生や民事再生、破産や清算など、さまざまな企業再生の手続きには法的知識が求められ、弁護士が担うことになります。このほか、経営破綻に陥った企業は、訴訟などの法的なリスクを抱えていることも少なくなく、これらに対応するのも弁護士の役割です。

○公認会計士
 公認会計士には、会社が経営破綻した経緯や原因について、過去の財務資料などをもとに明らかにするという重要な役割を与えられています。会社破綻の原因が明らかにならない限り、再生計画は構築することができず、それには公認会計士らの専門的な知識が必要とされます。
また、債務の弁済計画や再生スキームの検討を担うのも公認会計士です。
 公認会計士や事務所の中には、企業再生に特化したものも現れてきています。

○企業再生コンサルタント
 弁護士や公認会計士以外で、企業再生についてのアドバイスをするプレーヤーを、企業再生コンサルタントと呼びます。企業再生の専門家として、チームの中心となって、再生計画の作成や実行に関わります。

○中小企業診断士、税理士、フィナンシャルアドバイザー
 中小企業診断士は、中小企業の専門家という立場から、中小企業の再生に関わります。税理士やフィナンシャルアドバイザーは、税や会計の専門家として、再生チームの一員として活躍したり、中小企業の再生に携わったりしています。

○事業再生ファンド
 未公開株(=プライベートエクイティ)に投資をすることで、投資先の企業の経営に関わり、企業価値を向上させてから、その株式を売却して利益を得るファンドのことを、プライベートエクイティファンドといいます。このプライベートエクイティファンドのひとつで、会社の再生に特化しているファンドが、事業再生ファンドです。
 事業再生ファンドは、経営が傾いた会社の未公開株を買って、事業再生プロセスにスポンサーとして関与し、事業を再生させてから、株式を売却して利益を得ます。事業が再生すれば、大きな利益が得られますが、立て直しがうまくいかないこともあり、そのリスクは少なくありません。
 事業再生ファンドについては、詳しくは別稿で触れています。
 
○公的機関、支援機構
 中小企業再生支援協議会や地域活性化支援機構は、公的な機関として、おもに中小企業の再生に関わります。
 事業再生ADRは民間機関ではありますが、国の認定を受けて、事業の再生に関わります。 いずれの機関も別稿で触れていますので、参考にして下さい。

○ターンアラウンドマネージャー
 企業再生を専門とする経営者のことを、ターンアラウンドマネージャーといいます。ターンアラウンドマネージャーは、経営破綻した会社に乗り込んで、経営者として会社の立て直しを進め、再生を軌道に乗せてから、ほかの経営者に経営を引き継ぎます。欧米ではターンアラウンドマネージャーが職業として確立されていて、日本でもそう呼ばれる人材も増えてきています。