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2018.05.09

投資ファンドの種類

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○ファンドとは
 事業再生に大きな役割を果たすファイナンシャルスポンサーの代表的な存在が投資ファンドです。
ファンドとは英語で基金の意味です。投資ファンドは、投資家から集めた資金を基金のようにプールし、それをさまざまなものに投資することで得た儲けを、投資家に分配することを目的としています。こうした投資の仕組みやその組織のことを投資ファンドといいます。
 一般の人々が証券会社などを通じて投資する投資信託もファンドのひとつであり、だれでも投資ができる公募型の投資ファンドです。公募型の投資ファンドは、投資家を保護するための細かい法律の規制があり、行政庁の監督も受けています。
 企業や機関投資家などから私的に投資を募る私募型は、基本的に規制がありません。リスクは高いですが、自由な運用によって高いリターンを得ることを目的としています。
良く耳にするヘッジファンドは私募型の投資ファンドのひとつです。ヘッジファンドはさまざまな金融商品を組み合わせて、リスクを避けながらも高いリターンを狙う投資の方法で、そうした投資をするグループもヘッジファンドと呼ばれます。

○ファンドの投資先
 私たちが行う投資は、二種類に分けられます。株や債権という伝統的な資産に対する投資(伝統的投資)と、それ以外の投資(オルタナティブ投資)です。オルタナティブ投資の投資先は、未公開株、不動産、金融商品、実物資産やインフラ投資などさまざまです。
 オルタナティブ投資の投資先である実物資産とは、原油、貴金属、絵画、農地などです。インフラ投資では太陽光発電などの発電設備や交通インフラなどがあげられます。
 伝統的資産である上場株式に投資をするファンドのひとつに、アクティビストファンドというファンドがあります。業界や新聞紙上などで「物言う株主」と呼ばれる存在で、彼らは企業の経営に注文をつけることで投資先企業の価値を上げ、株価が上がったところで売却して利益を得ることを目的としています。
また、リートといわれる投資ファンドはオルタナティブ投資をするファンドのひとつで、不動産に投資をして、その賃貸収入や売却益で利益を上げます。
 事業再生に関わる投資も、オルタナティブ投資のひとつです。事業再生のプロセスにおいて投資ファンドはスポンサーとして登場します。その投資方法は、未公開株(=プライベートエクイティ)を取得して経営権を握り、経営を立て直した後、取得した株式を売却して利益を得て、それを投資家に配分するという方法です。こうした事業再生に関わるファンドのことを事業再生ファンドといいます。

○プライベートエクイティファンド(PEファンド)
 事業再生ファンドのように、未公開株(=プライベートエクイティ)を投資対象とするファンドのことを、プライベートエクイティファンドといいます。プライベートエクイティファンドは、事業再生ファンドも含め、大きく分けて次のような4つの形があります。

 ①ベンチャーキャピタル
 ②バイアウトファンド
 ③事業再生ファンド
 ④ディストレストファンド

 プライベートエクイティファンドは、資金を投資するだけではなく、投資先の企業の経営に関わるところに特徴があります。企業の成長や経営の改善、企業価値の向上を待ってから株式を売却するため、ある程度の長期的な視野に立った投資となります。ベンチャーキャピタルは創業したばかりの会社への投資を行うファンドで、その会社の成長可能性に投資を行います。ディストレストファンドは経営が傾いた会社に対して投資を行い、その会社が持つ資産を売却することで利益を得ようとするファンドで、ハゲタカファンドともいわれます。いずれも高いリターンが得られる可能性がある一方で、不確実性もあります。未公開株は売却先を探すのが難しいという問題もあります。
 上記の4つのファンドは、投資対象の企業の成長段階によって区別されます。以下でその違いについて説明します。

