Column

2018.04.30

スポンサーの選定

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○事業再生におけるスポンサー
 事業再生においてスポンサーは、再生対象の会社に資金を拠出することで、再生プロセスを進める後ろ盾となります。資金を出すだけでなく、経営権を握るなどして、経営の改善にも主体的に参画します。
 スポンサーは、株式を買い取るなどの形で資金を拠出します。そのお金は自己資本となり、借金とは違い返済の必要がありません。自己資本が増えて財務状況が改善されますから、金融機関などからの資金調達も可能になります。
 このようにスポンサーによって、再生企業の信用は補完され、経営ノウハウも注入されることで、再生プロセスが進みやすくなるのです。

○二種類のスポンサー
 事業再生において、自力で再生すべきか、スポンサーの力を借りるかは、ケースバイケースです。たとえば多角化の失敗による経営不振の場合、本業がしっかりしていれば、不採算事業を切り離すことによって自力再生が可能な場合もあるかもしれません。外部の人に経営に任せることをためらう経営者もいるでしょう。しかし苦境に陥った会社は、企業文化や経営の手法に問題があることが少なくなくありません。外部の風を入れることに後ろ向きになるべきではないでしょう。
 各種のデューデリジェンスによって、なぜ経営が苦しくなったのかが分析され、再生イメージが固まる中で、自力による再生か、スポンサーを探すのかが判断されます。スポンサーによる再生を目指すのなら、スポンサー探しが行われ、スポンサーが見つかれば、その拠出金を踏まえた再生計画案が策定されることになります。
 スポンサーは大きく二種類に分けられます。ビジネスを行っている企業がスポンサーになる場合は「事業スポンサー」といわれ、投資ファンドのように投資としてスポンサーになる場合は「ファイナンシャルスポンサー」といわれます。
 たとえば資金面で問題があるならば、資金面の後ろ盾となる投資ファンドや信用を補完してくれる大手企業などがスポンサーとして相応しいでしょう。また同じ業種の企業を事業スポンサーとして受け入れて、事業規模を大きくすることで事業の再生を図るケースもあります。

○スポンサーの役割
 事業再生におけるスポンサーの役割は、まずは資金を拠出することです。
 スポンサーからの拠出金は、借金の返済や運転資金などに使われるのではなく、事業の再構築のための設備投資など、事業や収益の抜本的な改善策につながるものに使われます。
 スポンサーはお金を拠出するだけでなく、経営にも関わります。一般的にはスポンサーが再生企業の経営権を握るケースが多く、スポンサーの持つ経営のノウハウによって、経営の改善が進められます。
 会社や事業の再生には、根本的な企業文化の改革が求められる場合もあります。それまでの経営の問題は、会社内のコミュニケーション不足や業務改善への消極性など、その会社の企業文化に根ざしていることも珍しくありません。外部から見れば明らかな問題が内部では見えていないことも多く、こうした企業文化の問題を改善するのもスポンサーの役割です。
 スポンサーによってバランスシートが改善され、シナジー効果も生まれて、再生会社の事業価値をあげることができれば、債権者や株主だけでなく従業員や取引先にも恩恵が及ぶことになります。

○事業スポンサーの利点
 二種類の事業スポンサーのうちどちらに利点があるかはケースバイケースです。ここではそれぞれの一般的な利点について説明しましょう。
 事業スポンサーは、本業のビジネスを持つ企業ですから、そのビジネスが再生会社のビジネスと関連があれば、スポンサーとなることが効果的なケースが多いでしょう。
 たとえば同じビジネスであれば単純にシェアが拡大し、原材料の仕入れの調達コストを下げることができます。工場や販売拠点など重複する施設があれば、コスト削減ができますし、仕入れ先や販売網を補完し合うなどのメリットも期待できます。
 こうしたメリットがシナジー効果(相乗効果)と呼ばれるもので、シナジー効果が見込めるかどうかは、スポンサーにも再生企業にも重要な点です。
 取引先がスポンサーになるケースもあります。仕入れ先がスポンサーになるとすれば、販売先の確保という意味合いになります。その逆で販売先がスポンサーになれば、仕入れのコストを削減するという意味の投資となるでしょう。
 異業種の会社が事業スポンサーとなるケースもあります。スポンサーにとってはこの投資によって新規分野に算入することが目的になり、新規参入のための時間やコストを買うという意味合いになります。こうしたケースではシナジー効果は見込めないため、ファイナンシャルスポンサーによる投資と似た形になるでしょう。
 ほかに、スポンサーとして資金を拠出する理由として、税務上の利点があげられます。再生会社には過去の赤字によって、繰越欠損金が累積しているケースが少なくありません。繰越欠損金は一定の期間、利益と相殺することができますから、控除と同じ効果があります。再生会社とスポンサーの会社が統合することで、スポンサー会社がその繰越欠損金を利用できることも想定でき、こうした税務上のメリットもスポンサーが検討すべき材料のひとつとなります。
 ファイナンシャルスポンサーは、最終的には株式を売却して利益を出すという目的がありますが、事業スポンサーは株式の売却が絶対の目的ではありません。事業スポンサーは比較的、長期的な視野で経営改善にあたることができるとされ、事業スポンサーを選ぶ大きなメリットになります。

