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2018.02.28

会社更生とその手続き

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○会社更生とは
続いて、会社更生について詳しく見ていきます。
会社更生とは、会社更生法という法律に基づいて、経営が破綻しかけている株式会社を、倒産させずに再生を目指す手続きです。法的整理の再生手続きということになります。
会社更生法は、2000年の民事再生法に続いて、2002年に全面的に改正され、手続きの効率化や迅速化が図られるとともに、再生手法が強化されました。
会社更生法の対象は株式会社のみで、中小企業は利用できません。とくに大企業の救済を想定しており、大企業に存在する数多くの関係者の利害を調整するため、その手続きは非常に強力なものとなっています。手続きによって権利が制限される対象は、債権者だけでなく株主や担保権者にも及び、経営陣は原則的に退陣し、会社組織の大幅な変更も可能になります。莫大な費用と時間を掛け、抜本的な会社の再建を目指す手続きといえます。

○会社更生の流れ
会社更生の流れは以下の通りです。
①会社更生手続きの申請、保全処分命令
②手続き開始決定、管財人の選定
③更生計画案の作成
④関係人集会、更生計画案の決議
⑤更生計画の実行

○経営権は失われる
会社更生の申請がされると、保全処分命令が出され、債務の支払いが禁止されるとともに裁判所は保全管理人を選びます。会社の経営権や財産の処分権は保全管理人に移り、保全管理人は経営を担いながら、会社の財産や債務について調査し、裁判所へ報告します。この調査をもとに裁判所は、会社更生の手続き開始を決定します。
手続き開始が決まると、裁判所は管財人を選定します。経営権は管財人に移り、管財人は会社の経営をしながら、再生計画案の策定を進めていくことになります。
会社更生では手続きが申し立てられると、原則、経営者はその経営権を失うことになります。この点が、経営者自らが再生手続きを進めていく民事再生とは大きく違う点です。
しかし、会社更生手続きでも、経営者が退陣せず、自ら更生手続きを進めるケースが出てきました。DIP型会社更生という運用方法で、これについては後述します。

○管財人の役割
手続きが開始されると、管財人は債権や財産の調査をもとに、事業再生の可能性を検討して、更生計画案を策定します。債権は、民事再生手続き同様、届け出期間が設けられ、届け出をされた債権は、更生債権として確定します。一方、届け出がされなかった債権はその権利を失います。
管財人は、債権者や株主の持つ権利をどう変更し、どのように債務を返済していくかについて検討すると同時に、事業をどう立て直していくかについての計画案を作成します。必要ならば、それに協力するスポンサーなどを見つけなければなりません。新たな事業計画や債務の返済計画などを定めた更生計画案は、裁判所へ提出されます。

○抜本的な変更が可能になる
手続きが開始されると、会社に関わるさまざまな権利に制限がかかります。
民事再生では、無担保の債権者のみが再生手続きの対象で、その再生債権だけが債務のカットなどの権利変更を受けます。一方、担保権者や株主の権利には変更はなく、税金についても、その都度、支払うことに変わりはありませんでした。
しかし、会社更生手続きでは、無担保の債権者だけでなく、担保権者や株主、税金の支払いにまで制限が及びます。つまり、手続きが開始されると、債権の支払いは禁止され、担保権の行使もできなくなります。株式は原則として無価値となり、税金を支払うことも禁止されるということです。
また、会社更生の手続きでは、合併や増資、減資、定款の変更なども簡単に行えるようになります。
このように多くの権利について制限をかけ、多くの変更が可能だからこそ、会社を抜本的に変えることができるわけです。

○会社更生手続きが優先される
会社更生の申し立てがされると、破産や民事再生など、ほかの法的整理の手続きが進行中であっても、会社更生の手続きが優先されます。この運用の効果は以下のようなケースのときに現れます。
たとえば民事再生手続きでは、担保権が手続きの対象ではないため、会社の再生に必要な資産に担保権が設定され、それがネックとなって再生計画がうまく進まなくなることがあります。この担保権者との任意の交渉が進まない場合、会社更生の申し立てをすれば、民事再生よりも会社更生の手続きが優先されて、担保権も対象に含めた更生手続きへとシフトすることができます。法的な手続きとして、担保権者との調整が可能となり、会社や事業の再生の選択肢が広がるというわけです。

○関係人集会、更生計画案の決議、実行
更生計画案は、債権者や担保権者などの関係人集会で決議に諮られます。関係人集会では、債権者や担保権者、株主などそれぞれの権利ごとに決議が行われます。ここで多数の同意を得られれば、更生計画案は承認されます。更生計画案はさらに裁判所からの認可を受けたうえで、実行に移されることになります。
会社更生手続きは、利害関係者が多いため、調整に時間がかかり、手続きも複雑です。このため、手続き開始から更生計画の決定まで、およそ1~2年ほどかかるのが一般的です。再生計画決定までおよそ半年の民事再生手続きと比べて、かなりの時間が必要で、会社更生のデメリットといえるでしょう。

○従業員は…
従業員の雇用については、民事再生の手続き同様、会社更生の手続きにおいても、直ちに影響が出るものではありません。未払いの賃金や賞与なども、優先債権として取り扱われ、優先的に支払われます。しかし更生計画は、会社の抜本的な再建を目指しています。会社自体が大きく変われば、合理化やリストラなども行われるでしょう。雇用への影響は免れません。

○会社更生手続きにかかる費用
会社更生手続きは、裁判所の管理のもと進められる法的整理手続きですから、申し立てに伴い、予納金が必要となります。その額は、会社の規模や関係者の数、債務の総額などで決められるので、ケースによって変わりますが、そもそも大企業を対象にした手続きですから、数千万円くらいになるのが一般的です。
私的整理はもちろん、民事再生に比べてもそのコストは莫大で、これが会社更生手続きが利用されないひとつの要因となっています。

○DIP型会社更生
会社更生手続きは、経営陣の退陣を前提とし、費用や時間コストもほかの手続きよりもかなり大きいことから、その利用が避けられる傾向にありました。このため東京地方裁判所では、会社更生法の運用を変え、DIP型会社更生という新たな手続きを始めました。
このDIP型会社更生手続きは、経営者の退陣を前提としていません。裁判所の監督のもとで、経営者自身が管財人や保全管理人に選ばれて、会社更生手続きを進めていきます。形としては民事再生手続きと似ていますが、会社更生法に基づいた手続きですから、担保権者の権利を制限できるなど、強力な手続きであることは変わりません。
そもそも会社更生法は、経営者自らが管財人などなって手続きを進めていくというDIP型の運用を排除してはいませんでした。しかし、実際には、会社の経営破綻をもたらした経営陣に、会社更生の強力な手続きを任せられないという考えから、会社外部の人を管財人などとする運用が続いてきました。東京地裁はこの従来のやり方を見直し、DIP型の運用を始めたということです。
ただ、DIP型会社更生手続きをすすめるには条件があります。
①経営陣に重大な経営責任がない
②おもな債権者が反対していない
③経営陣が更生手続きを進めることに支障がない
などの条件を満たさないと、DIP型会社更生手続きを進めることはできません。
DIP型会社更生は、申し立てから更生計画案の認可まで半年ほどを想定し、予納金の額も少なくてすむものと見込まれています。