○ベンチャーキャピタル
 ベンチャーキャピタルは創業したばかりの企業に投資をします。ベンチャーとは野心的で革新的なアイディアや技術をもとに、新しいビジネスやサービスを行っている企業のことで、こうしたベンチャー企業やスタートアップといわれる企業が、ベンチャーキャピタルの投資対象となります。
 ベンチャーキャピタルは、投資対象の企業が持つ成長可能性にかけて投資を行います。事業が軌道に乗り成長を始めれば、企業価値が上がり、株の価値も上がるので、それを売却することで利益を得ます。そのメルクマールはIPO(株式公開)です。IPOまで辿り着けば投資は大きなリターンとなってかえってきますが、IPOまで辿り着けないどころか事業がうまくいかないケースも少なくありません。ハイリスクハイリターンの投資といえます。

○バイアウトファンド
 バイアウトファンドの投資先は、成長軌道に乗っている企業です。バイアウトとは英語で買収という意味です。バイアウトファンドは、ビジネスがある程度成長し、今後さらなる成長が見込まれる企業の未公開株を買い取り、経営に関与することで、ビジネスをさらに成長させ、企業価値を上げてから株式を売って利益を上げます。
 バイアウトファンドにはさまざまな投資の形が生まれています。

▼MBO マネジメントバイアウト。企業の経営陣が自社の株式を買い取って、会社のオーナーとなります。企業の買収防衛策としても使われます。
▼EBO エンプロイーバイアウト。従業員が自社の株式を買い取って経営権を取得します。     中小企業で行われることが多い手法です。
▼MBI マネジメントバイイン。投資ファンドなどが企業を買収して経営者を送り込み、     企業価値を上げてから、株式を売って利益を上げる手法です。
▼LBO レバレッジドバイアウト。買収先の企業の資産やキャッシュフローを担保に、金     融機関から融資を受けて、買収する方法です。自己資金が少なくても、大きな額の買収ができるので、テコの原理になぞらえてレバレッジドバイアウトと呼ばれます。企業を買収した後に、経営に関与して企業価値を上げ、そのキャッシュフローから借り入れたお金を返済し、最終的には株式を売却することで利益を上げます。
▼TOB 株式公開買い付け。プライベートエクイティファンドは、基本的には未公開株への投資を行いますが、上場企業に対して、TOBという手法を使って株式を買い取り、株式を非上場化させるという方法も、プライベートエクイティファンドのひとつに挙げられます。

○事業再生ファンド
 企業再生ファンドやターンアラウンドファンドなどとも呼ばれます。
 事業再生ファンドは、事業再生プロセスにスポンサーとして関与し、経営が傾いた非上場企業の株式を買い取って、経営に参画して、事業を再生させてから、株式を売却して利益を上げます。会社やその事業が再生をすることができれば、大きな利益を得ることができますが、立て直しがうまくいかないこともあり、リスクは少なくありません。

○ディストレストファンド
 ディストレストとは英語で「困窮している」という意味で、不良債券ファンドなどとも呼ばれます。
 困窮している企業や破綻している企業の株式や債券を買い取り、それを転売したり、その企業の持つ資産を売却したりして利益を上げる手法です。その手法からハゲタカファンドと揶揄されることもあります。
 破綻した企業や不良債権への投資ですのでリスクは高くなりますが、もし企業や資産の価値を高めることができれば大きな利益を得ることができます。

○プライベートエクイティファンドの役割
 プライベートエクイティファンドは、欧米では70年頃から存在し、長い歴史を持っています。企業の草創期から破綻期まで、さまざまな局面に対応して資金を供給する役割として、社会的にもその存在意義は高く評価され、グローバルにネットワークを広げるファンドも現れています。世界的にはプライベートエクイティファンドは有効な投資対象となっているといえます。
 一方、日本でプライベートエクイティファンドが誕生したのは、90年代末のバイアウトファンドが始まりといわれ、まだまだ歴史が浅く、事業規模もその認知度も、欧米のプライベートエクイティファンドのような存在とはなっていません。プライベートエクイティファンドへの投資も金融機関や企業年金などに限られて、個人には広がってはいません。
長らく低迷が続く日本経済にとっては、ベンチャー企業への投資をもっと増やしたり、事業の再生や承継、不良債権の処理などを担ったりする存在が必要であり、プライベートエクイティファンドのさらなる充実が求められているといえます。