○ファイナンシャルスポンサーの利点
 投資ファンドに代表されるように、ファイナンシャルスポンサーは、投資そのものを事業としています。それが本業を持つ事業スポンサーとは違うところで、メリットにもデメリットにもなりえます。
 どんな会社にも企業文化があります。事業スポンサーがスポンサーとなる場合、再生会社とスポンサーの会社の統合では、異なる企業文化が融合されることとなり、それが軋轢を生むことも少なくありません。
 しかしファイナンシャルスポンサーの場合は、持ち込む企業文化がありませんから、企業文化同士による軋轢が生まれる心配がありません。企業文化の融合が重要な問題となる事業スポンサーとは違って、事業の再生に集中することができます。再生会社の企業文化についても、悪い部分は直し、いい部分は生かすという客観的な判断ができるでしょう。
 ファイナンシャルスポンサーはさまざまな業種の会社に投資をし、経営を立て直すノウハウや人材を持っていることから、そのノウハウや人材を再生に生かすことができます。これまでのしがらみにとらわれることなく、リストラなどの思い切った改革を積極的に進める傾向も見てとれます。
 ただファイナンシャルスポンサーが、一定期間の後、株式を売却し、投資を回収しなければならないという「出口」を見据えているということには留意しなくてはなりません。
 事業スポンサーとファイナンシャルスポンサーのそれぞれの特徴を理解して、それぞれのケースごとに相応しいスポンサーについて検討されるべきでしょう。

○スポンサーの選定方法
 スポンサーの選定には、個別に交渉する方法と競争入札による方法の二種類があります。
 私的整理においては、再生手続きに入ったことが公表されないまま手続きを進められることがメリットですが、スポンサーの選定の際には、その情報が漏れるリスクがあります。再生手続きに入ったことが公になれば、会社の信用が一気に失われる可能性があります。
個別に交渉する場合は、こうした情報が漏れるリスクが少なく、交渉も迅速に進めることができます。スポンサー候補が限定されていたり、すでに存在したりするケースは個別交渉が相応しいでしょう。
 競争入札の場合は、複数のスポンサーに投資条件を競わせることで、再生企業側に有利な条件を引き出すことができます。手続きも公平で透明性があるものとなりますが、情報が漏れることで、再生企業の信用が失われるリスクがあります。また事務作業の量が増え、時間も掛かるというデメリットもあります。
 いずれの方法がいいかは、再生企業の状況や利害関係者の事情などを勘案して判断する必要があります。

○プレパッケージ型の選定方法
 事前にスポンサーを選定して再生手続きを進める方法を、プレパッケージ型といいます。法的整理でも私的整理でもプレパッケージ型の選定方法は行われます。プレパッケージ型の場合、再生手続きを進めていることが公になっても、スポンサーがついていることで再生企業が信用を落とすリスクを最小化できるというメリットがあります。
 デメリットもあります。プレパッケージ型の場合、早い段階でスポンサーが決まるため、情報が少ない中で判断しなければなりません。また競争原理も働きませんから、スポンサーによる資金拠出が少なく、再生企業側に不利な条件となることもあります。
 このため、再生手続き開始後に入札などによってスポンサーを選び直すケースがあります。しかし、事前にスポンサーを引き受けたスポンサーにとっては、再選定によって、より有利な条件を示すスポンサーが現れれば、スポンサーを降りることを求められるわけで、こうしたケースが続けば、事前にスポンサーを引き受けるものはいなくなるかもしれません。
 一定の条件を満たせば再選定が行われないようにする、プレパッケージ型のスポンサーを保護しようという提言も出され、スポンサーの保護のあり方については議論が続いています。