Column

2018.04.10

再生スキームの種類と選定方法

Spread the love

○再生の枠組みを選ぶ
 会社や事業の再生プロセスを進める中では、再生を進める枠組みを選ぶ必要もあります。枠組みとはつまり、対象の会社と利害関係者の調整を進めるための場であり、これまで説明してきた私的整理や法的整理などの手続きがそれにあたります。
 実際のところ、苦境に陥った会社は、まずはまったくの任意で、金融機関などの債権者に、債務支払いの繰り延べなどを相談するでしょう。その段階での調整が限界となると、枠組みを活用することになります。ここで採用されるのが、中小企業再生支援協議会や事業再生ADRなど、一定のルールを持つ私的整理の枠組みです。この枠組みでも調整がうまくいかない場合、会社更生法や民事再生法という法的整理の枠組みへと移行するというのが通常の流れです。
 このほか位置づけは異なりますが、会社や事業の再生という意味では、M&Aという選択肢も存在します。
 こうした枠組みは、会社や利害関係者の置かれている状況に応じて、選択していくことが重要です。

○再生スキームを選ぶ
 再生の枠組みとともに重要なのが、再生会社の厳しい財務を救う直接的な手立てとなる再生スキームの選択です。
 各種DDが終わり、対象会社の現状把握を済ませた結果、その会社や事業に再生の可能性があると認められると、事業の再生計画案の策定というプロセスへと入ります。一方、再生可能性が認められないとなれば、会社は清算手続きへと進むことになります。
 再生計画案はふたつの柱から成り立ちます。会社や事業の再構築のための事業計画と債務の弁済計画です。この中では、会社が苦境に陥った原因を具体的に特定し、それをどのように解決して、どのように事業を立て直していくかが示された上で、将来の会社の姿とそれに必要な施策やコストを明らかにされなければなりません。
 具体的には、事業の再構築のために、スクラップする事業や売却する資産、人員や販売の計画、設備投資計画などを示し、どの程度のキャッシュフローが継続して得られるのかを示します。そのうえで、得られるキャッシュフローをどのように配分するか、つまり、どのような形で債務を弁済していくかについて、弁済計画で示します。
 その弁済計画を構成するのが再生スキームです。債務の免除やリスケジュール、増資や債務の株式化、事業譲渡や会社分割などのさまざまな再生スキームから、再生対象の会社とその利害関係者にとって、どれが相応しいかを検討し、弁済計画という形で具体化します。

○再生スキームの目的
 再生スキームの目的は、対象の会社の財務状態を健全化させることです。最初から、債務の免除やリスケジュールなどのスキームありきではありません。
 各種DDによって、再生会社の現状が把握され、実質債務超過の実態が明らかになっています。さらに事業の再生計画を検討する中で、再構築した事業からはどれだけの利益が継続して得られそうかの見込みも示されています。それらを比較考量することで、再生スキームは選択されます。つまり、再生会社の毀損した財務状況を健全化させるために、必要十分な支援となるような再生スキームを選ぶということです。
 以降は、これらの再生スキームの、それぞれの特徴や効果について詳しくみていきます。

○リスケジュール
 債務の返済条件を変更し、返済期限を延長したり、返済を猶予したりするスキームです。このスキームでは、債務が減るわけではないので、再生会社の財務健全化には、それほど効果は見込めません。

○DDS(資本性借入金 デット・デット・スワップ)
 持っている債権を、ほかの債権よりも返済順位の低い「劣後ローン」に切り替えることで、一定の期間、返済を猶予するスキームです。資金繰りが安定し、利息も減るという効果が見込めます。さらに、劣後ローンは自己資本として見なされるため、会社の自己資本比率が上がり、財務状態は改善します。しかし債務の額はそのままですから、過剰債務という問題は残ります。

○DES(債務の株式化 デット・エクイティ・スワップ)
 債権者が債務と同等の株式を得ることによって、債務を株式に転換させます。このスキームによって、債務は自己資本へと変わり、債務は減少します。返済の必要もなくなるので、再生会社の財務の健全化に大きな効果が見込めます。債権者にとっては、転換した株式を売却することで債権分の金額を回収することもできます。このスキームは、再生会社が上場企業でないと使いづらいという面もありますが、近年では株式の種類を工夫することで、非上場企業の再生でも使われる事例が増えています。

○債権放棄
 文字通り、債権を放棄することであり、再生スキームとしてはもっとも一般的な手法です。このスキームによって、再生会社の財務状況は大きく改善します。
 債権放棄は、債権者の損失を確定させるスキームですから、いたずらに使われるべきではありません。債権放棄の額は、再生会社の債務超過状態が、事業再生計画によって3~5年以内に解消されるような適切な額に設定されなければなりません。債権者間でも不公平がないように行われる必要があります。一方で、債権放棄を受けた経営者は、経営責任を求められることになります。
 債権放棄は、再生会社にとっては利益と見なされ、その額に税金が課されることになりますが、せっかく債権放棄をしてもらったのに、多額な税金の支払いを求められることになれば、再生プロセスに悪影響を与えることなるので、法的整理の手続きや私的整理のルールに基づいて行われるなどの条件を満たせば、課税を避けられる特例が設けられています。

○第二会社方式
 第二会社方式とは、財務状況の悪化した会社から、収益性のある事業のみを別の会社に受け継がせ、過剰債務は、ほかの不採算事業ともにもとの会社に残して、もとの会社は破産手続きなどによって整理をするというスキームです。
 第二会社方式は、新しい会社を設立して、その会社に事業を受け継がせる方法と、別の会社に事業を譲渡する方法のふたつがあります。いずれの方法も、もとの会社には事業を譲渡した代金が入ることになります。もとの会社は、破産や特別清算の手続きによって整理されるので、債権者にとっては、第二会社に受け継がれない債権を放棄することになりますが、事業を譲渡した代金については配分を受けることができます。
 この第二会社方式は、M&Aとして行われる会社分割や事業譲渡と形としては似ています。しかし、M&Aによる会社分割は、債権者に同意を得る必要はなく、過剰債権から逃れるためにこのスキームを使うという悪質な事例が問題となっていました。
 このため経済産業省では、第二会社方式のスキームについて、事業再生計画の中で債権者の同意を得たうえで行われる場合、「中小企業事業承継再生計画」として認定し、許認可の引き継ぎや税金の支払いなどの優遇措置を受けられるようにしました。
 M&Aのスキームとの大きな違いは、「債権者の同意」を得て行われるかどうかで、これによって、事業再生計画の中で行われる第二会社方式は、M&Aの手法とは一線を画すスキームとして位置づけられています。

○M&A型スキーム
 M&Aの手法も、会社や事業を再生するためのスキームのひとつです。その手法は大きく分けて、スポンサーの関与の違いによってふたつに分けられます。
 ひとつはスポンサーが、再生会社の株式を、「第三者割当増資」や「株式譲渡」などの方法で取得するスキームです。再生会社はそのままスポンサーの子会社となって再生を図っていきます。
 もうひとつはスポンサーが、再生会社の事業を、「会社分割」や「事業譲渡」などの方法によって譲り受けるスキームです。再生すべき会社や事業は、もとの会社とは切り離されて、再生が図られていくことになります。